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トラックフレームの思想と修理 その1

2021-08-09 | 車両修理関連
トラックフレームの思想と修理 その1
 トラックには一般的な乗用車と異なりフレーム(日本語としては車枠)が採用されている。このトラック用フレームとしては、フレーム種別で云うところの「ハシゴ型フレーム」というものだ。

 ここで、何故トラックではフレームを使用し、運転台(キャブと呼ぶ)と荷台部分に分かれるのかを考えてみたい。実際、世界各地を走るトラックに類する車両を眺めると判ることだが、カタログに乗っている平荷台(ボデー)よりも、バン型(ウイングボデー含む)とか、ダンプ、コンクリートミキサー、タンクローリーなどなど、これらを特装車と呼ぶが、平ボデーより特装車の合算数が多いのが実態なのだ。

 こういう場合、モノコックはムリでも、例えばハイエースの様にフレーム構造を車体に組み込んだビルトインフレームとして、作れないこともないが、多種の特捜ボデーには対応できないという問題が生じるのである。ちなみに、軽トラは、一部保冷バン車などの特装車もあるが、ほとんどが平ボデー車であり、キャブとフレームは合体されたビルトインフレーム構造となっている。

 ここからはトラック用ハシゴ型フレーム構造の実際について、考えてみたい。このフレームの上面視および側面視の概念を示したのが別紙だが、フレームは縦に前端から後端まで連続するサイドレールがあり。その間を幾つかのクロスメンバーで結合する構造になっている。

 このサイドレールだが、上面視でキャブが乗る前方部分の左右スパンが広がっているが、これはエンジンなどを搭載する都合上からとなる。一方、荷台の部分は、前方よりスパンが狭いが一定の幅で構成される。これは、後輪がダブルタイヤとなる関係と、車幅が車両法の上限値2.5mを満たす上からとなる。

 サイドレールの縦の断面をウェブと呼ぶが、キャブとリヤボデーの間辺りが最も大きいハイトを持たせてある。これは曲げ応力を考えてみれば判ることで、この部位にフレームを上下に曲げようとする応力が最も大きく働くからだ。

 次にクロスメンバーは、トラックの荷台長によりその使用数は変わるが、ほとんどのクロスメンバーは、サイドレールと同じくコの字型のチャンネルと呼ばれる構造だが、一カ所だけ先の最も大きな上下曲げ応力を負担する高いウェブハイトの部分に使用されるクロスメンバーは、俗に「ハット型」と呼ばれる断面を持つクロスメンバーを上下拝み合わせて組付けているのに気が付くだろう。

 また、サイドレールと各クロスメンバーの結合は、今や建築物などでは、相当昔の橋梁などでしか見ることなくなったリベットで結合されている。なお、このリベットの結合は。30年位前までは、サイドレールのフランジ部でなされている場合が多かったが、現在では荷台の乗る部分については、サイドレールのウェブ面とリベット結合する様に変更されており、荷台部分のサイドレールフランジ上面は、リベットの突き出しがないものになっている。この理由は、特装車などでの架装性を良くするというのが目的となる。

 ここで、何故トラック用ハシゴ型フレームに、リベット接合が使用されているのかを考えてみたい。
 例えとして、実体験することもある、ハイエースのグランドキャビン(以下GC)車での後輪の接地性の事例を上げてみたい。ハイエースGCではシリーズ中で最もホイールベースが長い車両となるのだが、登り坂道狭路等で、急に坂の斜度が強まった曲がり角などで、後輪のホイールストロークが足りずに空転を起こす場合がある。つまり、仮に設計上のホイール上下ストローク(トラベルとも云う)が同じだとすると、ホイールベースが長くなるほど、要求されるホイールトラベルは増えることが体験上からも判る。

 一方、トラックの後輪ホイールトラベルは、大して大きくするすることはできず、特に荷台に積荷を積載している様な場合、そこからのバウンド(縮み)側の余裕は5cmに満たない場合も見受けられる。この様な場合でも、サスペンショントラベルの制限はあれど、フレーム自体が捻れることで、設置性を確保しようという思想が、トラックフレームにリベット構造を残しているものであろう。平荷台の後方をある程度低い速度で続いて走る様な場面では、荷台が路面の凹凸に応じて捻れているのが判る。

 ここで、リベットでなく、溶接構造にしたらどうなるかを考えてみたい。ある程度捻れ剛性は高まるが、長期間使用するトラックでは、フレームに亀裂が入る事例が増えるだろうと予見する。なお、現実の車両においてもフレームに亀裂が入る事例はあるが、ほとんどが、ウェブハイトの最も大きい、キャブと荷台の間辺りの場合が多く、ダンプなどで時々見にして来た。これらは、定格積載量を大幅に上回る使い方を繰り返した結果であり、事故ではない使用損耗というべきもので、保険の対象とはならない。



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