主人公の国岡鐵造は石油の商いをする国岡商店の店主です。
この小説は国岡鐵造の一生と国岡商店が大企業に成長するまでの過程が描かれています。
文章は読みやすく、内容も大変分かりやすかったです。
ただ、登場人物が多いので、いつもの人物一覧がこんなふうになりました。
下巻の途中で書くのをやめましたが、主要な人物は10名に満たないのでなんとかついていけました。
国岡は第二次世界大戦の敗戦で海外資産の全てを失い、莫大な賠償金が課せられようとしていました。
そんな中、「一人の馘首もならん」と言って全ての社員を守り、再建に取り組みます。
金儲けではなく、日本のために商売をすること、社員を信用することが信条で、社員からは尊敬と信頼を得ていますが、正義感が強いため既成勢力との軋轢などもあって敵も多いです。
(国岡商店が属さない)石油連合という組織と通産省が手を組み、石油の生産調整をし、挙句に価格が上昇したり、品薄になったりします。
今、米やガソリンの価格が高騰しているのも同じ構造じゃね?って思いながら読んでいました。
国岡鐡造は、常に消費者のことを第一に考え、時にはずさんなルールを無視し、大勢に迎合することなく孤軍奮闘します。
困難、克服、困難、克服を繰り返し、国岡商店はシェアを伸ばし、国民からの支持も得て成長していきます。
読んでいて痛快な場面が多く、これは映画や大河ドラマにしたらウケるだろうな、と思ったらすでに映画が作られていました。
しかも日本アカデミー賞を取っていたんですね。Amazonプライムで観ようと思います。
国岡鐡造という名は聞いたことがなかったものの、てっきり実在の人物だと思っていました。
でもそうではなかったようです。ただ、モデルがいて、出光興産を立ち上げた出光佐三(誕生日が私と同じ)という方でした。
著書もたくさんあるようなので、手に入るようならこれも読んでみたいと思います。
国岡が愛した古美術の中に仙厓和尚の絵の中に、「気に入らぬ風もあろうに柳かな」という画賛があるそうです。
気に入らないことが世の中にはたくさんあるけれども、柳のようにしなやかに受け流そうという意味でしょう。
座右の銘なんて今まで考えたことがありませんでしたが、もし聞かれたらこれを話すことにしようと思いました。
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