「心のバリアフリー化」を図るための研究報告書が発行された。
次のタイトル書である。
心のバリアフリー化に関する促進・啓発事業企画実行委員会 委員長 坂巻 熙(さかまき ひろむ)編「平成22年度心のバリアフリー化に関する促進・啓発事業」平成24(2012)年2月29日刊(社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会)
本誌の「第2章 座談会 心のバリアフリーに関するアンケート調査をめぐって」(p.63~p.107)から興味深い発言を引用する。
その第2回目。
坂巻氏は心の壁を無くすには、個別に対応していてはなんともならないと、以下のように発言(p.69~p.70)している。
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【引用始め】(p.70)
坂巻:
この調査は、大変貴重な調査です。
知的、精神、身体という三障害、違った障害を持った人たちの相談員が、同じテーマで調査し、意見を言ったというのは、全国で初めてのケースです。
心の壁は、1対1の関係ではなくならない。制度とか政策とか、そういうものに移していかなければ無くならない。
千葉県や熊本県とか、県レベルでは、差別禁止の条例が制定され、だんだん広がってきています。
一番のネックの心の壁を、どう具体的になくしていくか、なくしていくのは不可能にしても、どうそれにアプローチしていくかという議論は、とても大事です。
公務員の資質とか、障害者同士で差別しているとか、家族の中で差別をしているとか、教育の場でとか、施設をつくれば、必ず建設を反対されて、総論賛成各論反対の社会が現実にまだあります。
【引用終わり】
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心の壁を無くすことは簡単でない。
それだからこそ、今の世代でできなくとも次の世代、次の次の世代と息長い地道な努力を積み重ねて実現を目指す。
性急で過激な取り組みは、かえって物事をこじらせる。
育成会としては、制度や政策を変えていく運動を絶えず継続してゆく。
個別の問題事例をバックに、その解決に向けた方策を訴えていく。
育成会はそうした提言する障がい者団体になっていく。
そのことで、社会の信頼を勝ち得ることができる。
また、味方になってくれる人も増える。
さらに、多くの協力や支援も得られるようにしたい。
そうした大きな社会のうねりになれば、いずれ「心の壁」もあまり意識しなくても良くなるに違いない。
(ケー)