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協調性がない。

2011-08-20 | 日記
Q1 協調性がない。

  協調性がないといっても程度問題であり,通常許される個性の範囲内に収まっている程度の問題なのか,それとも,企業秩序を阻害し又は社員としての適格性が問われるものなのか見極める必要があります。
 よく検討しないまま,主観的に協調性がないと決めつけてしまうのは危険です。
 周囲の社員に問題があることもありますので,客観的に判断するためにも,本人の言い分もよく聴取して事実確認をする必要があります。

 協調性がないという問題は,基本的には注意,指導,教育して改善させるべき問題です。
 口頭で注意,指導,教育しても改善しない場合は,書面で注意,指導,教育します。
 書面を交付するのは大げさでやりにくいというのであれば,まずは電子メール等を利用することから始めてもいいでしょう。
 書面で注意,指導,教育しても改善しない場合は,懲戒処分を検討することになります。
 配転の余地があるのであれば,協調性のないとされている社員を別の部署に配転させ,配転先でもやはり協調性がないのか確かめてみた方が無難です。
 周囲の社員が問題なのであれば,配転先では協調性がないとは評価されない可能性があります。

 解雇は最後の手段です。
 十分な注意,指導,教育をしないままいきなり解雇した場合は,無効とされることが多いです。
 解雇が有効とされるためには,就業規則の普通解雇事由又は懲戒解雇事由に該当し,解雇権濫用(労働契約法16条)とされないことが必要となります。
 解雇事由に該当する場合であっても,解雇権濫用として解雇が無効とされることが多いことに注意して下さい。
 「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労働契約法16条)とされています。
 普通解雇の場合は,職場から排除しなければならいほど社員としての適格性がないといえるのかが,懲戒解雇の場合は,協調性がないことにより,職場から排除しなければならないほど職場秩序を阻害したのかが問題となります。
 解雇の有効性を判断するにあたっては,協調性が特に必要とされる業務内容,職場環境かどうかという点も重視されます。
 チームワークが重視される共同作業が多い業務内容なのか,少人数の職場なのか等。
 注意,指導,教育して,協調性のなさが改善されるのであれば,注意,指導,教育して改善させればいいのですから,解雇の有効性を判断する際にも,改善が期待できないと評価できるかが問題となります。
 実際に注意,指導,教育して改善の機会を与えることもせずに,勝手に,改善の見込みがないと思い込んで解雇するのは危険です。
 まずは,実際に,注意,指導,教育して改善の機会を与え,改善の見込みがないかどうかを確かめたことの証拠を残しておく必要があります。
 口頭で注意,指導,教育しても改まらない場合には,書面で注意,指導,教育し,記録に残しておくべきと考えます。
 書面等の客観的証拠がないと,訴訟になった場合は,「注意,指導,教育されたことはありません。」と主張されるのが通常です。
 また,書面で注意,指導,教育することにより,口頭での注意,指導,教育よりもより強く改善を促しているというメッセージにもなります。
 懲戒処分や事前の警告が解雇の前提要件というわけではありませんが,解雇は,原則として,戒告,譴責,減給,降格処分等の懲戒処分をし,改善しなければ解雇する可能性がある旨の警告をしてからにすることが望ましいところです。

弁護士 藤田 進太郎

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