私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

排気ガス規制と浄化システムについて

2018-01-03 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 モーターリゼーションたるクルマの普及と共に、その排出ガスが及ぼす公害に対する規制が各国において規制を高める動きを高めてきた。そのトップが米国のマスキー法(1970年)だったろう。既に北米への輸出が一定立ち上がっていた日本も、その対応に苦慮していた。そこでホンダが層状燃焼システム(CVCC)を採用し、エンジン本体のみの後処理装置なしで規制をクリアーした。引き続き、日本でも50年、51年、53年度順次排気ガスの規制値を高めていくことが決められ、各車両メーカーは対応に苦慮していく。こんな中、各メーカー共、最悪の場合の保険として、ホンダのCVCCの特許許諾を得て、同機構を組み込んだエンジンの作成を行ったが、結果としては、この保険を使うことはほとんどなかった。

 この日本の50~53年度規制の眺めてきた者として思うのだが、50および51年規制は、酸化触媒でのCO、HCの酸化浄化とNoxはエンジン本体でなるべく生じない様に、圧縮比の低減、点火タイミングリタードが行われた。そして、キャブレター使用の吸気系だが、各種アナログ制御にバキュームユニット(VCV、VTV等)を驚くほど多数しバキューム配管のオバケと化したエンジンであった。なお、このバキューム圧でEGRバルブを開閉し加速時などのNoxを低減している。何れにしても、エンジン出力、トルク、燃費など、諸性能は大幅に低下した。

 そして真打ちたる53年(1978年)規制適合車が三元触媒と共に生まれたのだ。この三元触媒は、CO、HCを酸化し、Noxを還元できることから、その様に呼ばれる。ただし、三元触媒を有効に機能させるためには、燃焼空燃費(A/F)を理論空燃費14.7:1にコントロールする必要がある。そこで登場したのが、触媒前の排気ガスの残存酸素量を検出し、対応して燃料噴射量を増減させるフィードバック制御だっだ。(下記リンク参照 トヨタ M-EU 1977年)

日本の自動車技術240選 三元触媒システム

 この時代のガソリン燃料噴射はジェトロニックと呼ばれるボッシュ社のライセンス許諾で作られたもので、Lジェトロという吸入空気量と回転数を検出するタイプ、Dジェトロと呼ばれる吸気管負圧と回転数から噴射量を決めるタイプが日本車には使われて来た。その他にKジェトロという機械式連続噴射タイプがあったが、日本車に使用されることは少なかった。先の三元触媒に使用された燃料噴射機構は、Lジェトロタイプである。というのも、この当時の電子制御燃料噴射は、現在の様なデジタル制御により、各種演算を行ったり予めの制御マップを持ち、非線形の噴射特性を持たせることなど不可能な代物なのだった。その概論を示すと、一定容量のコンデンサーの充放電時間を各種センサーの抵抗値から変化させ、噴射時間を決定するという様なものだ。そのため、現在の自然吸気エンジンなら、エアマスを省略したDジェトロでも、十分なドライバビリティと排ガス性能が発揮できるが、この当時としては比較的に過渡特性も含め正しい基本噴射量特性が得られるLジェトロの採用となった。

 なお、現在車もそうであるが、O2センサーによるフィードバック制御は、エンジンのすべての運転域で行っている訳ではない。排気ガスの検査モードを大きく離れた、高速高負荷など、最大の馬力(トルク)が欲しい局面では、12.0-12.5:1程度の出力空燃費が基本空燃費となる。また、以前のターボ付き車など、出力空燃費以上に濃い燃料を噴射している場合がある。これは燃料の気化潜熱による燃焼室内の冷却という、当時の必要悪であったろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。