自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

ドイツの20年―欧州統合への歩みに学ぶ

2010年10月15日 | Weblog
(在勤中、必要があってドイツの国状に関心をもっていた。その関心は現在では薄れたとはいえ、ドイツに関する報道には目がいく。新聞より。)
 ベルリンの壁が崩壊し、街に繰り出した旧東独の人々が叫んだ。「我々は一つの国民だ」。西側の自由と豊かさへのあこがれ。噴き出した人々の情念が歴史の歯車を動かした。
 1990年10月の東西ドイツ統一は、現代史の新しい幕開けだった。あれから20年。統一記念式典で演説したウルフ大統領の言葉は印象的だ。
 「旧東独の人々の叫びが、眠っていた国民のアイデンティティを呼び覚ました。20年後のいま、この国には新しい自信、緩やかな愛国心、そして過去への大きな責任とともに、未来を担おうとの意識が生まれている。」【緩やかな愛国心がキーワードだ】
 ドイツにとって、歴史的な成功を収めた20年だったといえよう。
 当時、近隣国にはドイツ統一への警戒心が強かった。2度の大戦とユダヤ人虐殺。戦後ドイツが示した反省にもかかわらず、被害の記憶はなかなか消え去らなかった。
 ドイツの指導者たちが取り組んだのは、地域統合をめざす欧州の多国間協力の枠組みに、代償を払ってでも自らを組み込むことだった。
 欧州最強の通貨だった独マルクを捨て、単一通貨ユーロの導入を認めた。ポーランドやチェコなど中東欧諸国を後押しして、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に次々迎え入れた。欧州諸国や米国はこれを支援し、ロシアも受け入れた。
 その結果、欧州市場の一体化により、ドイツの貿易のうち対欧は6割を超えた。自動車や化学品など強い産業競争力が欧州経済を下支えしている。
 もちろん陰の面もある。旧東独の1人あたり所得は旧西独の7割で、その失業率は高い。ウルフ大統領は式典で、トルコなどイスラム系移民を社会に取り込む大切さを国民に訴えた。【旧東独の密告社会は完全に消えたのか。密告は消えても、その後遺症は残っていないのか。気になるところではある。】
 単一通貨ユーロや財政の不安を乗り越えるために、EUの機能をどう強めるか。中東紛争やイラン核問題をどう解決していくか。EUが国際社会で果たす役割は極めて大きい。 EUの中核メンバーとして、ドイツは欧州統合を深化させ、世界の課題解決の先頭に立つ責務がある。
 この秋、日本で「日独交流150周年」の行事が始まった。アジアでは、朝鮮半島に分断国家が残り、また領土や主権をめぐる摩擦が起きている。
 置かれた状況は異なるが、ドイツの経験に学べることは少なくない。

コメントを投稿