私の思いと技術的覚え書き

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リーダーの言葉 小倉昌男(ヤマト運輸元社長)

2018-04-01 | コラム
 当方、まあまあ本を読むのが好きな方で、だいたい小説は歴史物で、好きな作家にほぼ限定して読んでいる。また、一般的なビジネスのハウツウ本みたいなのは、昔は出張の都度、新幹線や航空機の搭乗中に読んだが、昨今は読むことは少なくなった。それよりも最近は、経営者とか軍事指導者、いわゆるリーダー達のことを書き表した本を好んで読むことが多くなった様に思う。それは意識している訳ではないものの、それなりに知名度が高いリーダーの名を見ると、どんな思考が成功に導いたのかと感心を持つからなのかもしれない。

 さて、今回読んだのは小倉昌男氏(享年80歳)の話だ。ヤマト運輸を創業社長の父から引き継いだ2代目社長だ。そして、今から42年前となる1976年1月に日本初のサービス商品として宅急便(登録商標)の営業を開始した。それまでは、個人が荷物を送るには郵便小包しかない時代であった。同業の運送会社は、いわゆる個人間の不定型な宛先への輸送なんか、到底採算が合う訳にないと見向きもしない時代にあって、それなりの営業店を整備すれば需要はあり必ず成功するとの信念に基づいたものだった。結果は、後発の宅配便事業への参入も含め、従前の郵便小包を遙かに凌ぐ取り扱いを更新し続けている。【96年度に配送された郵便小包が4億個なのに対して、クロネコ宅急便は7億300万個と郵便小包の約1.8倍ものご利用があった。】

 以下、小倉昌男氏の発言から私の心に響くものだけをピックアップして記してみたい。また、私の雑感を付記する。

・サービスが先、利益は後
~これは先に述べた宅急便事業の展開でも、まずは営業拠点とかトラックはもちろん人員などの固定費がかかるがそれを先行投資と捉え、先にサービスを充実させた。その結果、クロネコヤマトの宅急便は大きなビジネスとなり莫大な利益を生む事業となった。この思考は、一大決心から意図した事業参入のみならず、すべての活動において必要だと小倉氏は述べている。

・リーダーに求められる条件はいろいろありますが、その第一は論理的に考えることだと思います。
~とかく情念のおもゆくままとか、前例とか類例だけをとってという場合があるが、論理的に説明できるか(文章化すると判り易い)を検討してみるということだろう。

・一番悪いのは前例主義。去年と今年では、社員も荷主も取引先もどんどん変わっているから、前例はないはず。1回1回、今回はこう考えるという論理的な構成力が非常に大事。 
~確かにこれは愚の骨頂というべきだが、官僚組織においては営々と継続されている。その集大成が法務関連ではないだろうか。いわゆる判例という奴で、これを最大優先し論理矛盾を避けるのが判事だろう。

・すべてのものごとにはメリットとデメリットがあります。個人宅配は、いつどこから荷物が出るかわからず、集荷や配送が非効率になるので、必ず赤字になると思われていました。だからトラック業者は一社も参入せず、郵便小包の独占状態でした。しかし法人客と違って値切られることはないし、現金で支払ってくれる。私はデメリットをどうやったら解消できるか考え、宅急便の成功を確信しました。
・デメリットのあるところに、ビジネスのチャンスがある。
~こういう思考は大切だろうと感じる。

・人から信用を得ようと思ったら、言葉だけでなく態度でも誠実さや真剣さなどを示さなければならない。企業が不祥事を起こしたとき、会社の幹部がテレビカメラの前で申し訳ありませんと謝罪しても世間が納得しないことが多いのは、その態度が心から謝っているように見えないからだろう。人々は、口先から発せられる言葉だけで物事を判断しているわけではない。
~この意見を聞いて考えたのは、新車完成検査問題の日産自社長と、新幹線代車亀裂問題での川崎重工の社長および関係取締役のそれぞれの会見のことだ。正直、日差のは×であり、そもそも不遜な態度であるとしか感じられなかった。川重のは、担当取締役が想定される原因を真直に説明しつつ、社長も含め悔いる様子がありありと感じられた。これだけ経営者の倫理観が異なると、日産は今後も類似の問題を起こすだろうし、川重は改善されると感じるのだ。

・とくに困るのは現場のリーダーが今日のことしか考えていないケースだろう。どんな将来に向かって努力を積み重ねるのかわからないまま、ひたすら目先の結果だけ求められたのでは、その下で働いている社員がいやになるのも当然だ。やる気が湧かないから当面の成績が上がらず、そのため上司はよけいにプレッシャーをかける。結果的にやる気も成績も低下する一方になってしまうのである。
~云うは易し行うは難しのことだろう。リーダーにだって進路は見えないことは常だろうから。しかし、余りにも拡張表現はともかく、信じるべき進路を指し示し、そこへ導いて行くのがリーダーの使命と思う。

・人間にとって何がつらいといって、自分が何の役にも立っていないと感じるほどつらいことはない。仕事の価値は収入の多寡で決まるわけではない。その仕事を通じて社会にコミットメントして、世のため人のために役に立っているという実感が得られたときに初めて、私たちは働く喜びや生きがいを持つことができるのである。
~同僚などの嘆きを聞く中でも、「俺たちが最下層さ」見たいな言葉が最も嫌になる瞬間だ。要は考え方の問題だと思うが、非合法な活動をしている訳でもなく、それによって助けられている方もいる。希かもしれぬが、ありがとうと嬉しそうな表情とお礼の言葉も聞くことに、生き甲斐を感じないのだろうかと思う。なお、ユーザーのお礼とは別に、作業の難易度に応じて、リーダーは褒めてあげることが必要だろう。

・リーダーが考えるべきは部下に仕事を任せることだろうと私は思う。全体的な方針や仕事の大枠はリーダーが決めたとしても、具体的な仕事の進め方は部下に任せる。ここはお前に任せると言われれば、誰だって自分で考えようとするだろう。「仕事を任される」と「自分の頭で考える」は表裏一体の関係にある。マニュアル人間が自分で何も考えようとしないのは、何一つ任されていないからだ。
~これはリーダーにとって大切な事項だろう。何から何までがんじがらめに指示してたら、部下は育たないし、自らも部下の上行く発想なんか生まれはしないだろう。

・好奇心のない人間は新しいものを生むことができないし、自分を成長させることもできない。当然、仕事も面白くはならないだろう。逆に、旺盛な好奇心を持ち、自分の頭で考えられる人間は、退屈な仕事を与えられても、それ自体をなんでだろうの対象にできる。決められたマニュアルがあるなら、その仕事にそのマニュアルが用意されている理由をなんでだろうと考えることができるわけだ。
~この好奇心というのは大切だと思う。他人が行っていても初めて見るクルマとか、初めて見る現象とか、感心を持って見たりすることは自らの体験の一つになる。また、偶に訪ねた他工場で、その設備をみるのも悪くはないが、工場の隅々でこれは良い仕掛けとか工夫ってものがあろうかと思う。マニュアルの考察については、何でこういう指示となってるのか、それが想定でも説明できるのかを考えて行くことが必要と思える。例えば今はエンジンOHなど少ない訳だが、整備マニュアルでは、クランクのプレーンベアリングを取替する場合、ベアリング裏側とブロック側メタル装着面のオイルを拭き取って清掃しろと記しているであろう。こういった指示の理由までを記しているマニュアルは、昔はあったが昨今は少ないと思うがどう想定するか? 答えは、異物があるとオイルクリアランスが狂うということもあるが、主はメタルの熱を直にブロックに伝え易くということだろう。

・本当は税金を納める能力があるにもかかわらず収入をごまかしたり、補助金をもらって普通の人よりも贅沢な暮しをしていたりする人間は「タックス・イーター」と呼んでいい。他人が苦労して払った税金を食って、自分だけ楽をしているのだ。これは本来、国民の一人として恥ずべきことだろう。ところが、大半のタックス・イーターは悪知恵を絞って楽な生活を手に入れている自分を、他人よりも賢いと思っている。
~私がその発言の多くに賛意を持つ武田邦彦氏は云う。エコカーという名称があるが欺瞞に満ちている。高額で燃費向上から差益を得るのが困難だし、製造素材に希土類元素を使用するし、重量が重く道路を傷める率も高くなるはずだ。そして、エコカー減税の特典があるが、その減税分は誰が負担しているのかを考えなければならない。それは、エコカー以外を乗る国民であって、減税を目的にエコカー乗る者はいわゆる乞食だろうと。

・やりたいことが見つからないと言う若者は、どこかに必ず自分にぴったりあった仕事があって、いつかそれに出会えるはずだと言う錯覚を持っているような気がしてならない。それは順番が逆だ。どこかに好きな仕事があるのではなく、目の前にある仕事を好きになれるかどうかが大事なのではないだろうか。
~特に若い方の転職理由の一つにも当たる言葉と思う。現役リーダーには、そんな若い方に教え諭す武器ともなる言葉ではないであろうか。

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