私の思いと技術的覚え書き

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VANOSトラブル・・・その原因

2014-01-20 | 車両修理関連
 VANOSとはBMW社で呼べれるエンジン吸排気バルブの可変位相機構のことで、トヨタのVVTと同様の機構であることはご存じのところでしょう。この様な機構は、BMWに関わらず現代のDOHC4弁エンジンであれば、ほとんど一般化したとも感じるまでに普及し、これにより本来DOHCが持っていた高速高出力に加え、低速トルクの増加やアイドルの低回転安定化等と共に、広いパワーバンドを生み出せるから故のことだからでしょう。

 さて、今回経験したクルマ、BMW116i車(型式:GH-UF16)では、エンジン始動不良、そして始動しても低速回転のバラツキやアイドルの不安定等を生じているというものでした。いわゆるタイミングベルト方式のカムシャフト駆動車では、稀に歯付きベルトのコマを乗り越えるジャンピングによりバルブタイミングが狂うことにより、先の不具合と類似の現象が生じることが知られています。しかし、今回のクルマはベルトでなくチェーン駆動ですし、そんなことは考え難いなと思いつつ原因を探りました。

 そして、バルブの可変位相機構(VANOS)を駆動する油圧ソレノイドを外して点検してみると、ソレノイド流路に設けられた網目に多量の異物(オイルスラッジ)がこびり付いているのが確認されたのです。また、このクルマのヘッドカバーを開けて眺めると、多量のオイルスラッジが堆積しており、オイル交換の大幅な遅延にその原因があったことが推察できます。ただ、幸いに感じたのはカム山にキズ付きや摩耗も観察されず、完全回復とまでは行かなくても、ある程度の希望は持てそうにも思えことです。

 そこで、できる範囲でのスラッジの除去を行い、エンジンオイルのフラッシングとオイルフィルター交換を複数回実施、そしてオイル交換を行い、念のため、例のソレノイドを外した状態でエンジン始動し、オイルを噴き出させることでVANOSオイル通路の洗浄、当然VANOSソレノイドも洗浄し、組み付けました。

 その結果は、始動性OK、アイドル安定OK、高速回転も問題なし、その他異音も感ぜられずOKな結果です。ただ、長時間(数時間以上)停止後のエンジン始動時に極短時間(数秒)ですがガラガラとチェーンの駆動音がでます。たぶんチェーンが伸びて来ておりテンショナーの油圧が上がるまでの僅かな時間にガラ音を生じているものと思われます。

 今回のトラブルは、バルブ位相可変機構の動作不良であり、いわゆるバルブオーバーラップ(吸排気バルブが同時に開いている状態)が、高回転では広く、低回転時は狭くなるべきを、低回転でも高速用のタイミングとなってしまっていたものと想像されます。

追記
 BMW車ではかなり以前からだったと思いますが、適正な純正オイルを使用する前提で、約25千キロ毎(実際にはその間の燃料噴射時間を積算しており変動する)のエンジンオイル交換をインジケーターに表示します。ほんとそんな長いインターバルで大丈夫なの?と昔の機械屋しては思っていたところです。



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