私の思いと技術的覚え書き

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バス火災事故を思う

2011-08-10 | 事故と事件
 数日前にも東名高速・浜松付近で大型バスの車両火災事故が生じたことが報じられています。大型観光バスの車両火災事故は、過去から度々報じられています。一時は、ドイツ製のネオプラン社製(ドイツのバスメーカーでエンジンはDB社製)の火災が続き、問題視されたことも記憶にあります。
 車両火災はバスに限らず時々あるもので、乗用車でも貨物トラックでも生じています。圧倒的に車両数が多い乗用車の車両火災原因が、一番が駐車中の放火などによるものであり、走行中の火災は案外少ないのですが、それに比べると高速道路走行中のバスの火災事故が多いのは何故なのだろうか、ちょっと不思議に思えます。過去の大型バスに関わる車両火災事故については、それぞれ原因調査が行われ、一定の結論が出されているのでしょうが、ここでは私見としての要因を記してみます。

①多走行、長期間の使用
 高速道路を主体に運行する大型バスの運行距離というのは、一般的な乗用車と比べ桁違いな多走行が行こなわれています。現在のオドメーターは6桁(99,999km)が一般的でしょうが、一回りする100万キロ以上の車両も珍しくはありません。
 また、大型観光バスというのは、その装備にもよりますが、同程度の大きさの貨物トラックと比べても非常に高価です。輸入車の2階建てデラックスバスになると1億円を越す車両価格となると聞きます。このことは、車両コストを償却するための使用期間が延びる要因ともなります。長いものでは、優に20年を越えることでしょう。
 しかし、貨物車も大型バスも、毎年の車検整備が行われる訳ですし、走行距離や使用期間が多いからだけで、車両火災が多いと云うことにはならないのでしょう。

②長大RR車であること
 乗用車では、唯一例外のポルシェ911シリーズを除き、ほぼ陶太されてしまったRR(リヤエンジン・リヤドライブ)方式ですが、大型バスでは一般的な方式として採用されています。これは、操縦性が云々でなく、バスという車両形態としてのスペース効率やメインテナンス製などに優れているからと想像されます。
 ところで、大型観光バスの全長は、約12mと車両法の限界基準一杯に作られています。このため、運転者とエンジンとの距離は10m程度離れていることになります。このことは、エンジンルーム部分で、何か発熱に結び付く故障が起こった際、その発見を遅らせる要因となると想像されます。
 例えば、エンジンで駆動されるオルタネーター、油圧ポンプ、エアコンプレッサー、クーラー用コンプレッサーや、各ベルトをガイドするアイドラプーリーなどがあり、これらには軸受けにベアリングが使用されています。これらのベアリングに損耗を生じ、異音と共に過熱したとしても,、その異音を運転者が察知することは困難なことでしょう。

③狭いエンジンルームと断熱材の劣化
 大型観光バスではスペース効率の優先などから、比較的大型のエンジンを後部の小さいスペースに押し込めています。しかも最近はスタイル優先もあるのでしょう、下面を除きラジエーターなどの熱交換器部分以外は密閉されています。そのため、特に問題になると想像されるのは、エンジンルームと客室を仕切る垂直(エンジン前部)および水平面(エンジン上部)の断熱材の劣化がありはしないかと云うことです。
 自動車の車検整備というのは、航空機や鉄道の該当する整備と比べれば、非常に簡素なものといえるでしょう。例えば、航空機の該当整備では、エンジンは取り外し、別部門で徹底的に分解され各部品を徹底的に検査され、基準を超えた損耗や劣化があるものは交換されます。機体も、内装部品をが全て取り外され、機体外板および内板の金属の亀裂やリベットの緩みなどの劣化が生じていないかを徹底的に検査されます。
 大型観光バスでは、大人数が乗るといえども、貨物車と特に変わらず、エンジンを外すこともありませんし、内装材を取り外すこともありません。このため、先に述べた様に客室との間にある防音・断熱材の劣化があったとしても、車検整備で発見することは困難でしょう。これらエンジンルームを遮蔽する断熱材や、エンジンルーム内に設置され高温に脆弱なワイヤリングハーネスや樹脂部品などの断熱材が劣化し、それでなくとも高温となりがちなRR方式のエンジンルームという要因がありはしないかとも想像されます。

追記
 10年弱前だったと思いますが、日野の大型トラクタ(牽引車)で後輪付近から出火するという事故がありました。比較的新しい車両においてのことです。当時、キャリアカーを牽引し、搭載した新車と一緒に燃え上がる画像を記憶しています。
 この原因は,後輪ドラムブレーキの引きずりによりドラムの過熱、そしてホイールの過熱からタイヤから出火するというものでした。この事故は、リコールとなりました。設計、製造上の問題が内在された火災事故だったと云うことです。



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