私の思いと技術的覚え書き

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ジャトコはただ受動的に身売りされるだけなのか?

2020-09-11 | コラム
 ジャトコ(JATCO)は日産が株式の75%を保有する残された数少ない大手子会社の一つだ。元々、日産自動車・吉原製作所(富士市)が出発の母体となっており、エンジンとかトランスミションなどの機械系部品を製造していた。それが、当初はフォード(既撤退)、日産、マツダ(既撤退)、三菱、スズキなどの資本参加で、オートマチックトランスミション専業メーカーとして現在に至っている。

 日産本体の業績不振が顕著な近年、母体のクルマがあってのトランスミションメーカーだけに、やはり業績は低迷している様だ。日産は、カルロスゴーン時代に、なりふり構わず子会社を切り離してきた。一番最近では、100%子会社であった、カルソニックカンセイを2016年末に売却してしまったのには驚いたものだ。こりゃ、その内ジャトコも売却する方向になるだろうと想像はしていたが、どうやらその方向らしい。現在の報では、日本電産というモーター製造企業へ売却が有力候補ということらしい。

 しかし、カルソニックにしても、今回のジャトコにしても、車両の基幹部品サプライヤーの子会社を切り離し支配権を失うことが、どれほど車両メーカーに与えるポテンシャルを低下させるかは明かだろう。今後の新型車開発などにおいて、ますますポテンシャルは弱まる方向を加速させるのは判っちゃいても、当座の本体救命のためには致し方ないということだろう。

 現時点で、何故、日本電産がジャトコ吸収にメリットを見出しているのか判然としない。何れにしても、ジャトコ本体の意向というより、日産側の都合だけで話しが進んでいるようにも想像されてしまう。しかし、場合によっては、カルソニックカンセイと同様、ファンド系企業に売却され、自助努力して生き残りを模索せざるを得なくなる可能性だってある訳だろう。しかし、その場合は、現在の商品構成だとか開発力では、極めて困難となる様にも感じられる。

 そもそも、ジャトコは乗用車用のFRATおよびFFATしか製造しておらず、優位点はCVTにやや強みを持っている程度の企業にしか見えない。しかも、軽自動車用のCVTはスバルに委託生産して販売だけを行っているというものだ。つまり、トラックなど、中大型系のオートマチックには未対応だし、DSG系のアイテムも持っていない。こういう云い方は同社の経営人には酷だろうが、ただただ日産の傘下に安住し、何ら新商品、新分野、新規売り込み先などの開拓への思考が欠落していた企業の末路の典型例の様に感じる。

 今やATはアイシンAWが世界No1なのだが、本体のアイシン精機を含め、アイシングループ全体で、その再構成を図るという報も聞いている。だいたい、トヨタ系の超大手サプライヤーは、デンソー、アイシン、ジェイテクトなどがあるが、その包含する領域はオーバーラップしつつ、かなり熾烈な競争が行われていることを感じる。それに比べると、ジャトコは、誠に甘い経営を続けて来た結果にしか見えない。

 今回の日本電産が吸収するという理由だが、想像を広げると、日本電産としては、ジャトコのATにモーターを組み合わせたHVなどの方向を見ている可能性もあるのかもしれないが、それより、ギヤの生産設備や能力、そして大物ダイキャストの生産設備と能力にメリットを見出しているのかもしれない。

 ここで、日産から過酷な株式売却をなされたカルソニックカンセイが、独自にワールドワイドな生き残りを掛け、マレリグループの旗艦企業として日産に依存しない道を選んだことを思う。同じ指向で考えると、独ZFに例え吸収される形を取ったとしても、アイシンに打ち勝ち、日本ならではの生産効率の強みを持って生き残りを掛けるぐらいの思考がないのかという思いだ。

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