二月から届いていた流氷情報は日ごとに変化する。風の向きで岸に近づいたり離れたりするから、その日の情報がすべてだ。春が目の前に来た現在、すでに網走の流氷は遠のき、知床半島から根室へと移動、さらに太平洋側へと流れた。霧多布岬では8年ぶりの接岸となったとの報道が、つい先日にあった。自然界の奥行きを感じさせる流氷の彷徨とも言える。冬の海の風物詩として、すっかり定着した流氷も、春の訪れとともに閉幕を迎える。季節の移ろいを強く感じる。間近にそれを実感できる北国の良さを、あらためて知る。 . . . 本文を読む
釧路湿原を走るSL冬の湿原号は、この3月6日で最終となる。来年まで釧路・標茶間(川湯)を走ることはない。湿原号に乗るのはこれが二度目。二年ぶりである。最初に乗った時は懐かしさのあまりかよく見ていなかった。今度は機関車から最後尾の展望車まで歩きまわった。正直言うとなにか違う。昔ながらの何かを求めていた自分の愚かさを感じた。これはまさしく観光列車なのである。当然と言えば当然だ。ただこれが昔のSLのスタイルですよと強調されると、ちょっと違う、と言いたくなる。こんな偏屈な感情が湧き出すのは、やはり歳のせいなのかも。 . . . 本文を読む
1月22日を皮切りに、釧路から標茶(最初の2日間のみ川湯まで延長)まで、冬の湿原号が走っている。釧路湿原の冬の風物詩としてすっかり定着したと言える。今年で11年目。昨年までの累計乗車人数が18万8400人。2009年が1万2900人で、2010年は1万3600人であった。同じ人数が乗車したとしても、今年中に累計で20万人を突破することは確実。SL人気が年々高まるようでうれしい。いかにも昭和的でアナログの代表みたいな蒸気機関車の走る姿に惹かれるのは、現代の世相と反比例するもを感じるからなのかもしれない。 . . . 本文を読む
雪原には獣の痕跡が残っていた。その跡をたどると彼らの行動が見えてくる。獲物を探していたのだろう。右へ左と蛇行する。窪地や杭のそばでは匂いを嗅ぐように寄り道。そしてまた別の場所へと進む。小さな溝の前ではいったん止まって、勢いをつけて飛び越えていた。近くに現れた敵には牙をむいて威嚇。時には親しい相手と遊びながら走る。そんな様々な行動が彼らの足跡に残されていた。まっさらな雪原に残る足跡こそ、山で生活する先住者たちの生きている証明なのだ。 . . . 本文を読む
12月の暖かさに少し油断をしていたら、新年から真冬日の連続。道央や道北の雪空と反比例するかのように道東は快晴が続き、冷え込みがぐんときつくなった。昼間の晴天と夜間の冷え込みにより、一日の温度差が大きくなる。おかげで例年より少し遅れたが今年も塘路湖に御神渡り(おみわたり)が出現した。湖を縦断するように蛇行して続くその姿は、大きな力で生まれた創造物に見える。昔の人がミシャグチ神(蛇の形をした狩猟の神)が通った跡と感じた気持ちも頷ける。道東もいよいよ本格的な厳冬に突入した。 . . . 本文を読む
日本のみならず世界に知られた摩周湖。その佇まいと紺碧の水を湛えた姿は、まさに神の住む場所に見える。流れ込む川は一つもなく、小さな川への出口一つだけある。その成り立ちもまた神秘であった。まさに伝説が生まれるのにふさわしい神秘の湖である。
アイヌの人たちに語り継がれたその物語は、現代でもそのまま生きているように思えてならない。摩周湖はそうした思いをつのらせる場所でもある。 . . . 本文を読む
実に奇妙なヤツである。
顔(いや姿か)、なりわい、名前、どれをとってもユニーク。
ベカンベという、その奇妙な名前はアイヌ語であった。正体は菱の実(水生植物)。
道東の塘路湖で採れる。縄文時代から食卓に上がっていたという。
半世紀ぶりに食した。 . . . 本文を読む
オンネトーの風景を前にした時、突然、「天然の美」の歌が脳髄の中を流れていた。古すぎる話で恐縮だが、天然の美とは明治35年(1902年)に発表された唱歌。子供のころはサーカスの歌として記憶していた。後年、この歌のタイトルと歌詞を知り、初めて自然の美しさを歌ったものであると知った。オンネトーでそれを思い出したのである。その風景を前にして言葉より音楽が浮かんだ。言葉にできない風景の美しさがそこにあった。 . . . 本文を読む
雌阿寒岳の西側にオンネトーという小さな沼がある。この沼の最南端から森の中に一本の遊歩道が作られている。約1.4キロ(徒歩30分程度)、この道の終点に「湯の滝」がある。滝の高さは20数メートル。黒い岩壁を水温40℃の温泉が流れ落ちている。それだけでも見る価値があるが、この滝の周辺で貴重な鉱物資源が発見され一躍注目された。それまで秘境の露天風呂だけだった湯の滝は、同時に変革も迫られることとなったのである。 . . . 本文を読む
軍馬山の入山禁止(クマの出没)が解かれた。久しぶりに山に入る。しかし、入り口には注意事項がでていた。「一人で山歩きをしないこと、クマを近付けないために、鈴や笛、ラジオなど音の出るものを持参すること」。どうやらまだ、完全な安全とは言えないらしい。とりあえず求めたのが「クマ鈴」。バックにつけて山の中へ。ジャラ、ジャラと、足を踏み出すたびに響く鈴の音。これで彼らはこっちの存在に気づく、はずなのだが。 . . . 本文を読む
記録的な暑さとなった6月の北海道。ところがその後は曇りと雨が続いている。暑さは下げ止まりの感じだが、まるで梅雨空の様子なのだ。北海道には梅雨がない、というのが一般的な常識。どうしたことだろう?やはり異常気象なのか?しかし、調べて見ると北海道に梅雨がないという定説はどうやらあまり正確ではないようだ。事実、北海道には「蝦夷梅雨」という言葉もある。理由を求めて、ひねくれ者の心がまた騒ぎだした。 . . . 本文を読む
釧路と網走間を走る釧網線に、5月1日から新しいリゾート(?)列車が登場した。名付けて「足湯めぐり号」。名前を聞いた時、列車の中で足湯を楽しむことができるのか、と勘違いしてしまった。実際は途中駅で足湯を楽しむというもの。足湯を楽しめる駅は摩周駅と川湯駅の二つ。それぞれ20分ほどの停車時間をとり、一休みできる仕組みとなっている。もちろん無料。北海道観光における、ちょっとしたサービスになるかもしれない。 . . . 本文を読む
東京では先日、桜の開花宣言が行われたとか。だが道東の春はまだまだ遠い。「春は名のみの 風の寒さや」は童謡「早春賦」(作詞吉丸一昌)の一節。二番の終わりには「今日も昨日も雪の空」とある。まさに現在の道東は早春賦そのもの。今週22日に激しい雪。25日の夕方から26日にかけて雪模様。そんな最中に24日だけ快晴。早速、春を求めて出かけて見た。ほんのわずかだが、春が覗けた。着実に近づく季節の便りに、心が少し温まる。 . . . 本文を読む
雪に覆われた湿原に無数の黒い点。黒点は一定のリズムで動き出す。これらはすべてエゾシカの群れ。春先に良く見られるいつもの光景でもある。ところがこの冬は1月から大量の鹿が現れた。原因は道東に降った十年ぶりの大雪である。雪に埋もれた山奥から餌を求めてやって来たのだ。日当たりのいい斜面には必ず十数頭のエゾシカを見ることができる。一見のどかな風景にみえるが、実はこれが大変やっかいな危険性をはらんでいる。 . . . 本文を読む
新しい年になって最初に見る夢。今年はどんな夢が、となんとなく期待してしまう。できれば心地よい夢にしたい。そんな願いは今年見事に破れた。なんと、北海道が日本から独立するという、とんでもない夢を見ていた。連日の酒のせいなのかもしれない。嫌な汗の中で目覚めていた。正月早々実に縁起が悪く思う。お祓いをしなければと思いながら、箱根駅伝を見ていたら、嗚呼、五区で明治は失速。悪夢は現実となった。 . . . 本文を読む