自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

「人間環境宣言」

2010年10月13日 | Weblog
 ダイオキシンの研究で知られる脇本忠明愛媛大学教授が近著『「私が変わります」が地球を守る』の中で「21世紀人間環境宣言」を提言している。
 「人間環境宣言」と言えば、30年前に国連から発表されたものがある。その背景にはローマクラブが「成長の限界」で提起した問題意識があった。
 「グローバルに考え、ローカルに行動する」ために、皆の参加、協力が不可欠だ、というものだ。
 この宣言が世界に与えた影響は大きい。日本の環境庁(現・環境省)の活躍もそこに端を発している。様々な対策、国際交渉が行われ、環境問題は多くの人々の共感と理解を得ている。にもかかわらず現実には、温暖化ひとつをとっても対策のスピードは事態に追いついていない。地球環境という人類生存の土台が壊れるのは、時間の問題だと既に諦めつつある科学者もいる。もっと根本からのアプローチが必要だろう。
 脇本教授によると、ダイオキシン問題の元々はゴミ問題にある。これは私たち一人ひとりのライフスタイル、またその前提にある生活意識、とりわけ私たちを支えてくれる地球環境の恩恵に対する受けとめ方と不可分のものであるという。確かにこの環境の危機を自分の責任と受けとめ、地球環境の働きに自発的に応える、という意識改革が必要である。
 科学者も、現実がどのような危ない未来をつくろうとしているのか、その因果関係を科学の諸分野だけに限らずもっと幅広くとらえ、社会にも発信していく必要があろう。それが「科学者である前に一人の人間である」ということではないか。
 解決困難な事態に対して、枠組みを超えて対峙しなければならないのは環境問題に限らない。20世紀は専門分野を細分化し、事態の理解を細かく掘り下げることには大きな成果をあげたが、それを統合する力は弱まった。経済や政治、とりわけ最貧国への支援などでも統合する力が必要な問題が山積していると思われる。

 チリの鉱山落盤事故で地下に残された33人の作業員の救出作業が、今日始まる。地下624㍍の深さから救い出すという過去に例のない作戦。成功を祈る他はない。
 高い方、つまり成層圏を超えた宇宙空間へは指定されたところに行き、仕事をし、指定されたところへ着陸できる技術を人類は手にした。であるのに、低い方、つまり地下への往来は地下資源を確保するためには為されているが、一旦とり残された人々の救出には困難を極めている。これが科学技術の現状を表していると思われる。上で言われた統合する力が不可欠である。

コメントを投稿