私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

車両保険全損で必ず損保は全損車を引き上げできるのか?

2021-11-30 | 問題提起
車両保険全損で必ず損保は全損車を引き上げできるのか?
※保険代位と一部保険

 昨今は車両保険もしくは対物保険でも、全損となった場合に、提携する業者なりに車両を引き上げることがなされているのだが、このことの意味と一部暗部になろうことも加味して記してみたい。

1.保険代位という考え方
 ここで、保険代位とは、損害保険において保険会社が契約者(被保険者)に対し保険金を支払った場合、一定の要件の下に、被保険者の有する権利が保険者に移転する制度のことをいいます。

 この代位の考え方は下記の民法422条が根拠法に相当します。つまり、保険の全額を支払った場合は、その所有権は債権者(金員を負担する者=保険会社)に移る(これを代位と呼んでいる)という考え方なのだ。

 この根拠法は以下の民法422条が該当する。

民法 第422条
 債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。

 ここで、保険負担が金員そのもの負担であれば実態とアンマッチすることはあり得ないのだが、あくまで車両価値として考えた場合、必ずしも車両の価値全額を保険で購ったと云えない場合も生じて来ることを承知しておく必用がある。

 これは、実例を示せば、特に輸入旧車(国産でもランクルとか旧GTRなどあると想像される)などで多いのだが、車両は600万円で購入しその価値があると認知しているのだが、車両保険を付ける段階で、車検証の年式などから、300万円が上限だと云われ止むなくその様な契約を行っている場合があるだろう。

 この様なケースでは、実際問題として車両全損の支払いに加えて、契約者なり車両所有者が不足分を負担しての実修理が行われている場合があるが、この場合保険会社は代位求償権からクルマを引き上げることを主張すると訴訟では負けるだろう。そんな訳で、引き上げるとまで云ってこないハズだ。

 なお、この代位という考え方は、車両保険に限らず対物保険にも適用できるので、対物全損で時価額が素直に折り合えた場合、あくまで所有者の了承を得てだが引き上げをできることになる。

 ただし、対物全損の場合の代位権の行使はできる論理なのだが、車両保険に比べその行使が行なわれている機会は少ないということが実務経験者としては云えると考えています。その理由だが、対物の時価額は、そもそも保険会社と被害者間で揉める案件が多く、第3者的に眺めて、どこが妥当な時価か難しい問題を内在していることが大きな理由となるからと想像される。

2.一部保険という考え方
 この一部保険とは、仮の実例を示せば、車両保険であえて車両価値が100万円であるのに、恣意的に車両額を50万円と正当な価値の50%しか付保していない様な場合を指す。ここで、あくまでも50万円の上限金額を超すような場合は全損となり支払われ、車両の引き上げなされないことは従前の説明通りなのだ。ただし、ここで損害が30万円だった場合、損保は一部保険だからという理由で、30万円の損害だが、正当な車両価値と付保額の按分比(50%)だからと、損害額の50%である15万円が支払いになると云ってくる可能性は約款上あり得る。なお、先にも触れている様に、契約の際に旧年式車だと新車価格の10%だとかかなり低い金額でしか保険に入れないとかが起因となっていることが主因であれば、この一部保険という考え方は適用できないだろう。

3.引き上げ車両のリサイクル預託金など本来契約者に返すべきものが確実に返還なされているか
 保険会社で代位権から車両を引き上げる場合、あくまで代位権が移るのは支払い後という点は抑えておく必用がある。そして、車両盗難などで支払う場合は、車両の所有権を保険会社に移す処理(名義変更に必用な書類の提出)を行いつつ支払いが行われるのだが、一般の事故全損の場合は、保険会社への名義変更など行わずに契約引き上げ業社への名義変更が行われる形になるのだろう。

 ここで、契約引き上げ業社がそのまま破砕業社にスクラップ処理車両として流して処理しているのならさほど問題にならないのだが、多くの場合事故車オークションなりで転売されている場合が多いと承知している。この転売の場合、オークション落札価格+消費税は当然落札者に請求がなされるのだが、それに加えてリサイクル預託金とか車検残が長いとかの場合、自動車税の月割り分も請求がなされている。これら、リサイクル預託金とか自動車税の月割り請求分というのは、本来的に車両使用者もしくは所有者(多くの場合は保険契約者)の権利となるのだが、必ずしも総てが契約者なりに返還(還付)されているかグレーな部分があると承知している。

 つまり、保険会社は先の還付金の処理を総て引き上げ業者に任せており、必ずしもそれが果たされているかと云うことに無頓着である場合もあり得ると思えるのだ。この点、幾つかの現役損保マンにたずねてみると、引き上げ業社と契約者なりがトラブルとなった場合、その業社の指定を取り消すなりの処理をしているとはいうものの、そんなことを一般の多くの車両ユーザーが知らない事例の方が多いと思われ、果たして正当な処理がなされているのか疑問を思うところだ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。