今回は、交通事故での示談解決の際、問題になる非弁法関連のことについて記して見たい。弁護士法72条では、以下の法文が定められている。
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
つまり、弁護士以外は、金取って法務行為(鑑定、代理、仲裁、和解その他)を、行ったり業にしてはならないというものだ。この法令の背景とするところは、弁護士業務を弁護士のみできる特権として、弁護士の社会的地位を上げるものだが、最近はあまり聞かなくなったが「示談屋」と云われる不逞な者や、権力者だとか大資本家が営利として乗り出した場合、弊害が生じるだろうことを見据えたものだと理解している。
ただし、従前繰り返し述べているところだが、弁護士という資格制度はあれど、その智力、能力、倫理意識は、上下に甚だしくかけ離れており、俗に云う「悪徳弁護士」と云われる者もいて、弁護士が預かり金を着服した事件というのも増えていると感じるし、能力がない弁護士に依頼した場合、解決が遅延し、賠償金も増え、弁護士報酬もかさむなどあるので、注意が必要なのだが、この弁護士の働きをサービス商品に例えると、まるで中身が見えないもので、誠に難しい買い物なのだ。
世にはこういう中身の見えないサービス商品は、保険だとか整備、板金なども同様だろう。保険は事故が起きて初めて商品の実行が果たされる訳だが、こんあハズじゃなかったということもあろう。整備板金なども、整備中をのべつ監督できるできる訳もなく、完成し受け取ってみたら、期待した品質でなかったとか、直って良かったと乗り出すと、整備や板金の瑕疵で不具合が表れることもある。
さて、保険と非弁の関係だが、昭和40年代後半の話しとなる。この頃、モーターリゼーションと呼ばれる様に多くの庶民がクルマに乗れる時代となり、保険の契約も著しく増加した。一方、必然として事故も増えてきた。そんな中、増える事故に対応して、FAPとかSAPと呼ばれる、対人および対物の示談代行サービスが付いた保険が主流商品となった。ここで、論議されることになったのは、非弁法に抵触しないかということであった。ここでの解釈は、保険会社は契約者が賠償しなければならない賠償人を本人に成り代わって、賠償の斡旋を行う訳で、いわば賠償金支払い本人としての当事者性があるので抵触しないという理解となった。
しかし、当初の対人示談代行に加えて対物示談代行までが加わると、案件は桁違いに増えること、示談代行を行う者(アジャスター)が別会社の歩合給で行っており、当事者性と示談に対する報酬という面で問題になる恐れが出て来た。そこで、損保は、弁護士会と、この件について、訴えないこと、示談は顧問となった弁護士の管理下で行うという協定を行ったのだった。考えてみれば、弁護士とは法令の解釈をそれぞれ行うが、裁判所判事ではないので、決定する権利はないのに、いわば闇協定を結び、顧問となってやってもいない示談管理を判子だけ押して報酬を得るということをやってきたのだ。(今もやっているだろう。)
その後時を経て、世のコンプライアンス運動(この起点が何処にあったのか不明だが、おそらく役人だろう。そもそも役人こそが最もコンプライアンスが求められる業種だが、最近の黒川事件においても欠落しているのは明らか)と共に、当初は一般アジャスターという制度を作り対人示談を担当させていたのを、子会社ではなく本体会社所属にした。その後、技術アジャスターも現在2社を除いて、本体会社の所属にした。子会社のままの2社も、技術アジャスターには、示談業務は行わせない様にしていると思われる。
なお、ここで現行アジャスターをやってる諸君も意識していない者が多いと思うが、保険会社で示談介入できるのは、あくまで保険金を支払うという前提での当事者性があってできることなのだ。つまり、相手が全面的に悪い場合など、そもそも保険会社では介入を断るのはその意味があってのことなのだ。だから、過失割合がある示談なら、割合に応じて支払う分については当事者性があるが、回収金については当事者性はないので、非弁に該当する。
先の弁護士法72条に戻るが、鑑定、代理、仲裁という文言があり、車両の損害額に関わる調査は鑑定と同意ではないかという意見が若干ある様なので、私見として述べる。この条文で鑑定というのは、事案そのものを見定めることを指していると解する。つまり、事故により生じた損害内容を調査分析することは、法的業務でもないし、妥当な損害額を知りたいという依頼者の要請に沿うか、純学術的な探究心からのものであって問題ないと理解している。
私も通算30年を越えて交通事故の調査分析や解決への間接的な助言を行って来たが、絶えず非弁法に抵触しないかということは意識してきたつもりだ。そんな活動の中で、保険会社に所属していた当時であっても、事案を保険会社の視点ではなく第3者的視線で眺めるよう意識していたつもりだ。(保険会社に所属している以上、外部からは認められないが)しかし、保険会社に所属している中においても、フリーな現在の立場においても、保険会社(というか巨大企業)の横暴理不尽さということを感じることは度々ある。例えば、ほとんど保険会社の担当者は話しを聞こうともせず、一方的に弁護士に委任するとかいう事案だ。私自身は保険会社時代から、多くの弁護士と触れあって来て、偶に担当者同士の話し合いで解決が膠着し弁護士を介入された事案も幾つかあるが、それを知らされた時の感想は「良かった!」というものだ。つまり、これで話しは解決報告に向かうという思いからだ。今でも、相談者の中には、弁護士か入ってきたが困ったなというのがあるが、ぜんぜん恐るるに足りないと思う。ただ、一般の方々は、情報弱者と云うことと、論点整理ができていない場合が多い。そこを整理していたり、当方主張の根拠を明確にしてやれば、細かいことは知らなくても、相手の意のままに解決でなく、当方主張は一定通せると信じる。
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
つまり、弁護士以外は、金取って法務行為(鑑定、代理、仲裁、和解その他)を、行ったり業にしてはならないというものだ。この法令の背景とするところは、弁護士業務を弁護士のみできる特権として、弁護士の社会的地位を上げるものだが、最近はあまり聞かなくなったが「示談屋」と云われる不逞な者や、権力者だとか大資本家が営利として乗り出した場合、弊害が生じるだろうことを見据えたものだと理解している。
ただし、従前繰り返し述べているところだが、弁護士という資格制度はあれど、その智力、能力、倫理意識は、上下に甚だしくかけ離れており、俗に云う「悪徳弁護士」と云われる者もいて、弁護士が預かり金を着服した事件というのも増えていると感じるし、能力がない弁護士に依頼した場合、解決が遅延し、賠償金も増え、弁護士報酬もかさむなどあるので、注意が必要なのだが、この弁護士の働きをサービス商品に例えると、まるで中身が見えないもので、誠に難しい買い物なのだ。
世にはこういう中身の見えないサービス商品は、保険だとか整備、板金なども同様だろう。保険は事故が起きて初めて商品の実行が果たされる訳だが、こんあハズじゃなかったということもあろう。整備板金なども、整備中をのべつ監督できるできる訳もなく、完成し受け取ってみたら、期待した品質でなかったとか、直って良かったと乗り出すと、整備や板金の瑕疵で不具合が表れることもある。
さて、保険と非弁の関係だが、昭和40年代後半の話しとなる。この頃、モーターリゼーションと呼ばれる様に多くの庶民がクルマに乗れる時代となり、保険の契約も著しく増加した。一方、必然として事故も増えてきた。そんな中、増える事故に対応して、FAPとかSAPと呼ばれる、対人および対物の示談代行サービスが付いた保険が主流商品となった。ここで、論議されることになったのは、非弁法に抵触しないかということであった。ここでの解釈は、保険会社は契約者が賠償しなければならない賠償人を本人に成り代わって、賠償の斡旋を行う訳で、いわば賠償金支払い本人としての当事者性があるので抵触しないという理解となった。
しかし、当初の対人示談代行に加えて対物示談代行までが加わると、案件は桁違いに増えること、示談代行を行う者(アジャスター)が別会社の歩合給で行っており、当事者性と示談に対する報酬という面で問題になる恐れが出て来た。そこで、損保は、弁護士会と、この件について、訴えないこと、示談は顧問となった弁護士の管理下で行うという協定を行ったのだった。考えてみれば、弁護士とは法令の解釈をそれぞれ行うが、裁判所判事ではないので、決定する権利はないのに、いわば闇協定を結び、顧問となってやってもいない示談管理を判子だけ押して報酬を得るということをやってきたのだ。(今もやっているだろう。)
その後時を経て、世のコンプライアンス運動(この起点が何処にあったのか不明だが、おそらく役人だろう。そもそも役人こそが最もコンプライアンスが求められる業種だが、最近の黒川事件においても欠落しているのは明らか)と共に、当初は一般アジャスターという制度を作り対人示談を担当させていたのを、子会社ではなく本体会社所属にした。その後、技術アジャスターも現在2社を除いて、本体会社の所属にした。子会社のままの2社も、技術アジャスターには、示談業務は行わせない様にしていると思われる。
なお、ここで現行アジャスターをやってる諸君も意識していない者が多いと思うが、保険会社で示談介入できるのは、あくまで保険金を支払うという前提での当事者性があってできることなのだ。つまり、相手が全面的に悪い場合など、そもそも保険会社では介入を断るのはその意味があってのことなのだ。だから、過失割合がある示談なら、割合に応じて支払う分については当事者性があるが、回収金については当事者性はないので、非弁に該当する。
先の弁護士法72条に戻るが、鑑定、代理、仲裁という文言があり、車両の損害額に関わる調査は鑑定と同意ではないかという意見が若干ある様なので、私見として述べる。この条文で鑑定というのは、事案そのものを見定めることを指していると解する。つまり、事故により生じた損害内容を調査分析することは、法的業務でもないし、妥当な損害額を知りたいという依頼者の要請に沿うか、純学術的な探究心からのものであって問題ないと理解している。
私も通算30年を越えて交通事故の調査分析や解決への間接的な助言を行って来たが、絶えず非弁法に抵触しないかということは意識してきたつもりだ。そんな活動の中で、保険会社に所属していた当時であっても、事案を保険会社の視点ではなく第3者的視線で眺めるよう意識していたつもりだ。(保険会社に所属している以上、外部からは認められないが)しかし、保険会社に所属している中においても、フリーな現在の立場においても、保険会社(というか巨大企業)の横暴理不尽さということを感じることは度々ある。例えば、ほとんど保険会社の担当者は話しを聞こうともせず、一方的に弁護士に委任するとかいう事案だ。私自身は保険会社時代から、多くの弁護士と触れあって来て、偶に担当者同士の話し合いで解決が膠着し弁護士を介入された事案も幾つかあるが、それを知らされた時の感想は「良かった!」というものだ。つまり、これで話しは解決報告に向かうという思いからだ。今でも、相談者の中には、弁護士か入ってきたが困ったなというのがあるが、ぜんぜん恐るるに足りないと思う。ただ、一般の方々は、情報弱者と云うことと、論点整理ができていない場合が多い。そこを整理していたり、当方主張の根拠を明確にしてやれば、細かいことは知らなくても、相手の意のままに解決でなく、当方主張は一定通せると信じる。