
『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』(監督:バーセル・アドラー/ユヴァル・アブラハーム/ハムダーン・バラール/ラヘル・ショール、2024年)を観てきた。
ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区・マサーフェル・ヤッタ。
そこで生まれ育ったパレスチナ人の青年バーセルは、イスラエル軍の占領が進み、村人たちの家々が壊されていく故郷の様子を幼い頃からカメラに記録し、世界に発信していた。
そんな彼のもとにイスラエル人ジャーナリスト、ユヴァルが訪れる。
非人道的で暴力的な自国政府の行いに心を痛めていた彼は、バーセルの活動に協力しようと、この村にやってきたのだった。
同じ想いで行動を共にする2人。
しかしその間にも、軍の破壊行為は過激さを増し、彼らがカメラに収める映像にも、徐々に痛ましい犠牲者の姿が増えていくのだった・・・
(公式サイトを修正)
手持ちカメラやスマートフォンを駆使して、2023年10月までの4年間のマサーフェル・ヤッタの現状を記録したドキュメンタリー。
そこに写し出されるのは、イスラエルの軍事訓練場に使用するという名の占領目的のために行われる、パレスチナ人の強制立ち退きと徹底した村の破壊。
平然とブルドーザーで家を破壊し、小学校も破壊する。
井戸にコンクリートを流し込み、水道や電線を切断する。
村人は抗議をするが銃を持つ兵に為す術もない。
イスラエル兵は抗議をうるさく思えば気ままに銃の引き金を引くことができる。
そればかりではない。
丘の上にはこぎれいな家が並んで建っている。
そこから、兵に守られたイスラエル入植者たちが銃を持ってやって来る。
この入植者たちも発砲する。
そしてパレスチナ人は地に倒れる。
このようにしてパレスチナ人は昔から住み慣れた土地を奪われ、
行き場を失った人々は石窟に身を寄せるしかない。
なんと理不尽なことか。
ガザでは、2023年10月の戦闘以降、5万人以上の死者が出ている。
負傷者は倍以上で行方不明者も1万人以上である。
原因がハマスにあるとしても余りにも悲惨な大量虐殺である。
過去に民族虐殺された歴史の中にありながら、権力の中枢にいる者はそのことになんら教訓も得ていない。
このことは何もイスラエルだけのことではない。
世界のあちこちで独占的権力者が狂気を振りまいている。
若い頃、人間は歴史の流れの中で知性とか人間性が発達すると楽天的に考えていた。
しかし、そうではないらしい。
この作品を観て、つくづくそう思った。そこが悲しい。
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