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産業廃棄物処理費、今そこにある問題を打破できないと云う体質

2022-02-03 | 問題提起
産業廃棄物処理費、今そこにある問題を打破できないと云う体質
 産業廃棄物処理費は、近年その処理費の値上げも著しく、一方車両側の樹脂部品の使用量も益々増えつつあり、それをまともに請求していないBP業もしくは自整業が多いと云うのだから、理解に苦しむ事態が出現している。

 その根源を考えてみると、車両事故リペアは、損保の保険でカバーされる機会が多いのだが、その損保の言い分は以下のことを述べるという。

 産業廃棄物処理費つまりスクラップ処分費に該当するものは、予てから対応単価もしくはレバーレートの計算において、その原価の一つとなる工場費に含まれている。なお、10年近く前に当時のレバーレートで、産業廃棄物処理費が増大していると云う工場側の意見を組み入れ、当時対応単価に10円を加算した経緯がある。そういうことから、産廃処理費は器は通常の単独処理項目すなわち保険金としては認められない。

 と云うことだが、この問題をどう考えたら良いのだろうか。
 そもそも、自整業とかBP業は、そんなこともあっての故もあるのか、産廃処理費を保険でなくてもユーザーに理解してもらう努力もなく請求していない実態が多い様だ。しかし、タイヤ業とか土木建設業など、今や産業廃棄物処理費を請求するのは当然のことになっている。電気製品も比較的新しい製品は、製品価格に処分量が含まれており、その様な新しい製品は電気店で処分量を請求されることはないが、古い製品(代表例がブラウン管式テレビ)などは、有償でないと引き取ってくれない。また、生活ゴミであれば家具など粗大ゴミでも自治体で処分してくれるが、ブラウン管式テレビなどのリサイクル家電となるものは捨てられない。

 と云うことで、自整業やBP業は何で産業廃棄物処理費をユーザーに請求しないのだろうか? それは損保が認めてくれないからという声が聞こえてくるが、先に述べた工場費に含まれていると主張を妥当なものとして受け取って良いのだろうか?

 筆者は以下の様に考える。レバーレートの計算例として、大昔の考え方の一つとしてスクラップ費は工場費に含むという一つの考え方があったのは事実だ。ただし、これは、そういう考え方もあると云うことで、何ら法令や慣例として決まった問題ではない。
 そもそも、大昔のスクラップ費を考えると、必ずしも産業廃棄物となる樹脂部品は比較的少なく、それより金属類の今なら有価物となる物品が多かったということがあるのだ。
 それを損保が認めるとかに関わらず、まずはユーザーに理解してもらう努力をする必用があったのに欠いたまま過ごして来たと思える。そして、損保が認めないと言い張るのなら、これは保険では見れないというので、自己負担をお願いする努力をすべきだろう。このことは、健康保険でも同じで、すべての治療が保険で認められる訳でなく、例えば高価なインプラント治療とか、入院した場合の個室費用など認められないものもあるのだ。

 なお、筆者は元保険会社損害調査員の経歴を持つが、損保の対物および車両約款に、産業廃棄物は払えないなどとは一言一句も記されていない。妥当な修理費は保険の対象になることのみ記されているだけだ。ただ、車両保険で修理で直るものは取替でなく修理によるという決まりが比較的新しく追加された経緯がある。

 と云うことで、産業廃棄物処理費についてユーザーの理解を得る努力をする際に、本来これも修理費の一貫として生じる妥当な費用だから、そもそも損保で認めないいう理屈は理解しがたいところがあるのだ。ついては、お客様も保険会社に苦言を申し入れてもらいたい、さすれば損保はお客様に出している事例もあることを合わせて伝えて欲しい。

 つまり、ユーザーの理解と、その苦言を保険契約者であるユーザーから保険会社に伝えさせる様に努めると云うことだ。これは、どんなに自己主張が強く損保には負けないという工場であっても、保険会社の強みは、修理費総額が決まっていない以上、保険金は払えませんと持久戦に持ち込まれるてしまうことを考えなければならない。

 ついでに記すが、人身事故損害では治療が長引く事例も多く、治療がすべて終わってからしか払えないなんてことがないよう、適当な間隔で治療費や給与損害などの内払いという支払い方をしている。本来、車両や対物保険でも、特に高額損害の場合は、修理費額が完全に決まっていなくても、例えば部品代だけ月内に支払うとか内払いの手法は保険会社はいやがるだろうが、できないはずはないだろうと考えている。

 こんな話しを記すのも、昨夜のことだが、複数県の先進的な考え方を持つ主にBP工場の担当者少数名とZOOMミーティングに参加する機会を得たのだが、どの担当者も理論は判れども、たぶんユーザーを説得したり、保険会社と揉めたりする面倒くささから、誰かがこの今ここにある問題を解決することを期待はしても、自らが能動的な活動をしないという体質のことを異口同音に述べていた。筆者に云わせれば、この体質があるからこそ、20年近く対応単価もほとんど据え置き状態となったに違いないと改めて感じた次第だ。

 つまり、先進的な極少数人が損保を責め立てても、損保は支払いを止め、もっと云えば「あの工場は悪質だと言い触らし」(まともにやったら犯罪だから噂程度でやる)、指定工場であった場合に指定を取り消しすると脅して、いわば弾圧して来るのだ。これに打ち勝つには、労働組合運動と同じで、皆で同じ運動を起こす、つまりあっちもこっちもユーザーの理解を得ようと戦い出せば、損保は抑えきることは到底不可能となるだろう。その努力を各工場担当者が自らせねば、この問題は解決されないことは明白だろう。

 なお、ついでに記しておくが、今のADAS(先進安全システム)、サイバーセキュリティ強化、レベル3以上の車両の一般化が進めば、自整業、BP業、そしてアジャスターと呼ばれる損保調査員の未来は、間違いなく相当にシュリンクするだろう。その中で生き残るには、自ら思考し、自ら行動する努力を行わない者は、真っ先に淘汰されるだろう。


【参考過去記事】
損保が産業廃棄物を認めた事例
2021-12-13 | 車両修理関連
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/2333316db3cf9718459abe305966453b


#修理費の産業廃棄物処理費・未請求問題


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