数学は、中学生の時に沢田先生に頭をひっぱたかれながら教わったので得意である。
沢田先生はサングラスをし、ズボンのポケットに手を突っ込み、襟を立てて教室に入ってきて、授業中にタバコをふかし、吸殻は窓からポイッと捨てる、漫画に出てくるような先生だった。
何度殴られたか数知れぬ。しかしそのおかげで福島高専の土木科に入学できた。
本屋さんで数学関連の小説を見るとついつい買ってしまうのは、なんだかんだ言って数学が好きだからだ。
数学が苦手な中学二年の遥の前に、数学しか興味がない転校生・宙がやってくる。
宙は数学の力でどんな悩みも解決する「数学屋」なる謎の店を教室内で開店する。
隣の席で遠巻きに見ていた遥も少しずつ宙との距離が縮まり、やがては数学屋を手伝うことになる。
共に校内のいざこざや悩みを解決し、数学屋は徐々に活気が出てくるが・・・。
結局、「数学屋」の提案した解決案通りになったものは一つもない。それでも問題は解決する方向に進み、周りは幸せになっていく。
数学の公式通りに世の中のことが進むことはないが、問題解決の一助になったことは確かだ。
前半は、数学の解説をわかりやすい例で解説したものだと思って読めば良い。後半は、ほんのりとする青春小説。
数学が苦手な方におすすめです。
人づてに聞いた話だが、沢田先生はその後、私のことを気にかけてくれていたらしく、「あいつは元気か?」と私のことをいろいろな人に聞いていたらしい。
元気かな、沢田先生。