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成型炸薬弾[HEAT]対戦車榴弾(High-Explosive Anti-Tank)とは

2020-02-11 | コラム
 先回APFSDS弾について書き留めた。今回は成型炸薬榴弾というものについて書き留めてみたい。
 成型炸薬弾とは、弾の炸薬(着弾時に爆発する火薬)をライナーにより円錐状に成型してあるものをいうようだ。この円錐状で爆発が起こると、以下のモンローとノイマンというそれぞれの化学作用を生じると云う。

モンロー効果(英: Munroe effect)とは、アメリカの科学者、チャールズ・E・モンロー(Charles E. Munroe[1])が1888年(諸説あり)に発見した円錐形のくぼみ(Shaped charge、またはHollow charge)を持つ爆薬を後方(円錐の頂点がある方向)から起爆すると、反対側の前方に強い穿孔力が生じる現象。成形炸薬効果(Shaped Charge effect)などとも呼ばれる。

ノイマン効果(英: Neumann effect)とは、ドイツの科学者、エゴン・ノイマン(Egon Neumann)が1910年に発見した、モンローの円錐形のくぼみに金属板で内張り(くぼみと同じ形の金属の円錐をはめ込むこと)をすると穿孔力がさらに強くなる現象。

 と云うことで、APFSDSは弾の衝突運動エネルギーを高め穿孔するする物理作用を持つが、整形炸薬弾では、弾の運動エネルギーは小さくても、着弾すると円錐状の成型により、その中心軸に強力なメタルジェットたる噴流が生じて、被着弾物を強力に侵徹するという兵器なのだ。HEAT発射においては、火薬で弾を加速するのではなく、弾にロケットなどの自己推力を持たせているので、RPGなどを代表する様に兵士が手持ちで操作できる、すなわち発射反動が少ない携帯用兵器として利用することができ、高初速の戦車砲に劣らない穿孔力を持つ、戦車にとっては恐ろしい兵器である。

 このRPGを代表とする成型炸薬ロケットランチャーの登場により、現代戦車の装甲(防弾思想)は大きく変化したという。つまり、単に装甲を厚くする事で防御するには限界があると云うことで、詳しい内容は公開されていないが複合装甲と云われるものに変化しているという。つまり、防弾鋼板の間に、脆いセラミック層を設けることで、高温高圧のメタルジェットによる侵徹を防御したりする装甲が現代戦車のセオリーとなっている様だ。また、成型炸薬弾は、着弾起爆から、数十センチ先までの装甲に強力な穿孔力を発揮できるが、それを越えると急激に穿孔力は弱まってしまう。そのことを意識して、正規装甲の外側に、数十センチ離して軽度な装甲板を追加したり、パイプで籠状の網を設けて、そこで成型弾を着弾起爆させ、本来の装甲へのダメージを避けるなどの手法が取られている様だ。この様な、RPGなどの軽兵器による攻撃は、野外における戦車戦などより、市街地など歩兵が建物影に隠れることができる環境においてリスクは高まるのだろうと想像する。

参考
 先回記したAPFSDS弾による穿孔断面を写した写真があったので紹介してみたい。この写真を見ると、装甲板はおよそ30度程度はある傾斜装甲に着弾しているのが、ほとんど跳弾など起こさず、侵徹していることが良く判る。


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