巨大地震、巨大津波、原発大事故、被災に関するニュースに押されて注目されるのが少ないニュースがあった。
先月28日、水俣病不知火患者会の2993人が国と熊本県、原因企業のチッソに損害賠償を求めた訴訟は熊本、大阪、東京の3地裁で和解が成立した。水俣病と認定されていない被害者でつくる団体であり、大きな前進といえる。
これから最終的な解決に向け、二つの課題がある。
まず、水俣病の実相を究明しないまま問題を終わらせようとしてきた政府の従来の姿勢と決別する必要がある。今後なすべきは、不知火海沿岸のすべての住民の健康調査だ。
もう一つが「期限付き」の問題だ。和解内容は09年につくられた水俣病被害者救済法に基づく政府の新救済策に沿っている。救済法は「救済措置の開始後3年以内をめどに救済対象者を確定する」としている。
だが、今回の和解にも応じず、判決による司法救済を求め続ける被害者がいる。さらに09年秋に有志の医師らで実施した熊本県天草地域などの住民健康調査では、1千人近い潜在被害者が新たに見つかった。訴訟に加わらず、新救済策にも申請していない被害者が数多くいるのだ。
新救済策の受け付けは昨年5月に始まった。潜在被害者の存在を考え、3年で区切りをつけずに、その後も申請できる恒久的な制度にするべきだ。
和解は、地域や出生年月の線引きで救済対象外にされてきた人たちの一部も救済対象に判定した。現実を幅広くみた結果であり、評価できる。
和解と救済法の両輪の動きが、高齢化した被害者を早く救済するためにも役立つ。政府は「最終的かつ全面的な解決」を実現するため、残された課題にぜひ着手してほしい。
水俣病という公害に僕が関心を持ち始めたのは大学卒業前だから、現在に至るまでにほぼ半世紀が経った。もうそろそろ僕が関心を寄せなくてもいい時期だ。
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