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 私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

塗装作業における"ぼかし"とは

2010-05-31 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 毎回、下らない記事ばかり書き連ねていますが、偶には専門家の端くれとして真面目な専門技術のことについて記してみます。
 今回取り上げるテーマは、塗装作業のメタリック色やパール色の塗装作業において、必須のテクニックとなる”ぼかし”と呼ばれる作業を解説してみます。何故、”ぼかし”を解説するかということですが、多くのアジャスターが”ぼかし”という言葉は知っていますが、その実際には無知だと感じているからです。多くのアジャスターに、”ぼかし”は、どの様に作業するのかとたずねると、旧塗膜と新塗膜の間を塗膜の膜厚に傾斜を付けて(つまり薄くから厚く)色差を判らない様にするという様なイメージを持っている者が多いのではないでしょうか。でも、そのイメージは間違いなのです。
 それでは、実際の”ぼかし”という作業はどの様な原理を用いて行われるのでしょうか。旧塗膜と新塗膜はなるべく色差は少ないに超したことはないのであって、もし色差がほぼ無ければ、塗装作業はエアスプレーガンで行われるので、新旧塗膜間に段差などは生じず、なんら”ぼかし”という付加的な作業を行う必要も生じません。しかし、メタリック色やパール色においては、色差をほぼ無い状態に調色するのは、技術的もしくは時間的に困難なのが現実です。そこで、ある程度の色差が生じている新旧塗膜間に、新塗膜を塗り込んだ塗料を”まぶす”という作業が”ぼかし”という作業ということになります。ここで記した”まぶす”ですが、塗布面を密に塗り込むのではなく、例えてみるとふりかけを掛ける様にパラパラとまぶすというイメージなのです。もう少し云い方を変えると、印刷物などで使用されているドットの密度で濃淡を表すスクリーントーンがありますが、この中間濃度のトーンをスプレーテクニックで施すのが”ぼかし”のエッセンスなのです。
 具体的な”ぼかし”のスプレーテクニックですが、スプレーガンの塗料は新塗膜の塗料をそのまま利用します。ただし、状況に応じてもありますが、シンナーを追加して希釈を薄めにします。そして、パターン(広がり)を絞り、ガン圧を低めとし、被塗布部位から相当に離して吹き付ける作業を行うのです。被塗布部位からの離す距離ですが、作業者によれば2mにも及ぶ場合があります。そして、この時のガンの移動速度は極低速で、パラパラと”まぶす”のが作業イメージです。
 ところで、付加知識として、”ぼかし”の作業で”先ぼかし”と”後ぼかし”について記しておきます。一般的には、旧塗膜に対し新塗膜を塗り込み、その間を”後ぼかし”することが多いといえます。しかし、新塗膜を塗り込む前に、予めぼかす部位に”ぼかし”を施すことを”先ぼかし”と呼んでいます。これは、どちらの手法が正解ということはなく、あえて云えば作業者の好みの問題であると私は理解しています。
 さて、ここまで記してきて、アジャスターの諸君であれば、「どの程度の範囲があればぼかせるの」という様な疑問が生じるのだと思います。もし、そんなこと思いもしないという者は、仕事変わった方が良いのかもしれません。つまり、見積という行為において作業想定するからには、ここでぼかせる、ぼかせないは、隣接パネルの塗装も含めた実塗装面積の想定に関わることになるからです。でも、塗装指数ではメタリック以上はぼかし範囲は指数に織り込み済みで把握する必要もないなどと言い張る者がいたとしたら、それも資料偏重アジャスターで困ったものだと思います。指数の使い方を覚えるのも大事ですが、もっと大事なのは現実を把握することだと思います。話を戻しますが、”ぼかし”はどの程度の範囲で行えるかですが、被塗布部位の形状や技術者の技量の問題もあり、一概には断定できない問題ではあります。この問題は、私は立会の機会毎に多くの現場の塗装技術者にたずねて来ました。その結論は、10cmあればぼかして見せると豪語する技術者もいますが、特にプレスラインなどの外面形状の変化のない部位(ドア平面部など)で、30cmあればほとんどの技術者がカバーできるのではないかというものです。


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