柏餅の季節。大きな木の葉で食べ物を包むのは昔の人の知恵だ。南の島ではバナナの葉を使い、日本では柏、桜、笹などを使う。餅にしみこんだ葉の移り香を楽しむ。合成樹脂製の模造品では風味が出ない。
幼少の頃、山でイバラ饅頭の葉を摘んだ憶えがある。僕は生来が田舎者だから、葉で包んだ食べ物なら何でも好きだ。とりわけ好きなのは柿の葉寿司なんだけれど。
今、店で売っている柏餅は去年の葉を使っている。去年の葉を乾燥させて、大量に貯蔵させておく。使う時に煮て柔らかくする。
昔の人は「餅は心地よきもの」と言ったそうだ。心地よきものである餅は元来、ハレの日の食べ物だった。餅には稲の霊が宿ると考えられ、正月や農耕開始の日、あるいはめでたい日に食べる習わしになった。柏餅は、ちまきと並んで、古くから端午の節句に結びついている。
ものの本によると、柏餅の甘さが抑えられてきたそうだ。人間は栄養的に満ち足りてくると淡い甘味の方を美味いと思うようになる、というのだ。世の中の成熟度と甘さを抑えることとがどこかで絡み合っている、というのが面白い。成熟度と抑制との関わりは甘さの話だけではないだろうが。
柏餅について書きながら、ふと思いついたことがある。文明の成熟度が増すと電気を沢山つかう。抑制がきかなくなる。そこで無粋極まりない原発に頼る。そして放射能汚染に晒される。これでは文明が成熟したとは、とても言えない。
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