自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

尹東柱 (ユン ドンヂュ)

2014年05月23日 | Weblog

 終戦の六ヶ月ほど前に福岡刑務所で獄死した尹東柱の詩をひとつ。

   星をかぞえる夜  (1941.11.5)

季節の移りゆく空は
いま、秋酣(たけなわ)です。

わたしはなんの憂愁(うれい)もなく
秋の星々をひとつ残らずかぞえられそうです。

胸に ひとつ ふたつと 刻まれる星を
今すべてかぞえられないのは
すぐに朝がくるからで、
まだわたしの青春が終わっていないからです。

星ひとつに 追憶と
星ひとつに 愛と
星ひとつに 寂しさと
星ひとつに 憧れと
星ひとつに 詩と
星ひとつに 母さん、母さん、

母さん、わたしは星ひとつに美しい言葉をひとつずつ唱えてみます。小学校のとき机を並べた児らの名と、偑(ベエ)、鏡(キョン)、玉(オク)、こんな異国の少女たちの名と、すでにみどり児の母となった少女たちの名と、貧しい隣人たちの名と、鳩、子犬、兎、らば、鹿、フランシス・ジャム、ライナー・マリア・リルケ、こういう詩人の名を呼んでみます。これらの人たちはあまりにも遠くにいます。星がはるか遠いように。
(長い詩なので以下略)

 (日本の統治下、「平沼東柱」と改名させられて同志社大学に留学した彼の詩は、このブログで何度か紹介したが、故郷を想うこの「星をかぞえる夜」はリリシズムに満ちている。)

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