国産車の産声の頃の話である。1936年に量産を始めたという、トヨタAA型であるが、トヨタ博物館に所蔵されるが、80年前のクルマであり、トヨタ社内にも現存車がなく、1980年代になって極力オリジナルに忠実にと云う主旨で復元車として作られたのだという。このAA型は、いわゆる木骨に外板鋼板を張り付けたものでなく、当時としては先進的な全鋼板ボデーとして作られた。そして、その外板パネルの製作風景が名古屋の産業技術記念館に再現されている。
古い板金屋さん(つまり年輩のお方)とお話しして、昔の職人仕事のことを聞く機会がある。モータリゼーションが起こる遙か以前、庶民がクルマなんかとても持てなかった様な時代のことだ。クルマを作るのも直すのも今よりもっともっと職人技といったものが必要であった時代として興味を持って聞くのだ。そんな職人技の風景を今に伝える施設として、名古屋市西区にある「産業技術記念館」のことを記してみる。トヨタグループが作った博物館の一種で、大まかに織機と自動車関係の実物を中心に展示されている。また、館の建屋自体も大正時代に作られたという元豊田自動織機の煉瓦作りの工場跡で魅力的なもの。そんな「産業技術記念館」ですが、2005年の1月から試作工場という新たな展示が加えられたと聞き、程なくして当時見学した試作工場の内容を中心に紹介してみる。
試作工場の外観は、まさに今でも町の板金屋さんでもありそうな外観となっている。その内部は、木型の外板用実物ゲージや昔の板金屋さんから話しに聞く、サブロククラスの大型定盤、木臼やローラー等々が並べられ、まさに平板鋼板から手叩きでボデー各部を作っている光景が再現されている。この「産業技術記念館」ですが、試作工場以外にも数々の展示があり、比較的早足で廻っても2時間くらい掛かる程の膨大な展示量で、クルマ好きにとっては、トヨタ博物館以上に勉強になると感じている。休みの日にでも奥さんつれて訪問されたら一興かと思う。なお「産業技術記念館」の直ぐ隣の敷地に「ノリタケの森」という施設がある。高級食器で高名なノリタケカンパニーの旧工場跡地を利用した博物施設で、非常に緻密な高級陶磁器等のカラフルな彩色風景等、女性にはこちらの施設の方が楽しめるのかもしれぬ。
追記
町田にあるフェラーリのボデーリペアで高名なA板金さんとは、もう何年もお会いしてないが、何時も会う都度、修理が面白くなくなったとこぼしていたのが思い出される。つまり、フェラーリでも70年頃までは、ピニンなどカロツェリアにおいて、先に記した木型をゲージとして、各パネルを手作りしていたのだ。フェラーリだけでなく、アルファのTZやSZみたいな、アルミ手作りボデーも同様で、塗膜を剥いでみると、1枚のフロントフェンダーが3枚とかのパートパーツを溶接で接合してあって驚くなんてこともある。これら手作りパネルは、個別部品の寸法公差は極めて大きく、例えば事故でドアパネル取替なんかしようものなら、ドアの前後長が異なることから、そのままではマトモに付かないか、付いてもチリが合わないなんていうのは当たり前のこと。削ったり、盛り継ぎ足したり、曲げ加工したりと、今でいう粗悪外品ハンドレイアップのFRPバンパーを装着する以上の手間や技術が必用だった。そして、それが板金屋としての醍醐味であったということを感じ取ったものだ。
古い板金屋さん(つまり年輩のお方)とお話しして、昔の職人仕事のことを聞く機会がある。モータリゼーションが起こる遙か以前、庶民がクルマなんかとても持てなかった様な時代のことだ。クルマを作るのも直すのも今よりもっともっと職人技といったものが必要であった時代として興味を持って聞くのだ。そんな職人技の風景を今に伝える施設として、名古屋市西区にある「産業技術記念館」のことを記してみる。トヨタグループが作った博物館の一種で、大まかに織機と自動車関係の実物を中心に展示されている。また、館の建屋自体も大正時代に作られたという元豊田自動織機の煉瓦作りの工場跡で魅力的なもの。そんな「産業技術記念館」ですが、2005年の1月から試作工場という新たな展示が加えられたと聞き、程なくして当時見学した試作工場の内容を中心に紹介してみる。
試作工場の外観は、まさに今でも町の板金屋さんでもありそうな外観となっている。その内部は、木型の外板用実物ゲージや昔の板金屋さんから話しに聞く、サブロククラスの大型定盤、木臼やローラー等々が並べられ、まさに平板鋼板から手叩きでボデー各部を作っている光景が再現されている。この「産業技術記念館」ですが、試作工場以外にも数々の展示があり、比較的早足で廻っても2時間くらい掛かる程の膨大な展示量で、クルマ好きにとっては、トヨタ博物館以上に勉強になると感じている。休みの日にでも奥さんつれて訪問されたら一興かと思う。なお「産業技術記念館」の直ぐ隣の敷地に「ノリタケの森」という施設がある。高級食器で高名なノリタケカンパニーの旧工場跡地を利用した博物施設で、非常に緻密な高級陶磁器等のカラフルな彩色風景等、女性にはこちらの施設の方が楽しめるのかもしれぬ。
追記
町田にあるフェラーリのボデーリペアで高名なA板金さんとは、もう何年もお会いしてないが、何時も会う都度、修理が面白くなくなったとこぼしていたのが思い出される。つまり、フェラーリでも70年頃までは、ピニンなどカロツェリアにおいて、先に記した木型をゲージとして、各パネルを手作りしていたのだ。フェラーリだけでなく、アルファのTZやSZみたいな、アルミ手作りボデーも同様で、塗膜を剥いでみると、1枚のフロントフェンダーが3枚とかのパートパーツを溶接で接合してあって驚くなんてこともある。これら手作りパネルは、個別部品の寸法公差は極めて大きく、例えば事故でドアパネル取替なんかしようものなら、ドアの前後長が異なることから、そのままではマトモに付かないか、付いてもチリが合わないなんていうのは当たり前のこと。削ったり、盛り継ぎ足したり、曲げ加工したりと、今でいう粗悪外品ハンドレイアップのFRPバンパーを装着する以上の手間や技術が必用だった。そして、それが板金屋としての醍醐味であったということを感じ取ったものだ。