やおよろずの神々の棲む国でⅡ

〝世界に貢献する誇りある日本″の実現を願いつつ、生きること、ことば、子育て、政治・経済などについて考えつづけます。

【国語教材論】17 説明文:「新聞を読もう」14 ~「報道記事」に必ずある「意図など」~

2012年06月10日 | 教育1 小学校国語教材論

説明文1「新聞を読もう」<作者不明>(小5国語光村図書)p30~35 ~その14~
 
 
青字は教科書の引用部分
 ※教材文の構成:前文/[1] 新聞をいろいろな角度から見てみよう。[2] 報道記事のとくちょうをつかもう。/[3] 二つの記事をくらべよう。

(5) [2]
報道記事のとくちょうをつかもう。<p32> その4 

B「報道記事」のとても重要な特徴が書かれていない その2 

 前回、教材文について、《報道記事は「事実」(だけ)を伝えている》と思わせるように書かれていると述べました。しかし、実際はまったく違います。
 そこで、今回は、「政治についての実際の報道記事」を検討・分析してみることにします。

 まず、<参照記事>(佐賀新聞の共同通信配信記事について)をクリックして読んでみてください。
 つまり、新聞記事には、事実だけでなく記者や編集責任者の「意図など」が表現されているということです。(※そもそも、《どのニュースを報せるか》ということそのものに「編集意図」がある。)

 では、実際の記事に、どのように「意図など」が表現されているか調べてみましょう。
 「私の意図的誘導」を避けるために、きょうの産経新聞新聞の1面トップの記事を材料にして分析します。※引用文:茶色文字。

首相「大飯再稼働すべきだ」 ←見出し1 首相の多くの言葉のなかから意図的に選択している。
「生活守るため」16日にも決定    ←見出し2 同上

 野田佳彦首相は8日、官邸で記者会見し、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)について「国民生活を守るため再稼働すべきだというのが私の判断だ」と表明した。
「事実」と思われる。
 ※なぜ「思われる」のかというと、私は実際にその場にいたわけではないので事実を知らないからです。つまり、この場合は《私の総合的判断・自己責任で「産経新聞」を信じる(=産経は事実を書いていると判断する)》いうことです。以下「事実」と書いているのはすべて「事実と信じる」という意味です。

 国民に向けたメッセージは福井県の西川一誠知事が再稼働の条件として求めていたもので、←(過去の)「事実」
 知事は週明けに同意手続を再開する。 ←事実ではなく「未来の推測」。厳密には、「~再開すると言っていた」あるいは「~と思われる」などと書くのが正確な表現。

 同意が得られれば首相は16日にも枝野幸男経済産業相ら関係3閣僚との会合を開き再稼働を決定する。 ←「未来の推測」。(※しかも「産経新聞が決定」するわけではないのに、未来が確定しているように「断定形」で書くのは、もしかすると編集者の願望や期待があるから?) そうならなかったらどうするのでしょう?
 厳密には、「~決定する、と○○が言った」と書くべきで、そうすれば「事実」と思うでしょう。「と思われる」「~~予定になっている」でも悪くありませんが、その場合は「推測」になります。

 首相は「電力供給の3割を担ってきた原発が停止したままでは日本の社会はたちゆかない」と述べ、 ←「事実」
 原発の再稼働が不可欠との認識を示した。 ←記者・編集者の、首相についての判断・認識(※「事実」ではない)
~途中省略~

 野田首相は~~再稼働の必要性を強調し、福井県の西川一誠知事の要請をクリアした。 ←記者・編集者の、首相についての判断・認識 
 当初は難色を示したものの、県側の手続きが停止したため方針転換せざるを得なかった。 ←同上
 事態がここまで混迷したのは、国と地元の意思疎通が欠け、「ボール」をどちらが手にしているか認識の溝が埋まらなかったせいだ。 ←記者・編集者の判断・認識


 
これぐらい分析すれば充分でしょうね。要するに・・・

●「記事を書く」ときも「紙面に載せる」ときも、意図がある。
 ※「○○」だから報せる」の例・・・仕事だから/国民に報せるべきだから/国民・読者にそう思ってほしいから/重要な事件だから/世の中で話題になっているから/○○に圧力をかけたいから/○○を宣伝してやりたいから/○○から頼まれたから・・・

●新聞記事には「事実以外」のこともたくさん書いてある。
 ※自然現象や科学的事実とはちがって、《人間に関すること》は「事実」だけで書くことはできない。なぜなら、人間には「内心」があってそれは他人には見えないのだから。

 小学5年生にかぎらず、教育現場で「新聞について」教えるのならば、最低でも以上のことを教える必要があります。《伝達・報道》の基礎基本なのですから。
 それすら書いていない「教材」は、「欠陥教材」であるか、「特別の意図をもった悪質な教材」であるかのどちらかだと思います。

~次回、(6) [3] 二つの記事をくらべよう。

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