昨日リルケの名を記した途端、思い出した詩があった。終戦の六ヶ月ほど前に福岡刑務所で獄死した尹東柱の詩。
星をかぞえる夜 (1941.11.5)
季節の移りゆく空は
いま、秋酣(たけなわ)です。
わたしはなんの憂愁(うれい)もなく
秋の星々をひとつ残らずかぞえられそうです。
胸に ひとつ ふたつと 刻まれる星を
今すべてかぞえられないのは
すぐに朝がくるからで、
まだわたしの青春が終わっていないからです。
星ひとつに 追憶と
星ひとつに 愛と
星ひとつに 寂しさと
星ひとつに 憧れと
星ひとつに 詩と
星ひとつに 母さん、母さん、
母さん、わたしは星ひとつに美しい言葉をひとつずつ唱えてみます。小学校のとき机を並べた児らの名と、偑(ベエ)、鏡(キョン)、玉(オク)、こんな異国の少女たちの名と、すでにみどり児の母となった少女たちの名と、貧しい隣人たちの名と、鳩、子犬、兎、らば、鹿、フランシス・ジャム、ライナー・マリア・リルケ、こういう詩人の名を呼んでみます。これらの人たちはあまりにも遠くにいます。星がはるか遠いように。
(長い詩なので以下略)
(日本の統治下、「平沼東柱」と改名させられて同志社大学に留学した彼の詩は、このブログで何度か紹介したが、故郷を想うこの「星をかぞえる夜」はリリシズムに満ちている。
今日は久しぶりに野球観戦に行こうと計画していたが、生憎の雨。一雨ごとに秋が深まってくれればいい。集中豪雨はご免蒙る。)
星をかぞえる夜 (1941.11.5)
季節の移りゆく空は
いま、秋酣(たけなわ)です。
わたしはなんの憂愁(うれい)もなく
秋の星々をひとつ残らずかぞえられそうです。
胸に ひとつ ふたつと 刻まれる星を
今すべてかぞえられないのは
すぐに朝がくるからで、
まだわたしの青春が終わっていないからです。
星ひとつに 追憶と
星ひとつに 愛と
星ひとつに 寂しさと
星ひとつに 憧れと
星ひとつに 詩と
星ひとつに 母さん、母さん、
母さん、わたしは星ひとつに美しい言葉をひとつずつ唱えてみます。小学校のとき机を並べた児らの名と、偑(ベエ)、鏡(キョン)、玉(オク)、こんな異国の少女たちの名と、すでにみどり児の母となった少女たちの名と、貧しい隣人たちの名と、鳩、子犬、兎、らば、鹿、フランシス・ジャム、ライナー・マリア・リルケ、こういう詩人の名を呼んでみます。これらの人たちはあまりにも遠くにいます。星がはるか遠いように。
(長い詩なので以下略)
(日本の統治下、「平沼東柱」と改名させられて同志社大学に留学した彼の詩は、このブログで何度か紹介したが、故郷を想うこの「星をかぞえる夜」はリリシズムに満ちている。
今日は久しぶりに野球観戦に行こうと計画していたが、生憎の雨。一雨ごとに秋が深まってくれればいい。集中豪雨はご免蒙る。)
『空と風と星と詩 尹東柱全詩集』(伊吹郷訳、影書房、1996年初版第8刷)です。あまり知られていない書店ですので、今もあるかどうか分りません。
尹東柱でネット検索されれば何種類か出てくると思います。