
単体でこの自動車部品は何かと問われたら、その車種に精通していない限り、答えられる方は少ないでしょう。
答えはBMW車に使用されるステアリング・アングルセンサー(以下同センサーと記述)となります。同センサーはステアリング・ホイールの切り角度(転舵角)を検出する目的で設置され、DSC(スタビリティコントロール)や電子式ターシグナルスイッチのOFF動作等を行っています。ですから、同センサー故障が生じると、DSC異状ランプが点灯したり、ターンシグナルを点灯から転舵し直進走行になっても戻らない(OFFされない)といった症状が表れる訳です。(国産および輸入車を含め同様のセンサーは現在では当然すべてといっていいくらい使用されています。)
今回、トラブルに遭遇したのはBMW・E91(320iツーリング)でしたが、先に記したのとまったく同様の症状を呈していたのでした。DCTチェッカーで点検すると、ステアリング・アングルセンサー異状と表示され、異状コードを消去しても、左右に転舵を繰り返すと再度異状コードが検出されるという状態です。
そこで、ステアリングアングルセンサーを取り外し分解し、写真の円盤状のセンサー部品を観察すると、同心円状に並んだ透明なスリットに細かいツブツブ状の汚損が確認されたのでした。何とか直らないかと、同部品を極細目なペーパーで磨き、ほぼ汚損は除去されたと判断し、再度車両に装着し左右の転舵を行いましたが問題はない様でした。直ったと思い走行テストを行ってみたところ、左転舵から右方向に戻し直進になる際に、再度DCTウォーニングが点灯してしまうのでした。がっかりしながら、こうなれば同センサーの円盤状部品(リペアキットとして販売8千円程度)を替えるしかないと、部品を取り寄せ取替作業となったものです。走行テストを行いましたが、今度は異状はまったく再発しませんので、完全に直った様です。
しかし、今回の作業で感じたのは以下の様なことです。
同センサーがチリや埃を嫌うが如く、リペアキットにはビニール手袋やヘアキャップまでが同梱されていました。その割りには、同センサーを包むハウジング合わせ面などにOリングなどによる気密構造とはされておらず、これでは今回同様のトラブルも生じる可能性が大きくなるでしょう。また、今回車は事故車でドライバー側エアバッグが作動していた車両なのですが、先に記した細かいツブツブ状の汚損は、想像ですがエアバッグインフレーターの展開初期における起爆剤の噴出で生じたものでないでしょうか。比較的高温の微粒子噴流が同センサーへ微粒子を密着させる結果となった様に想像されます。なお、同センサーのハウジング内面もザラザラと微粒子が付着(まるで薄く塗装を行った如く)付着しているのが観察されたのでした。最初の修理時にこのことに気づき、センサー円盤だけでなくハウジング内面の清掃も行っています。同センサーの不良は,そのすべてがエアバッグ作動に起因する訳ではないでしょうが、エアバッグ作動車は要注意な部品と思われたのです。
それと、電子式ターンシグナルスイッチですが、BMWも含め多くのクルマで採用されていますが、何かレバースイッチに節度がないためか、フィーリング的に好きになれません。従来の機械式スイッチですとフラッシングする側にカツンと倒れ、直進方向に戻すとカム機構でカツンと戻るという方が、判り安いし人間の感性に合っているのでは思っています。