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官僚達の夏が遠い世界となる現世官僚達の獣道

2023-03-22 | コラム
官僚達の夏が遠い世界となる現世官僚達の獣道
 「官僚達の夏」は好きな故城山三郎氏の小説で、その読後感の良さが記憶に残るのだが、現在官僚達にあの様な情熱があるのだろうか?
 故城山氏も晩年頃は官僚の堕落ぶりに言葉は少なかったものの、きっと大きな失望を感じていたに違いないと思える。そういう中、今朝見た現代ビジネスに、極短命に崩壊した鳩山政権の裏事情のことが記されていたので、記録的意味で書き留めておきたい。

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鳩山元首相が絶句…自分を「裏切った」腹心の官僚が、じつは忠誠を誓っていた「ヤバすぎる相手」
現代ビジネス 3/22(水) 7:02配信
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日本には、国民はもちろん、首相や官僚でさえもよくわかっていない「ウラの掟」が存在し、社会全体の構造を歪めている。そうした「ウラの掟」のほとんどは、アメリカ政府そのものと日本とのあいだではなく、じつは米軍と日本のエリート官僚とのあいだで直接結ばれた、占領期以来の軍事上の密約を起源としている。最高裁・検察・外務省の「裏マニュアル」を参照しながら、日米合同委員会の実態に迫り、日本の権力構造を徹底解明する。
*本記事は矢部 宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)から抜粋・再編集したものです。
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きっかけは鳩山政権の崩壊
 もともと私が沖縄の米軍基地問題を調べ始めたのは、二〇一〇年六月に起きた民主党・鳩山政権の崩壊がきっかけでした。
 その前年の八月末の総選挙で、三〇八議席という史上最多議席を獲得し、戦後初の「本格的政権交代」を成しとげた鳩山首相は、しかし普天間基地の「移設」問題によってつまずき、わずか九ヵ月で退陣に追い込まれてしまいました。
 誰が見ても危険な人口密集地の外国軍基地(普天間基地)を、「県外または国外」へ移そうとしたところ、官僚や検察、大手マスコミから激しいバッシングを受けて、あっけなく政権が崩壊してしまったわけです。
 不思議に思った私は写真家と二人で沖縄へわたり、本島内のすべての米軍基地の写真を撮影して、ガイドブックをつくりました。それがスタート地点となって、いま本書で書いているようなことを取材・研究し始めたのです。

秘密会合の翌日の裏切り
 私はその後、鳩山元首相と何度か対談して、その間の経緯をあらためて伺う機会があったのですが、鳩山政権が崩壊に向かった最大のターニング・ポイントは、二〇一〇年の四月六日だったと言えます。
 その直前まで予算編成の問題で身動きがとれなかった鳩山首相は、四月になって、ようやく懸案の普天間基地の「移設」問題にとりかかろうとした。「五月までに結論を出す」というアメリカ側との約束があったからです。
 そのため四月六日、外務省、防衛省から幹部を二人ずつ首相官邸に呼んで秘密の会合をもった。そして以前から温めていた「徳之島移設案」という最後のカードを示して、協力を求めたのです。
 「みんなに官邸に来てもらって、そこでお酒も出したんですよ。二合ほど呑んだと思います。ずいぶんと前向きになってくれて、「やりましょう!」というとてもいい雰囲気になった。そこでいちばん大事なことは、このメンバーが互いに情報を交換しながら、それを外部に漏らさないことだ。漏れた瞬間、この話は潰されてしまう恐れがあるから、それだけは気をつけてくれといいました。「はい、わかりました」ということで、みんな上機嫌になって別れたわけです。ああ、この連中はやってくれるんじゃないか、期待できるなという気持ちになりました」(鳩山氏の発言「第80回UIチャンネル」二〇一四年一二月八日)
 ところがその翌日(四月七日)、朝日新聞の夕刊一面に、その秘密会合の内容がそのままリークされたのです。
 「これはショックでした。自分が実現したい政策を、いちばんの腹心だと思っている人たちに伝えたら、すぐに裏切られたという話ですからね。もうこの交渉は彼らには頼れないと感じました。メンバーのなかに、明らかにこの案を潰そうと思っている人間がいる。そのことがわかったので、精神的なダメージは非常に大きかったですね」(同前)
 これは考えてみると、非常に不思議な出来事だったわけです。いくら彼ら超エリート官僚たちといえども、最高権力者である日本国首相に逆らうのは、非常にリスクが大きい行動のはずだからです。
 にもかかわらず、翌日の夕刊一面でのリークという裏切りは、露骨すぎる。面従腹背という言葉がありますが、面従している時間があまりにも短すぎるのです。
 「私たちはあなたの命令には従いませんよ」
 という意思表示をされたとしか、言いようがない出来事でしょう。
 「このとき官僚たちは、選挙で選ばれた首相鳩山ではない、なにかほかのものに忠誠を誓っているのではないかという思いがしました」
 と鳩山氏が振り返るのも、無理はありません。

まさに「ブラックボックス」
 この「事件」についても、日米合同委員会の実態がわかってくるにつれ、背景が徐々に明らかになってきました。
 日米合同委員会の本質とは、占領時代から続く基地の使用権や治外法権など、米軍が持つ巨大な特権を、どうすれば日本の国内法のもとでトラブルなく維持していくかの調整機関です。もともと占領中に旧安保条約の交渉をしている段階で、「日本国民の目にふれさせたくない取り決め」を、すべて密室で処理するためにつくられた「ブラックボックス」なのです。
 ですから日米合同委員会での協議といっても、もちろん最終決定権は米軍側が握っています。これまでに発掘された日米合同委員会の非公開議事録のなかには、米軍側の交渉担当者が、
 「それはすでに米軍の上級司令官〔太平洋軍司令官〕が決定したことなので、日本政府が承認するかどうかという問題ではない」
 などとストレートに発言しているケースもあるのです。
 その他にも、たとえば二〇一二年、第二章でも触れたオスプレイが普天間基地へ配備されることになったとき、当時の野田佳彦首相が、
 「オスプレイの配備については、日本側がどうしろこうしろという話ではない」
 といって国民の怒りを買いましたが、法的な現実としては野田首相の言っていることが正しかった。基本的に米軍側が「オスプレイを配備することになった」という通報を一本出せば、現在の日本政府にはそれを拒否する法的権利はないのです。

官僚たちが忠誠を誓っていたもの
 そうした状況のなかで、日米合同委員会が発足してからすでに六〇年以上になりますが、それなりにぎりぎりの交渉を重ね、基地の移転や一部返還といった困難な問題についても、なんとかすり合わせて合意してきたという歴史がある。
 日米合同委員会のメンバーは、たとえば外務省なら北米局長、法務省なら大臣官房長と、最高のエリートコースにいる官僚たちが、そのポストによって選ばれています。ですから彼らにしてみると、自分の上司も、その上司も、そのまた上司も、全員がこの「米軍+官僚」共同体のメンバーなわけです。だから裏切ることなど、絶対にできるはずがありません。
 なかでも法務省から合同委員会のメンバーとなる大臣官房長は、その後、かなりの確率で検事総長に就任しています。そして次の第五章で見るように、日本の最高裁は、「砂川裁判・最高裁判決」というひとつの判決によって、現在、まったく機能していないわけです。
 最高裁が機能していない中で、検事総長を出す権利を握っているわけですから、日本の法的な権力構造のトップには、この日米合同委員会が位置しているということになる。
 そうしたガッチリとシステム化された権力構造のなかで、長い時間をかけて苦労して積み上げてきた合意を、
 「ひょっとしたら数ヵ月で辞めるような首相に、ひっくり返されたくない」
 というのがおそらく彼らの本音だったのでしょう。
 つまり鳩山氏が感じた、日本の高級官僚が忠誠を誓う、
 「首相鳩山ではない、なにか別のもの」とは、この日米合同委員会という、六〇年以上続く「米軍+官僚」の共同体だったというわけです。
 さらに連載記事<なぜアメリカ軍は「日本人」だけ軽視するのか…その「衝撃的な理由」>では、コウモリや遺跡よりも日本人を軽視する在日米軍の実態について、詳しく解説します。矢部 宏治


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