ベイパーロックとは日本語に直訳すれば、蒸気閉塞とでもなりましょうか。何らかの配管中の液体が沸騰気化(ベイパー)すると、本来の圧力が伝わらず、液体の流動も妨げられるという現象です。
主に問題になりがちなのが、ブレーキ系統のベイパーロックです。過酷な急制動の連続等で、ディスクプレートが赤熱する程となると、フェード現象と呼ばれるディスクパットの摩擦係数が低下し、制動力が低下していまう現象が知られています。このフェード現象と共に、そのディスクパット部の熱がキャリパー・シリンダーのピストンに伝わりベイパーロックを起こす可能性が指摘されています。このため、ディスクパットと同ピストンとの接触面積はなるべく小さくし熱伝導を少なくする様に設計されています。
ブレーキ系統のベイパーロックの生じ難さは、ブレーキフルード(液)の沸点に依存します。ブレーキフルードは、その名称からもオイルでなく、フルードと呼ばれますが、その成分はエチレングリコール(アルコール基)が使用されることが多いのですが、グレードとしてDOT3~DOT5等の規格があります。沸点としてはDOT3で205°C以上、DOT5で260°C以上と、グレードが上がる程、高沸点に設計されています。
なお、ブレーキフルードには吸湿性があり、期間を経る程に吸湿し、沸点が下がる傾向があるそうです。従って、車検毎位には、特にブレーキ系統に不具合はなくとも、フルード交換をすることが推奨されるのです。
次に問題となるのが、燃料のベイパーロックであり、エンジンルーム内のキャブレターへの燃料配管が加熱され、ベイパーロックを生じる場合があることが知られています。また、キャブレーター本体が加熱されることにより、内部の細管でペイパーロックを生じて、高温時にエンジン不調になるというトラブルもあり得ます。
また、電子制御燃料噴射(EFI)車では、燃圧が2~3kg/mm2と比較的高く、エンジン停止時にもプレッシャーレギュレターで燃圧が保たれますから、通常ベイパーロックを生じることは少ないものです。しかし、プレッシャーレギュレター内の弁の密着不良等の不具合があり、エンジン停止時に燃圧が下がってしまうと、夏場等の高温時に更に高温化したエンジンルーム内の熱気で、配管中にベイパーロックを生じる場合があります。この様な場合は、再始動の際に、なかなか燃圧が上がらずに、始動困難とかクランキング時間が異常に長く要するという現象となります。