私の思いと技術的覚え書き

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恐ろしきかな積み荷の慣性力

2018-06-23 | 技術系情報
 走行中に、斜め前方を長尺厚板鋼材を積層積みした平荷台の重トレーラーが走行してる。およそ10mはあるだろう鋼材は、重量10トンを超えるだろう。積み荷は、線径10mm程に見えるワイヤーで4カ所程をレバーブロックで締め付け荷台に固定されている。こんな光景は、多くの方が時々見るだろう。

 その時、私は、トラクタ側のキャビン後方をチラと見るのだ。大体において、この様な荷を積むトラクタ側には、写真の様なキャブガードが装着されている。これは、厚板H型鋼でメインフレームにも匹敵する程に強そうな代物だ。

 これは実物を見たことない都市伝説かもしれぬが、「事故の大型トレーラーで、積みの鋼材が前方に突き抜け、運転者の首がなかった」という話がある。そこで、何時もの悪い癖で理屈をこねてみる。トレーラーであろうと単車であろうと、仮に10トンの荷を積んで限界急制動(タイヤロック)させてみた場合だ。慣性力はF=m・αで作用するが、何れにせよ減速度はタイヤと路面の摩擦力(以下μ(みゅう))に支配される。一般にμはタイヤの性能と路面状況(乾燥、湿潤など)で変化するが、乾燥舗装路で0.7~0.8と知られている。ということは、減速度Gとしては、同じ値になるから、仮に10トンの積み荷だと最大でも8トンの慣性力が働く。これなら、先のワイヤー固定で動くことなく問題はないだろう。

 ところが、これが事故で乗用車などの相対として軽いものと衝突したのでなく、自車に匹敵する大型車とか、もっと酷いのは地上に設置されたコンクリート構築物に衝突したとなると・・・。交通事故が悲惨な破壊を起こす物理法則として、速度変化(以下Ve)が極短時間になされるから、加(減)速度が極めて高くなることにある。ここで、仮に衝突前の車速を36km/hとし、剛体壁に衝突停止したとし、その変化時間を0.2secで積み荷10トンだとすれば・・・。減速度は50m/sec^2≑5Gとなり積み荷の慣性力は50トンが作用することになるが・・・。これはあくまでも、0.2secの中での平均値であり、変形が初期の立ち上がりから終期まで作用するGは細かく変化するが、仮に正弦波形としても1.4倍、極々単位としては2倍が作用してもおかしくないだろう。とすれば、100トンの前方加重が作用し、積み荷押さえワイヤーは切れぬだろうが、すり抜けることだろう。あながち、都市伝説とも思えぬと思っている。

※これは、手元にあった単車のキャブ破壊の事例だが、結構頑丈そうな鳥居が変形してしまうのだということが判るだろう。




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