何事でも同様ですが、ものの見方とか損傷診断技法って重要ですよね。日頃付き合う整備屋さんとか中には見掛ける板金屋さんと称する方でも、生意気ですが判ってねぇなぁと思うことがあります。そんな思いを込めて勝手な戯れ言を記します。結構な長文ですので,文章読むのが苦手な方は、見流して下さい。
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これは、クルマで道路を走っていて、信号待ちなどで停車中の前車とか斜めの前のクルマを見て、何らかの不具合を見て思う性癖のことです。類似の思いで眺めてる整備、板金関係の方も多いのかもしれません。それは、不具合とか、ぶつかった損傷を見て、その原因は何だろうとか、板金とか塗装修復後の状態を見て、ヘタクソだなーとか勝手に想像するものです。
写真はつい先日の前車の比較的軽度な後部損傷を眺めながらしばらく走った時、考えたことを記してみます。
まず、損傷原因はぶつけられたんでなく、何らかの構築物(ポール状物?)にバックでぶつけた事故であろうと考えました。しかも、この構築物の高さは6、70cmだろうということです。つまり、ナンバー上のガーニッシュから上に損傷がないことからです。
さて、ここからが私の考えも含むので、絶対視しないでもらいたいし、このコーナーには優れた板金技能者もいるのでしょうから、意見は分かれる場合もあること承知で記します。ただ、一般に整備主体の技能者の方には、板金損傷の見方が失礼ながら甘い場合が多々見られますので、参考になれば幸いと思い独断として記すものです。
まず、鋼板でもアルミ、樹脂でも、変形が生じている場合、そのすべてが塑性変形している訳ではないということです。塑性とは変形が元に戻らない変形を指しますが、変形の中には弾性変形(働く力を抜くと元に戻る変形)も多く含まれるということです。これは、ブリキ板とか薄い板を指で曲げていくと、ある小範囲までは変形を与えても元に戻りますが、これが弾性変形です。そして、ある程度曲げると、ある程度戻ります(スプリングバックと呼ぶ)が、完全には戻らなくなり永久変形が生じます。これが塑性変形です。つまり、今回のセレナのバックドア損傷は、ある部分の塑性変形により、これが拘束することで弾性変形も含んで生じています。これを復元するには、的確に塑性変形部位だけを修正できれば、その他の弾性変形部分は自動的に復元してしまうということです。
但し、これが難しいところでもあるのですが、塑性変形部分を修正するに当たり、一切の伸びなく復元することは大変難しいことなのです。それとか、闇雲に弾性変形部分までに打撃を与え、鋼板を伸ばすことは、損傷部と異なる部位に新たな変形を生じたり、いわゆる指で押すとペコペコ動くという、いわゆる張りがない状態に陥ります。この伸びた状態も絞りという技法で復元は可能なのですが、非常に難しい要素を含みます。一枚の平な鋼板があるとしましょう。その中央部をオンドリー(ハンマーと受ける当て板の軸線を一致させる打撃手法)でバンバンと叩きます。その部分は凹損すると共に伸びることが容易に想像出来ますね。そこで、生じた変形を再打撃して凹損は復元しても、伸びは回復できません。そして絞り作業を行いますが、その伸びた部分を完全に特定でき、その伸びた量を正確に絞れば復元できるのでしょうけど、現実としては非常に困難なことなのです。鋼板の張りは、全体のバランスとして成立していますから、一部分の伸びとか絞りが、広範囲の影響となることは理解できるでしょう。関連して、正常なパネルを指で押してみて、各パネルでその手応え(張りの強さ)を比べてみて下さい。4ドア車で前後のドアで前が長く後ろが短いと思いますが、昨今のペラーンとした緩い曲面(クラウンと呼ぶ)で強いプレスラインがないパネルですと、明らかに前ドアの張りが弱いと判るでしょう。こういうパネルは、大したことない損傷でも板金は難しいと知って欲しいところです。
前講釈が長くなりましたが、写真の3枚目に私がざっと見た全体の変形範囲(黄色)の中で、塑性変形となる部位(赤色)を記してみました。ここで、使う板金手工具としてはプレスライン部は影タガネですね。それと、ドア下部に元々プレスラインのないところに水辺にスジが生じていますね。ここは、インナーパネルのフランジ部にアウターパネルが包む様に曲げ加工(ヘミング処理と呼ぶ)されている部位ですね。この部位が大きな変形が生じると、インナーパネルの変形と共に直す必要が生じますが、今回の変形レベルであれば、それ程の難易度は生じないと見ます。
総体として、今回のバックドアは、十分なスキルを有した板金技能者にとれば、それ程高次の損傷レベルではないと思えます。但し、ご存じの様に同色の程度の良い中古バックドアがあれば、塗装の必要もないので、一項の余地は生じるでしょう。でも、色違いだったら、板金および塗装がコスト的に有利とみえます。
最後に写真で示したリヤバンパー(青色)の部分ですが、写真上は損傷がある様に見えません。しかし、樹脂部分は往々にしてあることですが、事故の一瞬変形し元に戻っている場合はよくあります。その時、気をつけて見るべきは塗膜の割れですね。変形部位を中心に蜘蛛の巣状に割れが生じているケースは良く見るもので、ダブルアクションサンダーなどで素地近くまでサンディングし、プラサフ+再塗装が必要を見逃すと、見積と請求が乖離して信用を失うことになりかねません。
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これは、クルマで道路を走っていて、信号待ちなどで停車中の前車とか斜めの前のクルマを見て、何らかの不具合を見て思う性癖のことです。類似の思いで眺めてる整備、板金関係の方も多いのかもしれません。それは、不具合とか、ぶつかった損傷を見て、その原因は何だろうとか、板金とか塗装修復後の状態を見て、ヘタクソだなーとか勝手に想像するものです。
写真はつい先日の前車の比較的軽度な後部損傷を眺めながらしばらく走った時、考えたことを記してみます。
まず、損傷原因はぶつけられたんでなく、何らかの構築物(ポール状物?)にバックでぶつけた事故であろうと考えました。しかも、この構築物の高さは6、70cmだろうということです。つまり、ナンバー上のガーニッシュから上に損傷がないことからです。
さて、ここからが私の考えも含むので、絶対視しないでもらいたいし、このコーナーには優れた板金技能者もいるのでしょうから、意見は分かれる場合もあること承知で記します。ただ、一般に整備主体の技能者の方には、板金損傷の見方が失礼ながら甘い場合が多々見られますので、参考になれば幸いと思い独断として記すものです。
まず、鋼板でもアルミ、樹脂でも、変形が生じている場合、そのすべてが塑性変形している訳ではないということです。塑性とは変形が元に戻らない変形を指しますが、変形の中には弾性変形(働く力を抜くと元に戻る変形)も多く含まれるということです。これは、ブリキ板とか薄い板を指で曲げていくと、ある小範囲までは変形を与えても元に戻りますが、これが弾性変形です。そして、ある程度曲げると、ある程度戻ります(スプリングバックと呼ぶ)が、完全には戻らなくなり永久変形が生じます。これが塑性変形です。つまり、今回のセレナのバックドア損傷は、ある部分の塑性変形により、これが拘束することで弾性変形も含んで生じています。これを復元するには、的確に塑性変形部位だけを修正できれば、その他の弾性変形部分は自動的に復元してしまうということです。
但し、これが難しいところでもあるのですが、塑性変形部分を修正するに当たり、一切の伸びなく復元することは大変難しいことなのです。それとか、闇雲に弾性変形部分までに打撃を与え、鋼板を伸ばすことは、損傷部と異なる部位に新たな変形を生じたり、いわゆる指で押すとペコペコ動くという、いわゆる張りがない状態に陥ります。この伸びた状態も絞りという技法で復元は可能なのですが、非常に難しい要素を含みます。一枚の平な鋼板があるとしましょう。その中央部をオンドリー(ハンマーと受ける当て板の軸線を一致させる打撃手法)でバンバンと叩きます。その部分は凹損すると共に伸びることが容易に想像出来ますね。そこで、生じた変形を再打撃して凹損は復元しても、伸びは回復できません。そして絞り作業を行いますが、その伸びた部分を完全に特定でき、その伸びた量を正確に絞れば復元できるのでしょうけど、現実としては非常に困難なことなのです。鋼板の張りは、全体のバランスとして成立していますから、一部分の伸びとか絞りが、広範囲の影響となることは理解できるでしょう。関連して、正常なパネルを指で押してみて、各パネルでその手応え(張りの強さ)を比べてみて下さい。4ドア車で前後のドアで前が長く後ろが短いと思いますが、昨今のペラーンとした緩い曲面(クラウンと呼ぶ)で強いプレスラインがないパネルですと、明らかに前ドアの張りが弱いと判るでしょう。こういうパネルは、大したことない損傷でも板金は難しいと知って欲しいところです。
前講釈が長くなりましたが、写真の3枚目に私がざっと見た全体の変形範囲(黄色)の中で、塑性変形となる部位(赤色)を記してみました。ここで、使う板金手工具としてはプレスライン部は影タガネですね。それと、ドア下部に元々プレスラインのないところに水辺にスジが生じていますね。ここは、インナーパネルのフランジ部にアウターパネルが包む様に曲げ加工(ヘミング処理と呼ぶ)されている部位ですね。この部位が大きな変形が生じると、インナーパネルの変形と共に直す必要が生じますが、今回の変形レベルであれば、それ程の難易度は生じないと見ます。
総体として、今回のバックドアは、十分なスキルを有した板金技能者にとれば、それ程高次の損傷レベルではないと思えます。但し、ご存じの様に同色の程度の良い中古バックドアがあれば、塗装の必要もないので、一項の余地は生じるでしょう。でも、色違いだったら、板金および塗装がコスト的に有利とみえます。
最後に写真で示したリヤバンパー(青色)の部分ですが、写真上は損傷がある様に見えません。しかし、樹脂部分は往々にしてあることですが、事故の一瞬変形し元に戻っている場合はよくあります。その時、気をつけて見るべきは塗膜の割れですね。変形部位を中心に蜘蛛の巣状に割れが生じているケースは良く見るもので、ダブルアクションサンダーなどで素地近くまでサンディングし、プラサフ+再塗装が必要を見逃すと、見積と請求が乖離して信用を失うことになりかねません。