たそがれ縁側日記

ボケ老人の独り言

『明日への遺言」

2008-03-12 07:51:42 | Weblog
 大岡昇平作「ながい旅」が「明日への遺言」という題名で映画化された。昭和20年終戦直前、名古屋は米空軍機B29の無差別爆撃で焼け野原となり、猛火の中を逃げ惑う市民は焼夷弾による波状攻撃で数万人が死んだ。その後撃墜され捕虜となった米軍機の搭乗員三十数人が日本軍により処刑された。物語はその処刑を命じた岡田資中将がB級戦犯として裁かれる裁判の一部始終を描いたものである。
 軍需工場などが存在しない商業地域や住居地域を無差別に爆撃することは国際法上でも禁じられているが、長引く戦争を終結させるため米国は無差別じゅうたん爆撃を強行し、最後は原子爆弾を投下した。岡田中将がそうした違法な爆撃をした搭乗員に対し(報復ではなく)罰として処刑を命じたのだと、その正当性を主張する。しかし腹の中では自らの戦争犯罪を認め全責任を負うことを決めており、検事の追及に対し事実は事実として率直に認め、決して逃げようとはしない。
 この潔い態度に検事や裁判長も内心感動し、それとなく被告に有利となる材料を示唆するが、言い逃れをしない岡田中将の姿勢は変わることはない。岡田中将としては刑は自分ひとりに止め、命令を受け直接処刑に携わった部下の責任は何としても免れさせなければならないと考えていた。
 岡田中将に対して絞首刑の判決が言い渡された。その他は重労働の刑が課せられた。1年後岡田中将の絞首刑が執行され、その他は昭和33年までに順次釈放された。裁判において終始一貫全責任は自分にあるとの姿勢を貫いた態度に深い感動を覚えた。絞首台に向う拘置所の中庭で夜空に輝く月を眺めるシーンが印象的だった。岡田中将役を演じた藤田まことの演技も良かった。


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