非差別関係の訴訟、地裁判決について(追記)
下記に毎日新聞報道を転載すると共に、追記したい。
判決は住所を公開したなどとしてプライバシー侵害だと認容し、慰謝料などの名目で総額490万円の賠償を認容している。ただし、原告は総員220名で平均2万円(最小5,500円~最大45,000円で、未認定の原告も居る様だ)
この一人当りについての賠償金が比較的低額となったことについて、被告側の宮部氏は、Yoyube動画内で、これをもし10万以上の認定をしたとすれば、新たな利権と意識され、訴訟の連発を招くことを裁判所は意識した可能性があると想像できると述べている。
なお、被告側がYoutubeなどで公開している各探訪のルポ動画については、特段削除だとか公開禁止までの裁定とはなっていない様だ。これは考えてみれば、GoogleMAPストリートビューで見れる内容と基本は変わらないから、これを差し止めにすることはできかねたと云うのは、同宮部氏の言だ。
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地名、ネット差し止め命令 「プライバシー侵害」 東京地裁
2021/9/27 毎日新聞
地区の地名リストをインターネットに掲載され、プライバシー権が侵害されたなどとして、解放同盟と地区出身者ら234人が川崎市の出版社「示現舎」側に地名リストの掲載差し止めなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁は27日、一部の掲載差し止めを命じた。成田晋司裁判長は「リストの公表により結婚や就職で差別を受ける恐れがある」と述べ、大半の原告のプライバシー侵害を認めた。同社代表には計約490万円の賠償を命じた。
判決によると、同社は2016年2月、地名リストを掲載した書籍を出版すると告知。この頃、ウェブサイトで地名リストの他に、解放同盟の幹部らの名前や住所などのリストを公開した。東京法務局が同年3月に掲載をやめるよう求めたが、同社代表は地名リストを新たにネットに掲載し、幹部リストを約2週間削除しなかった。
判決は「歴史的経緯に照らせば、住所や本籍が地区内にあることを知られれば、差別や中傷を受ける恐れがある」と指摘。地名リストが公表されると、地区出身者かどうかを調べることが容易になるとした。その上で「結婚や就職で差別を受け、事後に回復を図ることは不可能か著しく困難になる」とし、出版とネット掲載を禁じることが必要と判断した。被告側は「出版、掲載の差し止めは学問の自由の侵害」と主張したが、「公益を図る目的がない」などと退けた。
賠償額は1人当たり4万4000~5500円とした。一方、住所や本籍が地区内にあることを公表している一部原告のプライバシー侵害は認めなかった。このため、ネットに掲載された41都府県の地名リストのうち、16県分は差し止めの対象外となった。原告側は控訴する方針。
解放同盟は、訴訟とは別に出版やネット掲載の差し止めを求める仮処分を申し立て、裁判所が16年3~4月にいずれも認めたことから、同社側は既に対象の地名リストを削除している。同社の代表は判決後、動画配信サイトで「一部でも非公開とされるのは敗訴で、控訴する」と話した。【遠山和宏】
「煮え切らない」との声も
地区の地名リストのインターネット掲載により「差別が助長される」と訴えてきた原告側は、大筋で勝訴とした東京地裁判決に一定の評価をした。ただ、掲載差し止めが一部で認められず、「煮え切らない」と複雑な表情も見せた。
判決言い渡し後、弁護団は地裁前で「勝訴」と書かれた紙を掲げ、支援者ら約100人に判決内容を説明した。一部で掲載差し止めが認められていないことが伝えられると、「なんで」と不満の声が上がった。
書籍の出版差し止めを巡る訴訟は判例により、プライバシー権や名誉権の侵害の有無が判断基準となる。原告には、自ら個人情報を明かして活動する解放同盟の幹部らもいた。プライバシー侵害が認められない懸念は当初からあり、原告側は「差別されない権利」という新たな考えを訴えに盛り込んだが、判決は「内容が不明確」と退けた。
判決後に記者会見した弁護団の指宿昭一弁護士は「判決は地区に住所や本籍があることはプライバシー情報に当たると踏み込んだ」と評価した。一方、差し止め対象かどうかが県によって分かれたことに、河村健夫弁護士は「まか不思議な判決だ」と批判した。
問題に詳しい福岡県立大の森山沾一(せんいち)名誉教授は「地名リストがネットで入手できれば、同和問題に関心が薄い若い世代にまで新たな差別意識が広がる可能性もある。差別されない権利が認められず不十分だ」と指摘した。【遠藤浩二、遠山和宏】
下記に毎日新聞報道を転載すると共に、追記したい。
判決は住所を公開したなどとしてプライバシー侵害だと認容し、慰謝料などの名目で総額490万円の賠償を認容している。ただし、原告は総員220名で平均2万円(最小5,500円~最大45,000円で、未認定の原告も居る様だ)
この一人当りについての賠償金が比較的低額となったことについて、被告側の宮部氏は、Yoyube動画内で、これをもし10万以上の認定をしたとすれば、新たな利権と意識され、訴訟の連発を招くことを裁判所は意識した可能性があると想像できると述べている。
なお、被告側がYoutubeなどで公開している各探訪のルポ動画については、特段削除だとか公開禁止までの裁定とはなっていない様だ。これは考えてみれば、GoogleMAPストリートビューで見れる内容と基本は変わらないから、これを差し止めにすることはできかねたと云うのは、同宮部氏の言だ。
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地名、ネット差し止め命令 「プライバシー侵害」 東京地裁
2021/9/27 毎日新聞
地区の地名リストをインターネットに掲載され、プライバシー権が侵害されたなどとして、解放同盟と地区出身者ら234人が川崎市の出版社「示現舎」側に地名リストの掲載差し止めなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁は27日、一部の掲載差し止めを命じた。成田晋司裁判長は「リストの公表により結婚や就職で差別を受ける恐れがある」と述べ、大半の原告のプライバシー侵害を認めた。同社代表には計約490万円の賠償を命じた。
判決によると、同社は2016年2月、地名リストを掲載した書籍を出版すると告知。この頃、ウェブサイトで地名リストの他に、解放同盟の幹部らの名前や住所などのリストを公開した。東京法務局が同年3月に掲載をやめるよう求めたが、同社代表は地名リストを新たにネットに掲載し、幹部リストを約2週間削除しなかった。
判決は「歴史的経緯に照らせば、住所や本籍が地区内にあることを知られれば、差別や中傷を受ける恐れがある」と指摘。地名リストが公表されると、地区出身者かどうかを調べることが容易になるとした。その上で「結婚や就職で差別を受け、事後に回復を図ることは不可能か著しく困難になる」とし、出版とネット掲載を禁じることが必要と判断した。被告側は「出版、掲載の差し止めは学問の自由の侵害」と主張したが、「公益を図る目的がない」などと退けた。
賠償額は1人当たり4万4000~5500円とした。一方、住所や本籍が地区内にあることを公表している一部原告のプライバシー侵害は認めなかった。このため、ネットに掲載された41都府県の地名リストのうち、16県分は差し止めの対象外となった。原告側は控訴する方針。
解放同盟は、訴訟とは別に出版やネット掲載の差し止めを求める仮処分を申し立て、裁判所が16年3~4月にいずれも認めたことから、同社側は既に対象の地名リストを削除している。同社の代表は判決後、動画配信サイトで「一部でも非公開とされるのは敗訴で、控訴する」と話した。【遠山和宏】
「煮え切らない」との声も
地区の地名リストのインターネット掲載により「差別が助長される」と訴えてきた原告側は、大筋で勝訴とした東京地裁判決に一定の評価をした。ただ、掲載差し止めが一部で認められず、「煮え切らない」と複雑な表情も見せた。
判決言い渡し後、弁護団は地裁前で「勝訴」と書かれた紙を掲げ、支援者ら約100人に判決内容を説明した。一部で掲載差し止めが認められていないことが伝えられると、「なんで」と不満の声が上がった。
書籍の出版差し止めを巡る訴訟は判例により、プライバシー権や名誉権の侵害の有無が判断基準となる。原告には、自ら個人情報を明かして活動する解放同盟の幹部らもいた。プライバシー侵害が認められない懸念は当初からあり、原告側は「差別されない権利」という新たな考えを訴えに盛り込んだが、判決は「内容が不明確」と退けた。
判決後に記者会見した弁護団の指宿昭一弁護士は「判決は地区に住所や本籍があることはプライバシー情報に当たると踏み込んだ」と評価した。一方、差し止め対象かどうかが県によって分かれたことに、河村健夫弁護士は「まか不思議な判決だ」と批判した。
問題に詳しい福岡県立大の森山沾一(せんいち)名誉教授は「地名リストがネットで入手できれば、同和問題に関心が薄い若い世代にまで新たな差別意識が広がる可能性もある。差別されない権利が認められず不十分だ」と指摘した。【遠藤浩二、遠山和宏】