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スバル車今年7月のリコールに関わる樹脂部品の選定に関わるミス

2022-10-04 | 技術系情報
スバル車今年7月のリコールに関わる樹脂部品の選定に関わるミス
 日経クロステックというメディアの無料登録しているので、随時車両関係の問題の主題の概要が掴める。このメディアも、どちらかと云えばエンドユーザーというより業界内部者を対象に記載されている様で、記事全文を見るには、有料会員契約(いわゆるサブスク)しなければ見れないが、私にはさほどの価値を見いだせず、無料部分だけのダイジェストを見ての情報の端緒としているところだ。実際のところ、この日経記事から深掘りするのは希なことだ。

 さて、今回の記事だがスバルで7/24付けでリコール公示した現行生産車5車種の電動パーキングブレーキに関わるリコールだが、該当電動パーキングアクチュエーターに結合するワイヤリング端末コネクタの樹脂の割損が早期に発生することで、コネクタ抜けが生じ、該当電動パーキングの動作が不確実になると云う内容の様だ。

 想像だが、このアクチュエーターの電気的結合は、常時ショートorオープンをモニターしており、不良の場合はDTC検出で計器板に異常を知らせるのだろうが、電気的結合を修正しない限り異常は復帰することはできない。

 該当のリコール内容については、国交省リコールページより転載するが、日経の記事と合わせて読み込むと、どうやらコネクタの樹脂材質が、融雪剤(塩化ナトリウムだろう)による劣化を生じ割損してコネクタ抜けが生じるのだが、日経の解説ではケミカルクラックという薬液(溶剤もしくは今回の融雪剤と応力の二要素で破壊が起きる現象を呼んでいる様だ。金属だと、応力と腐食の二要素が関与する応力腐食割れという現象が、原子力など重要部位に起こることがものの本に記されている。何れにしても金属も樹脂も、腐食だとか寒暖だとか応力の大小の繰り返しによる疲労という問題もあるし、外面だと紫外線による分子結合の劣化とか原子力では中性子線による劣化が起こる。この内、紫外線による劣化は白亜化とかチョーキングとも呼ばれ、塗膜表面がザラザラの粉状に離脱したり白っぽくツヤのない状態になる事案は日常的に知られている。



 これも想像だが、コネクタ樹脂の劣化によりコネクタが抜け出すと云うことは、おそらくロッキング用ツメ部分が割損することで、抜け出すのだろう。なお、日経の解説では、コネクタ樹脂材質はPA(ポリアミド)だろうとしているが、このPA樹脂はさまざまな電装部品のコネクタだけでなく樹脂ボデーなどにも使用されている。樹脂部品は、よほど小さな部品でも、PAなどの材質表示の刻印がなされているが、PAに続いてGF30とかGF20などの刻印がある場合が多い。これは、一種の複合材でGFはグラスファイバーでその割合%?を示している様だ。

 なお、リコール対策の内容がふるっている。新たにコネクタを押さえる付加クリップを追加して、コネクタロック部が割損しても抜け出さない様にすると云うものだ。これも、もっともなことで、PA樹脂に問題があり、新たにPBT樹脂コネクタに変更するとすれば、ヒューズブロックから後部のシャシハーネス一式を変更もしくはリコール対策で効果になければならず、その部品費および工数が相当に増加するのを食い止めたと云うことだろう。

 日経の記事では、最初からこのクリップを付ければ良かった様なことが記してあるが、割れるのを知る前提で1円でも減価を圧縮しようとするメーカーが、そんな別部品のクリップを付ける訳がないのは当然だろう。これを記した記者は、相当にアホか知識のないボンクラだということが読み取れる。

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材料選定ミスで「スバル」が大量リコール、特性のばらつき評価に甘さか
近岡 裕 日経クロステック 2022.10.04
 1つの安価な部品にSUBARUが足をすくわれた。同社が2022年7月21日に国土交通省に届け出たリコール。その台数は、国内だけで24万7383台に及ぶ。同じ部品を搭載した海外向け車種は約24万9000台。これらを含めるとリコールは世界で50万台規模にまで膨らんだ可能性がある。

➀リコール対象となったSUBARU車
 リコール対象はレヴォーグとインプレッサ、XV、WRX、レガシィの5車種。リコール規模は国内だけで年間生産台数の約1/3に達する。なお、SUBARUによれば、このリコールによる事故の発生はない。リコール費用については「必要十分な金額を引き当て計上しているため、業績に与える影響はない」(同社)という。

 SUBARUは海外向け車種のリコール台数は開示せず、「各国の法規に基づいてリコールの可能性を検証し、全てがリコールとなったわけではない」(同社)と説明する。だが、同社の2021年(1~12月)の生産台数は74万5000台程度だから、国内分のリコールだけで年間生産台数の約1/3に相当する。これに海外分が加わるため、SUBARUにとっては大きな規模のリコールだ。

 リコール対象は、「レヴォーグ」「インプレッサ」「XV」「WRX」「レガシィ」の5車種(図1)。品質不具合が見つかったのは電動パーキングブレーキである。同ブレーキで使用したハーネスコネクター(以下、コネクター)に欠陥があった(図2)。これにより、電動パーキングブレーキが作動しない、もしくは解除できなくなる恐れがある。

②リコールの原因となった樹脂製コネクター
 電動パーキングブレーキで使っていたもの。融雪剤の影響を受けて割れ、抜けることで、同ブレーキが作動しなかったり、解除できなくなったりする品質不具合が発覚した。改善措置としてSUBARUは樹脂製抜け止めクリップを装着し、コネクターが外れるのを防ぐ。この措置について、開発設計の専門家は「安全サイドに振っているため、改善の方向性としては正しい。だが、本来なら最初からこのクリップを付けておくべきだった。フェールセーフの観点では甘かったといえる」と評価する。(出所:国交省の資料とSUBARUの写真を基に日経クロステックが作成)

 結論を先に言えば、SUBARUがつまずいたのは「材料選定」だ。

コネクターに多用される樹脂は3種類
 SUBARUは部品メーカーも具体的な材料名も明かさない。開示したのは、コネクターが樹脂製であり、融雪剤などの影響を受けて割れて、車両の振動などでコネクターが抜けるという情報のみだ。

 樹脂の専門家によれば、コネクターに多く使われる樹脂は3つある。エンジニアリングプラスチック(以下、エンプラ)であるポリアミド(PA)とポリブチレンテレフタレート(PBT)、スーパーエンプラの液晶ポリマー(LCP)である。これらのうち、融雪剤の影響を受けて割れるという条件を満たすのは「PAと考えるのが妥当だ」(同専門家)。

 専門家の知見を総合すると、品質不具合を引き起こしたコネクターは、ガラス繊維を入れて強化したPAの射出成形品と想定できる。そして、品質不具合の原因として考えられるのは「ケミカルクラック」の発生だ。

 ケミカルクラック*は、薬液と応力が共に作用することで樹脂に発生するクラック(亀裂)のことである。薬液だけ、もしくは応力だけでは発生しない。あくまでも両方が作用する環境下で発生する現象だ。件(くだん)のPA製コネクターでは、薬液として融雪剤が、応力としては射出成形時の残留応力やコネクターの取り付け(締結)による負荷応力が作用したと考えられる。

* 化学的クラックやソルベントクラック(溶剤亀裂)、環境応力亀裂(Environmental Stress Crack:ESC)などと呼ばれることもある。


#スバル電動パーキングのワイヤリングコネクタ破損に関わるリコール


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