原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

名前で苦労したか、ヤナギトラノオ

2012年07月17日 07時50分03秒 | 自然/動植物

 

湿原を散策していると、名も知らぬ花に出会う。この花もそうであった。一瞬タンポポかなと思ってよく見ると、全く違う。湿原(釧路)の散策道そばでひっそりと咲いていた。とりあえず写真にして、家でじっくり正体を探す。行き当たった名前がヤナギトラノオ。いやはや、見かけよりずっと凄い名前だ。漢字にすると「柳虎尾」。恐ろしいような和名がついていた。花の印象はまったく逆。目立たつことを拒否するかのようにも見える。なんでこんな名前がついたのかと逆に気になる。この名前を付けられたために隠れるように咲くようになってしまったのではと、思ってしまった。

 

資料によれば花はオカトラノオに似ていて、葉が柳に似ているところからヤナギトラノオと命名されたらしい。サクラソウ科という。随分安易な命名に感じた。しかもこのトラノオという名前の付く野草が実はたくさんある。イブキトラノオをはじめ、ミズトラノオ、ハルトラノオ、ヒメトラノオなどなど。しかもすべてがサクラソウ科ではなく(むしろ違う方が圧倒的多い)タデ科からシソ科、ゴマノハグサ科など実に様々。トラノオに似ているという誰かの視点、この一点で命名されたようだ。似ていると言っても他のトラノオは細長くのび、いかにも虎の尾をイメージさせるが、ヤナギトラノオに至っては丸い雪洞のような花の形。どこを見てトラノオとしたのかと思う。これではやはり隠れるように咲くしかなかったかもしれない。なんとなく気の毒に思う。今度見かけた時は、もう少し大切に写真にしてやろう。

 

先日、利尻島でイブキトラノオが咲いているという記事を読んだ。写真を見ると細長い穂のような花が草原に並んでいた。なるほど虎の尾はこんな感じだ。ヤナギトラノオとはちょっと違う。しかもイブキトラノオはタデ科。やっぱり同じような名前は理不尽に思う。ヤナギトラノオに代わって名付けた人に抗議したい。

 

名前を付けると言うのはなかなか難しい。子供の名前を付けるのにずいぶん苦労した記憶がある。やはり、いいかげんにはできないものだ。だが、考えに考えて、結構安易な名前に落ち着いてしまった。我が子よ、許せ、あれがわが思考の限界だった。

 

*ヤナギトラノオ:Lysimachia thyrsiflora. 高さ50㎝。6から7月が見ごろ。低地や山地の湿地帯に多い。北海道をはじめ中部以北で見ることができる。


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2 コメント

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ネーミング・・ (numapy)
2012-07-17 15:00:09
ネーミング若かりし頃「命をかけて…」などと思ってましたが、随分いい加減なもんですね。ことに植物や動物の場合は亜種が多いだけに、適当になっちゃうこと多いようです。発見された場所とか、発見者の名前だとか…
北海道なら、全部「エゾ」を付けちまえ!なんて結構乱暴なもんです。
ただ、母親がすごいこと言ってたな。子供に「雑巾」と名付けると「雑巾」になってしまうんだよ!
そう言えば「悪魔」君が世の中を騒がせたことがありましたっけ。あれってどうなったんだろう?
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ゴッドファザー (genyajin)
2012-07-17 15:21:18
名前は本来記号みたいなもので、なんでもいいと言えばいいのですが、一つの出来上がったイメージと比較するとき、いろいろ問題が出てしまうようです。
名前を付けることを考えていたら、昔の映画「ゴッドファザー」を思い出しました。マフィアの世界では格式と規律が第一。名付け親のポジションの重要性をちょっと感じました。
そういえば、悪魔君は字を変えて戸籍に入れたと聞きました。でも読み方は「あくま」だったと思います。親の趣味で子供は生きるしかないようです。
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