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なぜ日本企業から「大物経営者」が出なくなったのか…この国をダメにした「4つの原因」

2024-06-15 | コラム
なぜ日本企業から「大物経営者」が出なくなったのか…この国をダメにした「4つの原因」
6/15(土) 5:04配信 現代ビジネス

「西洋化」は「必要悪」であった

 「散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする」という言葉は、明治維新を象徴するものの一つである。「鹿鳴館」も同様だろう。

 1603年に江戸幕府が開かれ、1868年の明治維新に至るまでの265年間の江戸時代、さらには、2021年2月28日公開「1400年の歴史、世界最古の会社が日本に存在している…!」で述べた、少なくとも1400年前に遡る悠久の歴史の中で培われた日本文化が西洋文化よりも劣っていたとは思えない。

 だが、大航海時代以来、多くの国々を植民地化し残虐な支配を実行可能にした強大な軍事力や、一足先に産業革命を実現した欧米の工業力に日本が太刀打ちできなかったのは事実である。

 実際、幕末期の1840年、清が英国から言いがかりをつけられアヘン戦争が始まった。その結果、1842年に南京条約を締結。香港島が英国に割譲され、英国の直轄植民地となった。

 清の人々を麻薬漬けにして、汚い金をがっぽり稼いでいた英国が、「清朝が国民を守るために麻薬取り締まりを行う」という至極まっとうな政策に言いがかりをつけ、こともあろうに彼らの領土の一部を奪ってしまったのだ。

 また、第2次アヘン戦争とも呼ばれる1856年から1860年にかけてのアロー号戦争においては、英国とフランスの連合軍が中国を蹂躙した。この戦争で清は再び敗北。不平等条約である天津条約(英国・フランス、および仲介役となったロシア、米国の4ヶ国との個別の条約)や北京条約を締結させられ、アヘン輸入の合法化まで押し付けられたのだ。

「欧米化」によって日本を守ったが
 したがって、目と鼻の先で英仏を始めとする欧米の軍事力を背景とした傍若無人ぶりを目撃した日本の明治政府が、「自国を欧米の蹂躙から守るために」欧米化したのは極めて賢明な判断であった。

 そのおかげで我々は、中国のような(事実上の)欧米の植民地化による苦難の歴史や、実際に植民地にされ世間では「ブリカス」と呼ばれる英国を始めとする国々から残虐かつ卑劣な支配を受けることが無かった。もちろん、南米のマヤのように「文明崩壊」という悲惨な目にも遭わなかった。

 このように、欧米の脅威から身を護るためにあえて(欧米に立ち向かうために)「欧米化」の道を歩んだ日本だが、もちろんその中でも、1400年以上の歴史によって磨かれてきた日本文化は連綿と受け継がれてきている。

 このようにして大切に守られてきた独自文化の素晴らしさは、4月6日公開「YOASOBIのヒットは『第2次ジャポニスム』到来を告げるのか?」で述べた通りだ。

 そして、日本文化の素晴らしさは「ビジネス」や「経営」についても同様である。

 バブル崩壊の真の責任が、バブルに浮かれた能力の低い経営者や無責任にバブルを煽ったオールドメディアにあるのは明らかである。それにもかかわらず、「日本型経営」を戦犯扱いし、「欧米型経営」を礼賛してきた。日本の「失われた30年」の原因は複雑ではあるが、無責任な「欧米型経営礼賛」の影響も大きい。

 本来(バブルによって)ゆがめられてしまった日本型経営を修復・改善すべきところであったのだが、「欧米型礼賛」によって捨て置かれ負のイメージを受け付けられた。その結果、2021年4月28日公開「東芝、マクドナルド、日産…日本企業をぶっ壊す『プロ経営者』たちのヤバい実態」など、多くの企業が厳しい状況に追い込まれたのだ。

「米国一極支配」による経済の混迷
 確かに現在では、欧米が明治維新の頃のように大砲や軍艦で我々を脅迫することはない。

 だが、6月9日公開「戦後体制が崩れて世界は『大乱』~資産も大事だが、変化に対応できるのは人間だけだ」で述べたように、1990年頃のバブル崩壊以降の歴史は、1991年ソ連崩壊以降の「(世界の)米国一極支配の歴史」と重なる。

 この間に世界の金融・経済システムを「ジャイアン・アメリカ」が強権的に支配してきた。例えば、マネーロンダリング対策と称して、我々の銀行口座での取引に多くの規制がかかり、取引が煩雑になったのも、米国の「世界戦略」の影響である。

 世界の金融が「米国一極支配」であるからこそ、6月9日公開「ついに世界の覇権移動が始まった…! 『ジャイアン』アメリカを恐れず、いまBRICSが急速に拡大している『衝撃の理由』」3ページ目「アメリカの世界権力の源泉『金融システム』」で述べたように、BRICSの主要な設立理由として「世界的な金融システムの再編や欧米主導の国際金融機関における発言力の強化」が掲げられたのだ。

 そして、世界的な金融の支配と共に、日本の経営・ビジネスにおける欧米化(というよりも米国化)の象徴が次の4つであると考える。

 1. プロ経営者の蔓延
2. コンサルタントの跋扈
3. SDGs
4.(自己保身のための)コンプライアンス
「日雇い」の経営者
 1の「プロ経営者問題」については、2020年7月20日公開「『プロ経営者』たちが日本企業を次々に破壊しているというヤバい現実」、2021年4月28日公開「東芝、マクドナルド、日産…日本企業をぶっ壊す『プロ経営者』たちのヤバい実態」など多数の記事で述べてきた。

 要するに、「いつ雇い止めになるかわからない『短期雇用』の経営者」が「企業の長期的発展」を真剣に考えるはずが無いということだ。

 2の「コンサルタント」については、「コンサルタントの言いなりになって潰れた(経営悪化した)企業」の話をいやというほど聞く。彼らは企業の発展では無く、コンサルタント契約の延長と仕事の増大を望むから、とにかく重箱の隅をつつくように「企業の問題点」を洗い出す。

 問題点の改善にはよい点もあるが、問題を改善して平均点になっても企業間の競争には勝てない。2021年1月25日公開「企業競争力の源泉=個々の従業員の長所は後からいくらでも伸ばせる」5ページ目「長所進展法が最良戦略か?」で述べたように、企業を勝利に導くのは「突出した長所」であり、決して凡庸な平均点ではない。その点で、コンサルタントを雇って粗さがしばかりをしている企業の将来は暗い。

「小物」を大量生産するコンプライアンス
 3の「SDGs」がどれだけ馬鹿げているかは、2021年8月22日公開「脱炭素・EV推進、『合理的な科学的根拠が無い』この方針は、もはや『宗教』だ」のように、科学的・論理的根拠が無い主張を鵜呑みにして、消費者が企業に支払う代金(売上げ)を浪費していることだけでも明らかだ。

 それだけではない。「雇用の『持続可能性』」をないがしろにして、リストラで浮かせた資金から「SDGs」に支出して、「持続可能性」を支援していますなどと宣うのは、とんだお笑い草である。

 4の「コンプライアンス」は、ほとんどの場合「自己保身」のために使われる。2022年4月5日公開「『小物』化する上司が招く"日本企業の悲劇"…権限がなさすぎて現場担当者が委縮しているという大問題」、2019年8月10日公開「日本の企業と社会を破滅させる『過剰コンプライアンス』のヤバイ正体」の通りだ。

 特に、上司が「小物」になって、チャレンジが許されなくなっていることが、日本企業の閉塞感や停滞の原因だと考える。

 昨年1月14日公開「顧客の要望に最大限に応える本当の顧客主義を実践する日本の高度技術企業たち」において、日本企業の「顧客志向」と「長期的展望」について述べたが、特に同記事6ページ目「浜松ホトニクスの光電子増倍管」が典型例だ。

 当初色々な議論があったことは想像に難くないが、当時社長であった晝馬輝夫氏は「できないと言わずに、とにかくやってみろ」と社内に指示を出した。そのことが、偉大な成功につながったのである。

 「重箱の隅をつつく」ように(コンプライアンスの)粗を探す、「社内ゲシュタポ」が暗躍する環境で、このような「大物」が生まれてこないのは当然である。

世界のどの国も真似できない日本文化
 ZAKZAK 6月10日拙稿「世界で『YOASOBI現象』第2次ジャポニスム時代が到来 世間で揶揄の"ガラパゴス文化"こそ日本の経済的武器に」で述べたように、「ガラパゴス」と揶揄される独自性こそが、日本の戦略的武器である。

 バブル崩壊以前の日本の繁栄期において、米国などが「日本型経営」を取り入れようとしたのにも関わらず失敗したのは、彼らに「文化的基盤」が備わっていなかったからである。「日本型経営」は、前述の「1400年の歴史」に象徴されるように、十分に「文化的な基盤」が整備されていなければ実現できない高度なシステムなのだ。

 その「高度なシステム」を「カイゼン」によって伸ばそうとせずに、欧米の「高度ではない」経営手法を取りいれて、前記1~4のようなシステムで「平均点」をとるために必死になっていたのがこれまでの日本である。

バフェットが述べる「堀」とは一体何なのか
 「日本の真の競争力」とは他国が真似できないものであるべきだ。バフェットに言わせれば「堀」である。

 アウトソーシングを行い、「日雇い(ジョブ)型雇用」で賄うビジネスに競争力は無い。アウトソーシングできるということは、「外部にノウハウがある」ということだ。また「日雇い(ジョブ)型」の人材によって仕事が回るのも、「社内の(人材固有の)高度なノウハウ」=「堀」を持たないからだ。

 米国のように生涯10回以上も転職をする社会では、ノウハウも「個人の財産」として各社の間を転々とする。これでは、企業としての高度なノウハウ(=堀)を築くことなどできない。

 人材をチェスのコマのように扱う欧米流では(少なくとも日本は)発展しない。長期的に人材に投資し、「チームワーク」で勝利するのが本当の「日本型経営」である。そして、それこそが、日本の国際競争力=「堀」を形成するのだ。

 「必要悪」としての「欧米化」は否定しないが、日本を発展させるのは日本の長所=「独自性」であることを忘れてはならない。

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何が「日本の独自性」か。もっと知りたければ、続編「『根回し』の何が悪いのか…現場を知らないMBAホルダーがもたら『悲惨な結果』と、日本型経営の『最大の長所』」を読め! 読めばわかる。---------- 大原 浩(国際投資アナリスト)


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