たそがれ縁側日記

ボケ老人の独り言

告知

2007-05-28 16:49:38 | Weblog
 つい最近、親しかった人が亡くなった。68歳で仕事からも解放され、これから余生を有意義に過ごしたいとしている矢先のことだった。
 体調に異変を感じ、念のためにと思って病院で診察を受けたのが2ヶ月ほど前のことだった。がんを患者本人に告知することは現在ではあまり珍しいことではなくなっているが、彼の場合は診断の結果、末期がんで手術は不可能、余命も厳しいというものであった。医師からの本人や家族に対する告知もありのままの内容で伝えられ、彼にとっては青天の霹靂、まさかとの思いであった様だ。暫くの間は落胆し、茫然自失であったが、やがて現実を冷静に受け止める以外方法がないことをさとったのか、遺される者に対しいろいろ書き記し始めたという。その様子を見るにつけ告知の残酷さ無残さを思い知らされた。
 がんは現在の医学では治癒も可能であることから、がんと告知されてもわりと冷静に受け止め、必ず治るとの思いで治療に専念するのが普通である。しかし彼の場合のように、がんは既に手遅れで余命も数か月だと示唆する告知内容はあまりにも残酷であり、その精神的打撃から余命をさらに縮めることになってしまったのではないかとさえ思われる。告知するにしても家族にはともかく、患者本人には和らげた表現で告知されれば結果が多少違ってくるのではないだろうか。
 告知からおよそ2ヶ月で彼は逝った。その間、彼の心の動きを知ることはできないが、その思いつめた表情から苦悩がはっきり分かる。観念的には告知は必要だとは思うが、そのむごさを目の当たりにすると告知のあり方に疑問が湧く。

男性専用車両

2007-05-20 17:36:51 | Weblog
 中日新聞5月17日夕刊の特報で阿川弘之氏が男性専用車両をつくることを提唱している。それというのも痴漢の冤罪で誤認逮捕され一生を台無しにしてしまったケースを見るにつけ、自分もいつかそんな目に合うかもしれないと思うと満員電車に乗るのが恐ろしくなるからだ。
 男性なら誰しも経験することだが、満員電車に乗り合わせ隣の女性に体を押し付けられ身動きが取れないとき、あらぬ疑いをかけられるのではないかと心配になることがある。また実際に痴漢があった場合、そばにいた男性が間違えられて濡れ衣を着せられることもある。報道によればそんな不安からのがれるため、わざわざ徒歩で始発駅まで行き、座って通勤するとか、片手はつり革に、もう一方の手には携帯を持って周囲から見える高さを維持する「バンザイ通勤」など涙ぐましい努力をしているという。
 地下鉄などでは出勤時間帯に女性専用車両を設けているのが普通だが男性専用車両は見かけない。男女平等の世の中であれば理由はともあれ男性専用車両があってもおかしくない。これから激務に向う通勤電車の中くらは要らぬ心配から開放され、こころ安らかに過ごさないと男性はたまったものではない。

サルコジ仏大統領

2007-05-07 07:13:11 | Weblog
 注目されたフランス大統領選挙の決選投票でサルコジ氏がロワイヤル氏を破って当選した。
 フランス国民は、アメリカ型市場原理を推し進めることにより経済の回復を狙うサルコジ氏陣営とヨーロッパ型社会福祉の推進を主張するロワイヤル氏のどちらを選択するか大いに関心を持って見ていたが、結果はアメリカ型市場原理が勝った。労働者にとって手厚い制度にあるフランスでは企業活動に制約が多く、グローバルな価格競争に勝てず、企業は安い労働力を求めて活動の拠点を海外に移し、国内の失業者が増大し、社会不安が増大する傾向にある。働く側も種々な制限の下にあって十分能力を発揮できず、収入も限界があるといわれる。こうした規制を取り払ってもっと自由に競い合うことにより社会を活性化させたいとする空気が強いのだろう。
 こうした情勢は日本でも同じだ。夏の参議院選挙では格差社会問題を争点として戦いたい民主党と引続き改革路線を推し進め、憲法改正問題も焦点にしたいと考えている自民党とのどちらを国民が選択するか。
 今や政治経済問題は国内だけでなくグローバルな視点からしか解決の道がない。高所得者と低所得者とが納得して共存できる社会が望まれる。

やはり安定志向か

2007-05-06 12:05:17 | Weblog
 4月25日社会経済生産性本部から発表された「新入社員意識調査」によると、①処遇に関して、業績・能力主義的な給与体系、昇格を希望する回答が6割以上を占めるものの、過去最低の水準となった。②「チャンスがあれば、転職してもよい」とする回答が今まで半数を占めていたが、今回初めて「今の会社に一生勤めたい」とする回答が上回り逆転した。さらに、「条件のよい会社があれば、さっさと移るほうが得だ」とする回答が過去最低となった。③フリーターに対しての肯定的な意見が90年には5割以上しめていたのが、減少し続け今回初めて3割を割った。
 このところ格差社会についての議論が盛んになされており、「能力を発揮した者がそれに見合う収入を得ることのできる社会が望ましい」、「否、そうした市場原理の導入が格差を生み社会をおかしくしている」など様々だ。しかしこの調査結果から見ると振り子がまた元に戻るように、以前の平等安定志向に戻りつつあるようだ。若い人たちに厳しい競争社会に打ち勝つ気力が萎えつつあるのか。
 更にもう一つの日本青少年研究所の「高校生意識調査」によると、「食べていける収入があればのんびり暮らしたい」とする設問に対する肯定率が、日・米・中・韓各国中最も高い結果が出ている。また頑張る対象も中・韓では「いい大学に入るための勉強」であるのに対し、日本の高校生には具体像がない。
 こうした傾向は、競争を抑えたゆとりのある教育の結果、意欲に乏しいマイルドな青年が育ってきたからかも知れない。