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書評「保守の真贋 保守の立場から安倍政権を批判する」(西尾幹二著)

2021-01-17 | 論評、書評、映画評など
 書評の前に、近年インターネットの普及により、主にはYoutubeで特段の言論人でなくユーチューバーと呼ばれ半ば素人が様々な解説を行う様相が生じた。この件、すべてを否定すべきつもりもないが、中にはセミプロみたいな従来ならメディアの解説で飯を食ってきた様な爺さん(が多い)が、たぶんメディアを追い出され、Youtubeで稼ぎを得ようとグチャグチャ述べている動画が多過ぎる。こういうのは、直ぐに有料会員動画の話しをするので欲に目がくらんだ碌でもない人物と判り相手にもしない。それと、昨年冒頭の中国発の世界的病変だが、これについて、様々な論評が一段と増えた訳だが、従来、良いこと言うよなぁと感心し信奉していた方が、段々と崩れた論説になって行くのを見ると、この世界的病変が言論界に生み出した影響はとてつもなく広く大きいと改めて思う。

 しかし、米大統領選挙を論評を流し見していて、カオスと云うべきか、あまりにも正逆の情報が入り乱れて、どれを信じるべきかと思うところは多いし、これでは所属する組織体とか宗教体などによっては、冷静に情報を見つめる暇もなく、扇動されて行ってしまうもムリもないことだと思える。

 それともう一つ、従来インターネットITメディアなど、小さな勢力だったのが、何時の間にやら巨大な力を保持しており、俗に云う「バン」とかいう形で、記事を消され、以後の投稿も不可能にされる「アカ消し」までなされるというには驚いた。これは云うなれば検閲行為に他ならず、これら大手に達した巨大ITメディアは凋落の運命を取るだろうし、いや取らせなければいけないだろう。

 さて、本論の書評だが、著者の西尾幹二氏は、過去から我が国の保守の信頼できる論客の一人として信頼して来た方である。その高齢さもあり、昨今は論評に接する機会も減っては来ている。今回読んだ「保守の真贋」も4年ほど前の執筆で、今やってる米大統領選挙がトランプが予想外の当選をした頃ということが各所で理解できる。

 この本の主題は、副題にも掲げている「保守の立場から安倍政権を批判する」とある通り、安倍首相を偽保守ぶりを批判した内容だ。それも、今安倍政権が批判の矢面になっている「桜の会」、「森友や加計学園」と行った問題はこの4年ほど前には大きな問題になっておらず、それよりももっと政治の根源的な部分での批判に終始している。その結論を記せば、安倍とは国民に耳さわりの良い弁舌を繰り返したが、北朝鮮拉致問題など一切手付かずで放り投げ、とても保守とはいえない政治家だったと云うことになろう。

 それと、この本というか著者の能力に負うところが大きいと思うが、4年前の記述だが、世界情勢で今何が問題でこれからどういう問題が顕在化して来るかと云うことが、実にマクロに展開されているところは参考になったし、著者の視点に狂いがないことを立証していると思える。つまり、4年前の本で情報が古く役立たないのではなく、根源を説明しているから、逆に今が理解できると云うことだろう。

 最後に、アジアの中の日本としては、今後中国と朝鮮(南北)の問題は大きなウェイトを置かざるを得ないのだが、特に韓国の「恨の文化」ということを解説しているところには注目したい。この恨(はん)とは感情的な恨みやしこり、悲愁、無常観を表すのだが、逆に相手に対するあこがれや、嫉妬、嫉みを生起させる文化でもある。日本はこんな小国の感情論を一切無視すれば良いと云う意見もあるだろうが、これをないがしろに放置すると、他国の韓国化が生じる可能性があるというところはなるほどなぁと感じるところでもある。

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