私の思いと技術的覚え書き

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テスラモーターを斬る

2017-10-20 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 大上段に「斬る」と表したが、テスラモータース社(以下テスラ社)のクルマの現物を見たこともなく、その詳細情報を知る資料もないが、Webおよび報道情報より、個人的主観を多分に含み思うところを記す。

 テスラ社の株式時価総額はGMに匹敵する程の額だそうだ。しかし、自動車メーカーとしてのテスラ社の従来までの現状は、モデルSを推定年産2万台程作る小規模メーカーに過ぎない。この現状から躍進しようと、年産12万台規模の量販車であるモデル3を発表し発売を開始したというものの、この7月から生産開始して9月末の時点で260台しか生産できていないという報がある。このことは、生産プラントの何処か、あるいは部品サプライヤーからの特定部品の供給が間に合わない等の理由かと思われるが、前者の理由が想像される。つまり、量産プラントの経験値が少ないままに生産は始めたものの、多工程において問題続出というのが現状かもしれないと想像するのである。

 2003年に設立されたテスラ社であるが、米シリコンバレーの北端部に位置するパロアルトに本社を置く。同市はスタンフォード大学や長い歴史を持つヒューレットパッカード社、コンピューターサイエンスの基礎を築く数々の発明実績を有するパロアルト研究所(イーサネットの開発等)がある地だ。そんな地で革新的EV技術を歌い産声を上げたテスラ社で、かつてはトヨタやダイムラー(ベンツ)が出資し協業の様相も見られたが、現在では両社共に全株を手放している。想像するに、「なんか凄そうだな」と出資し実態を知ってみれば、「まるで価値あるテクノロジーはない」と知った故だろうか。何れにしても、テスラ社の株式時価は夢と欲望が生み出したバブルであろう。仮にモデル3が立ち直り順調に生産できる様になったとしても、その続距離が400kmに満たないとは、公表されている新型リーフにすら負けるスペックでは何を持ってEV先進メーカーと云えるのだろうか。何れ現実は周知され、株式時価のバブル崩壊は避けられないだろうと見ているのだ。

 ここで、テスラ社のプロダクションモデルを概観してみる。モデル3もモデルSも同様だが、外装デザインが日本車風の無個性で、まるで存在感が希薄に感じられる。それでも米国では、モデルSで乗り付けることがステータスだと記している記事があるのは、あくまでも希少性にあるのかなと見ている。トヨタのプリウスだって、発売当初の希少性があったときは、それなりの知識層みたいなレベルからは、ステータスと見られた一過性の時期があったのだから。

 モデルSのボデーコンストラクションについて、詳しい説明書きが公表されてなく、実物のホワイトボデーでも観察できれば即座に判るのだが、ボルトオン蓋物パーツはアルミ製だろう。モノコックシェル本体は鋼板プレス製だと想像するが事実は不明だ。何れにしても、例え年産2万台でも、これだけのモノコックシェルを多数の鋼板をプレス加工するダイ(金型)の総数は極めて多い。また、サスペンション関係のアームやクロスメンバーなども含め、これらすべてをモデルS用に新規開発したのだろうかと疑念が湧くところだ。前部クラッシュ特性に決定的な影響を及ぼすダッシュパネル前の骨格とか、後部サスペンションを受け止めるコンストラクションは、多車種の流用ではないかとも想像するのだ。それでないと、年産2万台レベルのクルマを1千万円台程度で売り利益を生み出すことは到底不可能とも感じるところだ。

 モデルSの内装面で、Web上のカタログとか情報から感じられることだが、まず第1にセンターコンソールに縦置液晶ディスプレイ(17インチという)が設置されるが、大きすぎというか全体のインストルメントパネルの調和が取れていないと感じざるを得ない。多分既存の液晶ディスプレイで搭載可能な最大限を押し込んだというのが安直な実像だろうが、縦横比や形状も含め液晶ディスプレイサプライヤーに専用品を開発してこそ、マッチングが図れるという話だろう。トヨタがクラウンに一時期メーターパネルに液晶モニターを採用した(一世代で廃止)が、この時はシャープに特注させていたはずである。

 最後に、モデルSなどにおいて、すべての機能ではないが、一部の付加機能が対価を支払う前提によって通信機能でソフトウェアのバージョンアップし、新たな付加機能を有効化できるとしている。つまり、ハードウェアとしては既に実装済みであり、あえてソフトウェアでロックしてある機能を単に解除するというものだ。このことはテスラ社だけに限らず他のクルマメーカーやECU制御の多くの機器において見られる現象であり、時流として致し方ないことだとは思うが、私見としては邪道だと感じる。つまり、それだけのハードウェアを実装しているのなら、それを最大限有効に生かすのがメーカーの良心というものだろう。それと、所詮ソフトウェアでの制御特性の変更(これが最近のクルマではリコールせずに内緒でやっているのが非常に多い)でできることには、かなり到達点としては低レベルのものに限られるだろう。

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