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トヨタ不正車検 営業マンの意見(ゼネラリストとスペシャリストの関係)

2021-10-11 | 事故と事件
トヨタ不正車検 営業マンの意見
 また、トヨタ不正車検の話題だ。今回の元記事は、トヨタでの営業マンとしての意見と云うことで従来と異なる意見があるだろうと好奇心を生み、読み下して論じたい。

 文章の前半部分は、種々と表現方法は異なるが、いわゆる作業における標準時間の要となる、車両個々の標準条件の違いを云いたいのであろう。このことは、従前の当方ブログでも、指摘して来たところだ。

 今回、目を引くのは後半に記された「優秀な整備士を「下に見る」大きな誤解が招いた歪み」という部分であろう。執筆者は10年前から引き続いてきたとしているが、このことは40年前の拙人の体験でも、類似のことが生じていたと回想する。そもそも、我が国の場合、ともすると技能職だとか肉体労働者(いわゆるブルーカラー)をホワイトカラーが下に見るという気風が根底にあるのだ。これは、ゼネラリストがスペシャリストを下に見るのと同義だ。

 このことは、従前にも何度か記しているが、儒教の影響も大きいと感じる。しかし、本来は、ゼネラリストがスペシャリストを互いに欠けた必用な存在として認め合える組織が世に成功する組織で在るはずだろう。それは、かつてのホンダにおける、スペシャリスト社長(宗一郎)とゼネラリスト副社長(藤沢)とか、東海道新幹線生みの親であるゼネラリスト十河総裁とスペシャリスト島技師長との関係があったればこそ、短期急成長もしくは開業を成し遂げることができたのだ。

 それが、今の世を見よ。あのホンダがゼネラリストが、スペシャリストの意見を真剣に取り入れているとは思えない。今次問題は、トヨタとか企業だけの腐食ではない。あらゆる企業や官僚など組織体で、腐食が進む問題だろうと感じている。

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なぜ天下のトヨタが? 元営業マンだけが知る不正車検の実態と原因
10/11(月) 9:00配信 ベストカーWeb
 レクサス高輪で発覚した不正車検問題。7月20日の第一報から約2か月が経過し、指定整備業務の取消、検査員4名の解任という、非常に重い行政処分が下されている。

 時間管理や人員の不足等が、今回の不正を招いたとトヨタは説明しているが、果たして原因はそれだけなのだろうか。

 なぜ、このような不正が起こったか、疑問に思う読者も多いと思う。そこで本稿では、トヨタ・レクサス両店での実務経験がある筆者が、不正車検の原因と実態を解説していく。

短時間車検そのものが諸悪の根源ではない
 不正車検問題を取り上げると、スーパークイック車検(SQ車検)に代表される、短時間車検が問題点のように扱われるが、SQ車検自体は良くできた仕組みだった。

 数日かかっていた検査・整備業務が、わずか90分で終わる。ユーザー、販売店ともに、時間を有効に使用でき、効率化されたこの仕組みは、多くのメリットを生み出した。

 トヨタは「決められた時間内に車検を終わらせることも、目的となってしまっておりました」と不正車検の原因を釈明したが、短時間車検自体が問題ではない。

 特別なシステム台車と完璧な整備マニュアルは、車検整備の革命とも言えるだろう。ただし、その運用方法や販売店の理解度に関しては、メーカーの想定と大きな乖離があったと思う。

 SQ車検は理解が曖昧なままに運用すれば、整備士や検査員へ大きな負荷がかかってしまうのだ。筆者はSQ車検の誤用によって、疲弊するサービススタッフの姿を数多く見ている。

「90分車検」が妥当なのはプリウスやレクサスCT級サイズ以下
SQ車検は比較的小型な車種が適しているが、レクサスでは写真のCT以外、ほとんどがより時間を必要とする大型モデルといえる

 SQ車検は、同じ作業を淡々とおこなうには最適な手法だ。しかし、自動車整備にはイレギュラーがつきものである。

 使用年数が長く、走行距離が多いクルマほど、イレギュラーが発生する可能性が高い。規定外の追加整備が発生すると、SQ車検の仕組みは機能不全を起こしてしまうのだ。こうなると時間内に作業を終わらせることは、ほぼ不可能だろう。

 実際に多くの店舗で設定されるSQ車検時間は90分だ。まず、この時間内に作業が終わるクルマには条件があることを理解しなければならない。初度登録から5年以内(2回目の継続検査まで)で、年間走行距離が1万キロ前後というのが基本条件だ。さらにクルマの大きさは、プリウス程度までに限りたい。

 クラウン、アルファード、ランクルなどの大型車では、作業時間をさらに30分増やすほうが安全だ。レクサスでは90分で作業が終わるのはCT程度であり、基本条件をクリアした上で、全車120分の時間設定が妥当だろう。

 SQ車検が可能となる諸条件を充分理解をしている販売店本部や、店舗スタッフは少なく、適切な運用ができていた店舗も同様に少なく感じる。条件外のクルマが、サービス担当へ何の相談もなしに、SQ車検として予約されていることは珍しくないのだ。

 特に点検時期を知らせる電話をするのは、営業マンの仕事であるから、適切なSQ車検の運用ができるよう、営業スタッフの理解を高めることが、喫緊の課題となるだろう。

 また、利益を優先し、整備工場の実情にそぐわない売り上げ目標や、入庫目標なども大きな負荷だ。机上の空論ではなく、実態に即した目標値を定め、整備士の評価がいたずらに下がらないような、評価制度の工夫も必要となる。

優秀な整備士を「下に見る」大きな誤解が招いた歪み
 制度の正しい理解や運用はもちろんだが、真っ先に取り組みたいのは、整備士の地位改善だ。

 4年制大学卒業の営業マンと、専門学校卒業が多い整備士では、入社時の年齢が違う。整備士は営業マンより年下で、同期とはいえ、年上の営業マンには気を使うだろう。入社時から、整備士は少し弱い立場に置かれてしまう。

 また、一昔前の営業マンのなかには、整備士を下に見る人がいた。会社の利益は営業マンが出しているから、営業マンのほうが偉いという無茶苦茶なロジックが通用していたのだ。もちろん、このロジックは誤りであり、整備士は営業マン以上に会社に貢献していると筆者は思う。

 「クルマを安心して売ることができるのは、整備してくれる人がいるからだぞ、覚えておけよ」これは、筆者が新人時代に、先輩営業マンから言われた言葉だ。

 クルマの営業は、整備士の仕事が丁寧におこなわれているからこそ活きる仕事であり、整備士に活かされているのだと、筆者は教わってきた。

 このような理解をする営業マンが増えていれば、今回の問題は、未然に防ぐことができたかもしれない。

 整備士の処遇や立場の改善は、10年以上も前から問題視されていたことだ。不正車検という報道は社会に大きな衝撃を与えたが、自動車販売業の業務実態を知っている者からすれば、起こるべくして起こった問題だと納得してしまう面もある。それもどこか悲しいのだが。

 不正車検を行った事実は許されない。しかし、当事者たちだけが悪いという結論だけでは、何も変わらないのだ。弱い立場に置かれた者に言葉を飲ませ、車両販売にだけ目を向けて、整備体制がおざなりになった。この結果をメーカー・販売店は認め、改善を図るべきである。

 日本の整備士は、世界の中でもトップクラスの技能を持ち、非常に優秀だ。優秀な整備士が、自己防衛のために再び悪事に手を染めるといったことが絶対にないように、業界全体が自分事として問題解決を進めていってほしい。


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