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RON値の内外格差

2023-02-09 | コラム
RON値の内外格差
 RON値と聞いてピンと来る貴方は、相当のクルマ好きかつ自動車工学の知識もあると思えます。
 RONとはガソリン燃料のアンチノック性を示す測定法の一つで「Research Octane Number」の略称だ。RON以外にMON(Motor Octane Number)という別の計測法もありますが、今回は割愛する。

 ところで、日本のレギュラーガソリンのRON値は91が標準だが、欧州では95標準と云う違いがある。ハイオクもしくはスーパーと称する高尾オクタン化ガソリンは、日本も欧州も100が標準だ。なお、現在は航空機だとかガソリンで大口径ボアのエンジンは熱効率が悪すぎるので、作られなくなったが、ジェットエンジン以前の航空機用ガソリンエンジン二重星形14気筒18Lとか30Lエンジンなどは、大径ボア故に、圧縮比を7程度まで下げても、高負荷もしくは加給時にノッキング、デトネーション、プレイグニッションという異常燃焼から逃れることが困難であってRONで云えば120という様なウルトラスーパーなガソリンがあったと云う。それでも、圧縮比が低くしかも高速回転できない、これすなわち火炎伝播速度から来る燃焼限界から、L当り出力は50ps程度が当たり前だったそうだ。

 さて、欧州でも、レギュラーとハイオク(もしくはスーパー)はそれなりに価格が違うので、特別の高性能を訴求したエンジンでない限りレギュラーガス仕様としてエンジン設計を行う訳だが、そもそもRON値が異なれば、基本圧縮比の限界とか点火進角特性の差が生じて来てしまう。現代車では、ノックセンサー付きだから、日本でも欧州仕様で設計し、それなりにノックセンサーで遅角させれば済むという考え方もできるが、ノックセンサーでの遅角もO2センサーでのリッチ&リーンのフィードバック制御と同じく、一度の補正でドンピシャの点火時期に補正できる訳ではない。従って、その制御アルゴリズムにもよるが、ノックセンサ-付き車でも、加速初期にノッキングでたり、そもそも体感上のフィーリングが悪化したりと云うことが感じ取れてしまう。

 それと、このレギュラーガソリンRONの内外格差で問題になるのは、おおよその欧州車で、本来欧州ではレギュラー(RON95)で設計したほとんどのエンジンが、日本ではハイオク指定になってしまうことなのだ。

 実際のところ、BMWミニでレギュラーを入れて短時間走行したことがあるが、ボッシュ製造のエンジンECUの点火遅角制御アルゴリズムのお粗末さもあるが、驚くべきノッキングと云うより、一気に大きく遅角が繰り返されるのだろうと想像できるが、とんでもない息付き感が出て、到底マトモに加速できる状態ではなくなる。これが、日本車でハイオク仕様車にレギュラーを入れた場合だと、軽度な加速で微かにカリカリとノッキング音が出るのと、ハイオクに比べ力感が落ちたことが感じ取れる程度で、走行に大きな障害が出るなんてことはない。

 ところで、ちょっと以前(1年前程だったか)、ハイオクガソリンはメーカー別のブランドで売ってはいるが、本当は同一精製工場で作っているという、出所は一緒という問題が報じられたことがあったが、さほど問題視なされなかったのか、そのまま立ち消えになってしまった。

 しかし、ハイオクはともかくとして、レギュラーのRON内外格差を欧州と日本で共通の95にすることは技術的にできない訳はないと覆うところだ。さすれば、RON95に合わせたエンジン仕様車を作れば、燃費アップできるしCO2問題でも貢献できる問題だと思うのだが、何か別の要因があるのだろうか?

 もし、この当りの本当の理由を説明できる方がいるなら、是非教えて欲しいと思う。


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