ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『朝の少女』を読んで

2015年11月22日 | 本(小説ほか)
ブックオフで、DVDの棚を覗いた後、何か気楽に読める本はないかと探してみた。
そしたら、薄っぺらな少年少女向けらしい『朝の少女』(マイケル・ドリス著・灰谷健次郎訳、新潮社)という文庫があった。

自然豊かな島に暮らす女の子は、夢想好きで誰よりも早起き。それで、朝の少女と呼ばれている。
夜が大好きな少年は、いつしか暗闇に変身できるようになり、眠る必要がなくなってしまった星の子。
対極的な姉弟は、両親の教えや大自然との対話を通して、少しずつ大人になっていく。
海や星や太陽に抱かれ、ふたりは幸せだった。運命の日がくるまで―――。
(裏表紙より)

仲がいいのに、少女が弟を鬱陶しがる気持ち。
幸せな家庭なのに、たまには一人っきりになっていたい弟。
父親も母親も二人に、静かに愛情を注ぎながら見守って。
わかるなあ、この感じ。私にも記憶があるような雰囲気で。
どこかの南の島で素朴に生活しながら、感情豊かな二人は今後、素直にのびやかに、そして健やかに成長していくんだな。

と、そこにエピローグとして「コロンブス」の日記が挿入される。

この本は、青少年向けを装いながら、まさしく大人に対しての読み物だった。
そして、文明人と思っている者が陥りやすい、驕りに対する鋭い批判書であった。
作者はアメリカ先住民の血を引いているという。
未開と一般的にいわれる国、地域、地方の人々に対して、我々は教化してやろう、文明に導いてあげて当然と思っていないか。
無意識に見下してはいないか。

私もそういう意識があるのかどうなのか、もう一度考えてみなければならない。
随分前に読んだ『コロンブス航海誌』(林屋永吉訳、岩波文庫)、
『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(ラス・カサス著・染田秀藤訳、岩波文庫)、
そして『インカ帝国の滅亡』(マルモンテル著・湟野ゆり子訳、岩波文庫)を再度読み直さないと、と思う。
コメント
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