私の思いと技術的覚え書き

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足回りのトラブル

2015-01-29 | BMWミニ
 足回りのトラブルといえば、一番はタイヤに起因するものでしょう。摩耗が進んで寿命を迎えるものもあるでしょうし、アンバランスやフラットスポットなどで真円度が狂って振動を生じることは、ままあることでしょう。それ以外のトラブルでダンパーの減衰力劣化なんかは、まず通常はトラブルとして表出しないものだと思います。もっとも、ダンパーオイルシールからの漏れで、完全にダンパーが抜けている様な場合は、明かな減衰力不足として感じられるものですが、最近はめったに見られなくなったと感じます。

 ところで足回り関係において最も多いのが、路面の凹凸などの通過において、ゴトゴト音を生じるというものではないでしょうか。クルマの性能の内、NVH(ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス)というものがありますが、このハーシュネスを改善しようと、クルマの各サスペンションアームにはラバーブッシュが使用されます。これがレーシングカーみたいな走る性能だけを追求するクルマであれば、ラバーブッシュによる応答性や剛性感の悪化を嫌い、ピローボールみたいなベアリングの使用となりますが、実用車で長期間を快適に使用するにはそぐわないものです。

 サスペンションアームに使用されるラバーブッシュですが、そのジオメトリ(幾何学的な動き)に応じて、ブッシュの容量(動きの大きさ)や固さを変えたり、単一方向にスグリ(空白部)を作り、その方向のみに動き易くしたりと工夫が凝らされています。例えば、フトントロワアームでは、タイヤ接地点に垂直な位置にあるロワアームブッシュは堅く小容量であり(BMWの様に逃げのないボールジョントを使用する場合もある)、旋回時のキャンバー剛性を維持しつつ、ロワアーム後端もしくは前端のブッシュは左右方向にスグリを入れた大容量ブッシュを有し、タイヤが突起乗り越し時にロワアームの動きの自由度によりタイヤ自体を後退させる様な動きを作り出しています。この様な大きな動きを与えたブッシュを別名コンプライアンスブッシュとも呼び、ハーシュネスの改善を行っている訳です。

 これらコンプライアンスブッシュは、その動きに応じてホイールアライメントに変化を生じますから、シミュレーションや実車評価において、様々なテストが行われた上で採用がなされていることでしょう。しかし、動きが大きいだけに、経年を経るとラバーの劣化や摩耗が進み易く先のゴトゴト音みたいなトラブルを生じる元になると感じます。大概の場合、メーカーではブッシュのみの補給部品が設定されていて交換ができますが、プレス装置が必用ですし慣れないと手間取ってしまう作業でしょう。しかし、安易なアームAssy交換はバカ高く(特に鍛造アルミ品など)付きますから、熟練者にブッシュのみの交換を行ってもらえることが賢いクルマ好きと思います。

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