やおよろずの神々の棲む国でⅡ

〝世界に貢献する誇りある日本″の実現を願いつつ、生きること、ことば、子育て、政治・経済などについて考えつづけます。

【国語教材論】22 説明文:「見立てる」(3) ~何について書いてあるのか? その2~

2012年08月13日 | 教育1 小学校国語教材論

※【国語教材論】シリーズは、小学校国語教科書の「説明文」について、主にその「(主観的)現実度」を検討するもの<参照>。「主観的現実度」とは、その作品の真実性、妥当性・適切性などのこと。前記観点での特化した教材論ですが、関連する「指導」についても考えます。原文(引用)は青字

■説明文2「見立てる」作:野口 廣((小学5年用光村国語教科書p38~39)(3)
 教科書を持たない方のために、全文を再掲します。(※原文は縦書き。なお、ここでは読みやすいように段落の間を一行あけている。)
 なお、段落番号、茶色字化、緑字化は松永によります。

   見立てる  野口 廣(のぐち ひろし)

(1)  わたしたちは、知らず知らずのうちに、「見立てる」という行為をしている。ここでいう「見立てる」とは、あるものを別のものとして見るということである。たがいに関係のない二つを結びつけるとき、そこには想像力が働いている。

(2) あや取りを例に考えてみよう。あや取りでは、一本のひもを輪にして結び、手や指にかける。それを、一人で、ときには二、三人で、取ったりからめたりして形を作る。そして、ひもが作りだした形に名前がつけられる。これが、見立てるということだ。あや取りで作った形と、その名前でよばれている実在するものとが結び付けられたのである。

(3) この場合、同じ形に対してつけられる名前が、地域によってちがうことがある。その土地の自然や人々の生活のしかたなどによって、結び付けられるものがことなるからだ。

(4) 日本でよく知られている写真○1の形は、地域ごとにちがう名前をもっている。「あみ」「田んぼ」「ざる」「たたみ」「かきね」「しょうじ」「油あげ」など、日本各地で名前を集めると、約三十種類にもなる。それぞれの土地の生活と、よりかかわりの深いものに見立てられた結果といえる。

(5) あや取りは、世界各地で行われている。写真○2は、アラスカの西部で「かもめ」とよばれている形である。しかし、カナダでは、同じ形に対し、真ん中にあるトンネルのような部分が家の出入口に見立てられ、「ログハウス」(丸太を組んでつくった家)などという名前がつけられている。

(6) 見立てるという行為は、想像力にささえられている。そして、想像力は、わたしたちをはぐくんでくれた自然や生活と深くかかわっているのだ。

 ※挿絵・写真はここを見てください。

1【現実世界】のなかの、について書かれて(=説明して)あるのか? 
その2
 
前回、この小作品の主題がなかなか理解しづらいので、その研究のためにa~d4つの「仮説」をたてました。今回からその検討に入ります。

(2) 仮説の検証 
その1

仮説a 「見立てる」という、思考行為について書いてある。

肯定する理由

・何かについての説明文では、通常、題名としてストレートに主題(=主材)を用いることがほとんど。(※大人向けでも同じ状況。まれに「ひねった題名」がある。)

冒頭の(1)段落で「見立てること」についての定義とその抽象的性質について述べ、(2)~(5)の段落でその具体例を用いて説明し、最後の(6)段落で再び、「見立てるという行為」と「想像力」と「自然や生活」との関係を述べている。

 つまり、説明・論説文の文章構成としてよく使われる、《最初に主題を提示し、中の部分で具体的に説明・展開し、最後にまとめる》、という「額縁」や「サンドイッチ」のような形式になっている。この場合、最初と最後の段落さえ読めば「主題・主題材」と「まとめ・結論」が分かるように書かれている。

・重要語句:キーワードとして、この短文中に6回も使われている。

 普通は、上記の理由だけで充分なのですが…

肯定できない理由

・「見立てる」という抽象的行為を説明するための具体例がたった一つ、「あやとり」についてしか述べられていない。
 ※4つもの段落を使っているのに「あやとり」だけというのは、説明の説得力に欠ける。普通は複数の例をあげるでしょう、例えば「盆栽」「図形や記号」「模型」「人形」など。

・文章の構成にとらわれずにすなおにこの文章を読むと、(2)~(4)の「あやとり」についての説明に作者の《伝えたいという想い》を強く感じる。つまり、作者:野口氏は、もしかすると、本当は、子供たちにあやとりのことをいちばん伝えたかったのかもしれない。

 ※1 p39の下部の「注」の欄に作者のプロフィールが書かれている。「一九二五年、東京都生まれ。数学者。特に、世界のあやとり文化について研究している。」

  ※2 「あやとり」についての説明文に作り直すと、すっきりとわかりやすい説明文になります。例えば、
 ・題を「あやとり」と変える。
 ・(1)段落と、最後の(6)段落を削除する。→(5)段落が最後の段落になる。

 ・(2)段落から本文にして、書き出しの
最初の文:「あや取りを例に考えてみよう。「あや取りという遊びは世界中にあります。」と取り替える。
 ・(2)段落の第5・6文を削除する。(※この項は後日追加した)
 
  
 どうですか?

~つづく~

<おまけ> 日本の伝統文化:「お盆」になりました。お盆は、すでに亡くなられた親などの「ご先祖様の霊・魂」をこの世にお迎えし、また送りかえすという、とても大事な「心の行事」です。例えば、盆ちょうちんは帰ってくる霊のための目印として点けるものです。

 ※このお盆をもし「まったく無視」する人がいるとしたら、その人は日本人ではないのか、あるいは、すでに(伝統的日本民族としての)日本人とはいいがたく変身してしまっている新日本人と言うことができるでしょう(※「良い・悪い」という価値観とは関係なく、事実・現象としての「変化」ということ)。

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