私の思いと技術的覚え書き

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機械式アナログスピードメーターのこと(637rpm判る?)

2019-10-18 | 車両修理関連
 ここでは旧車に関心ある方向けに、およそ知っている方が少ないと想像することを書き留めてみます。
 旧車のスピードメーター(もっと旧車ではタコメーターも)は純機械式で、トランスミッションアウトプットシャフト(四輪)や前輪の主軸(二輪)から、ドリブン(被駆動)ギヤの回転を、ケーブルでメーター本体に伝え、メーター指針を振らせていました。なお、オドメーター(走行距離計)は、回転をメーター内のギヤで減速し、ドラム式のカウンターの0.1km単位を駆動し、これが一周する毎に順次高位桁のカウンターを桁上げするという方式だった訳です。(写真1)

 ここで、表題括弧書きの637rpmと云う回転数※ですが、スピードメーターを単体でテストする際、この回転数で廻すと、メーター指針が60km/hとなる様に規格が決められていたのです。(二輪車は1,400rpm)この説明の詳しいことはJIS規格D5601で規格化されています。(写真2)

 昔話ですが、スピードメーターもしくは計器板をインストルメントパネルから外す場合、まず、このスピードメーターケーブルとメーター本体の縁切りを行う訳ですが、狭い隙間に手を入れて手探りで行う訳ですが、これが大変なクルマがあったものです。メーターケーブルの両端の固定は、当初は両端ともねじ込み式だったのですが、後年にメーター側のみ作業性を改善するためにワンタッチロック式に改良されました。しかし、程なく、電気パルス式が主流となり、現用車でメーターケーブルを持っているものは極めて少なくなったと思えます。(写真3)

 このスピードメーターケーブルがある時代、メーターが不動の場合に一番多いのがワイヤーの切断だったのだと思います。しかし、ワイヤーの切断ではなく、ドリブンギヤの摩滅というトラブルもあった訳です。四輪車の場合ですが、ドリブンギヤには歯数に種別があります。このおもな理由としては、デフ(というかファイナルギヤ比)の違いやタイヤ径の違いを補正するためにあったのです。(写真4)

 それとスピードメーターのトラブルで指針が踊る(振れ変動する)というのも多かった記憶があります。これは、ケーブルが切れる前の時点でバラけて抵抗が一様でなく回転振動を起こすものと、ケーブルの取り回しが悪く、強く曲がっているなどの際に生じたものでした。

※637rpm発生用テスター
 スピードメーター単体テスト用の637rpmを発生させるテスターですが、一般の整備工場ではまず保有しているところは少なかったと思います。これは交流同期モーターの定速回転(50もしくは60Hzで異なる)を、適宜ギヤで減速して正確に作りだしているというものでした。

追記
 現在のデジタル制御機器では、およそ総てがそうですが、回転数も単位時間のパルス数をカウントし、そのパル数(デジタル値)をDA変換してリニアなアナログ電圧値として、単なる電圧計としてのメーター指針を振らせています。(およそ12V電装車ではECU内の基準電圧(Vcc)は5Vの定電圧回路で平滑化されていますんで、メーターフルスケールで5Vという規格だと想像します。





追記2
 コメントで交差式コイルを使用しており単純な電圧でないとのことを受けて、ちょっと調べてみましたので追記します。
 サーキットテスター様の電圧計では広角度(270deg)のメーターはできません。ちょっと調べることで勉強ができました。
 この様な広角度メーターは交差コイル式メーターというのを使用しているとのことです。2つの直交したコイルを持つメーターで広角度指針の動きを確保しているとのことです。動作は、添付図の通り2つのコイル(L1、L2)に独立した2つのAD変換した直流を与え、
L1>0,かつ,L2>0のとき
θ=tan-1{(L1) /( L2)}
L1=0,かつ,L2>0のとき
θ=90°
L1<0,かつ,L2>0のとき、または、L1<0,かつ,L2=0のとき、または、L1<0,かつ,L2<0のとき
θ=tan-1{(L1) /(L2)}+180°
L1=0,かつ,L2=0のとき
θ=270°
L1>0,かつ,L2<0のとき
θ=tan-1{(L1) /(L2)}+360°
 と広角度な指針範囲を実現しているとのことです。なお、指針の微小な振れを防止するため、ラッチ回路である程度参照値の保持を行う回路も取り入れている様な概念の様です。


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