原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

コリンゴ疑惑は、迷宮入り

2011年06月24日 08時38分53秒 | 自然/動植物

 コリンゴ(ズミ)とエゾノコリンゴ(サンナシ)の違いが全く分からなくなった。昨年の615日のブログでは、その違いを見分けるきっかけを見つけたことを報告したが、今年は元の木阿弥。再び迷路の中にいる。蕾の色の違い、葉の違い、花弁の違いを理解したはずなのに。どうやら自然界はそんなに簡単に理解できる仕組みにはなっていない。わが山で見るコリンゴ系の樹木は一つのように見えて一つではなく、二つのように見えて二つだけではない、というのが現実のようだ。素人が専門家を気取っても、すぐに化けの皮がはがれるということを思い知らされた。

(蕾の色が白ならエゾノコリンゴ、赤ならコリンゴであるはずだが、葉や幹はまったく同じ。咲いた花も同じ。迷宮はここから始まった)

枯れかけた脳細胞を懸命に動かして、少し理解できたのは、彼らは少しずつ変化していることだ。ズミの葉は三裂五裂するという説は正しくとも、そうならないズミの葉もある。つまり、その場所の土壌や環境、あるいは他の樹木との混合により少しずつ変化している。混合もあれば変化もある。そうした自然界の動向を考えずに、マニュアル通りのデータで判断しようとしても無理であるということなのだ。その生育過程や本来の性質を見ること(つまり理解と知識が必要)ができなければ、現在の姿など理解できない。

中途半端な知識で自然界を観察するより、素直に自然を愛でる姿勢の方が、私にはふさわしいということなのだ。

コリンゴだとかエゾノコリンゴとかを見分けることより、一つのコリンゴ系の樹木として見て楽しむ方がよっぽど素直だ。コリンゴ疑惑の謎は迷宮入りして正解なのだ。ここまでたどり着くのにずいぶん時間がかかったような気がするが、楽しい迷い方だとも、思っている。

考えてみればいずれもバラ科の樹木。同じリンゴ属でもある。ヒメリンゴ(イヌリンゴとエゾノコリンゴの雑種という説もある)もあるし、セイヨウリンゴ、ナシなど、よく似た花を咲かせる樹木は目白押しにある。それらの樹木が複雑に交錯して自然界が存在している。偶然にそれらを見分けることができても、自然のほんの一部でしかない。全体を知るにはもう一度、一から勉強しなければならない。そんな時間がないなら、ここは素直に降参すべきなのだろう。

案外、人間はこんな無駄なこだわりに時間を費やす性を持っているような気がする。それはそれでいいと思うが、そこに欲や利権が絡むと、こだわりが歪に膨らむ。いつの間にかその目的まであいまいになり、あらぬ方向に向かってしまう。良い方ではなく悪い方に進む例が多いから注意しなければならない。

話が少しそれるが、日本人の原点の一つに縄文人がいる。そこに渡来人として弥生人がやってきて、縄文人と弥生人の混合(一つの説にすぎないが)で現在の日本人の元ができている。この縄文人もまたいろいろな地方(北方や南方)からの渡来人であり、幾つもの混合の時を経ている。つまり日本人は混合して完成した単一民族という言い方もできる。

北海道には紀元前よりはるか前から我々日本人と同じ源流をもつ縄文人がいた。アイヌ文化を持った渡来人が北海道に来たのは十一世紀以降。縄文人と彼らが混合して、現在のアイヌと呼ばれる人たちが存在するようになった。そのアイヌの人たちも和人と混合して、今やどこが元なのだか不明な状況となっている。

縄文を原点とするなら、アイヌの人も和人も同じ源流をもつということになるのではないのだろうか。正確に言うと、日本人はすべて混合の上で成り立っているということ。先住民問題や問題などで、人間を区別したり、別であることを主張する人がいる。これは何のためなのだろうか、目的や意味が別の方向に向かっているではないのだろうか。

日本人とアイヌの人との違いが、コリンゴとエゾノコリンゴの違いほどもないような気がするのだが、間違っているだろうか。


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2 コメント

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九州のシカが! (原野人)
2011-06-24 16:28:30
意図的なのか、偶然なのか分かりませんが、エゾシカの世界まで複雑化し始めましたか。地球に生きる生物の宿命なのかもしれませんね。
突然変異による変化より、はるかに多い確率で交雑による変化は起きていると思います。これが進歩なのか後退なのか、はたまた運命なのか。すべては未来が証明することでしょう。
我々はとっくに存在してはいない社会だと思いますが、なんとなく気になります。
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交雑・・・ (numapy)
2011-06-24 14:30:25
動物も植物もサバイバルのためには、さまざまな交雑を繰り返してるのですね。
先日エゾシカの中に、九州の鹿が混じってることが確認されましたね。どうやら、人間が持ち込んだらしい。20万年かけて独自の進化を遂げてきたエゾシカがこのことで遺伝的には脅威を迎えることになった。交雑種です。
山女も岩魚も交雑種が増えてます。そのスピードアップに力を貸してるのが人間。いやはや、我々は何をしようとしてるんだろう。もっとも、所詮、交雑は生物のDNAに組み込まれてるんだから、それでいいのかぁ…。
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