松永多佳倫著「マウンドに散った天才投手」を読んだ。
伊藤智仁をはじめ、プロ野球史に一瞬の閃光のように輝いた投手7人へのインタビューと周辺取材でその軌跡を辿ったノンフィクション。史上最高のスライダーを操ったガラスの天才投手・伊藤智仁(元ヤクルト)。デビュー戦ノーヒッターの偉業を果たした「江夏二世」・近藤真市(元中日)。サウスポー日本記録155キロ・石井弘寿(元ヤクルト)。脳腫瘍から生還を果たした奇跡のリリーバー・盛田幸妃(元近鉄)、クロスファイヤー・田村勤(元阪神)・・・。
よくある「あの人は今」のような内容では無く、七人とも短いながらも輝いた選手ばかりで、もちろん全盛期を知っている野球ファンの私としては各章ごとに様々なシーンが鮮明に蘇る。全員我がジャイアンツ以外の投手なので、彼らが登板すると気が重くなったものだ。近藤のノーヒットノーランは旅先のテレビで観たし、森田から原がサヨナラホームランを打たれた1991年7月の試合は実際にドーム観戦していて目の前にホームランが飛んで来たし、伊藤智仁については以前もブログで投稿したように、1993年6月の石川県金沢野球場での9回2死までリーグタイ記録の16奪三振の圧巻のピッチングと篠塚のサヨナラホームランをテレビの前で大興奮したものだ。
興味深いのは、今回7人もの投手が取り上げられているのだが、うち3人(上原・近藤・森田)がドラゴンズであること。この理由等については本書でも触れているのだが、なかなか興味深い内容であった・・・その3人のひとりである森田は実働はわずか4年であったが、私にとっては今も彼の投球が焼き付いているほどである。一瞬眩いばかりの光を放ち、短期間で散って行く・・・もちろん誰もが怪我をしたくてした訳ではないだろうが、怪我も無く、長年プレーして来た選手の中でもそれほど記憶に残らない選手もいる。無責任ないち野球ファンとしてはどちらが良いのか?は分からないが、野球談議では「はい、はい」と思い出す選手と「おぉぉ~」と思い出す選手の二通りになると思うのだが、紛れもなく今回の7人は後者であった。
あとがきには「伊藤智仁の全盛期を観る度に涙腺がゆるみ、そして奮い立つ自分がいた」・・・と書いてあったが、まるで漫画のような彼のボールの軌道は今もやはり驚き、何度も観てしまう。野球好きにはたまらないいい本だった。
H君、M先生へ・・・ごめんなさい。以前頂戴しました本をまだ読んでいません。「だったら先にこっち読めよ~」と言われると思いますが、今しばらくお待ち下さいませ
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