車検有効期間の延長論の思考
冒頭主題から離れるが、国内のあらゆる省庁において、その監督範囲の広範さ、組織要員の多さでは「国土交通省(総員33,900名)」は抜きん出ている。しかも、同省の外局として、気象庁、海上保安庁、観光庁、運輸安全委員会の外局計6,800名があるから、同省大臣が管轄する職員数総計は40,700名と超巨大組織なのだ。その国家最大の組織の大臣は、自公政権が恒常化した今、公明党の定席となっていることを、いささか怪訝なことと思うところだ。これは、2005年からの、北側とあの悪相の冬柴、一時中断を挟んで、2012年から大田、石井、赤羽、極至近の岸田内閣での斉藤と4代続く公明党の常駐席となっている既成事実がある。
こういう中において、近日ブログ内で非難した東海道新幹線の走行中の運転席において、便意を生じた運転手が、免許のない車掌を運転席に座らせ(この理由は運転席が無人となると自動停止するデットマン装置があるからだろう)運行を継続させるという重大な規則違反を行うというデタラメをしながら、何ら警告なり処罰も行わなかったという危機意識の欠落した所業などからも感じるところだ。
さて、前置きが長くなってしまったが、新任の斉藤国交大臣は、10/8の記者会見で、国の規則で行われている車検の検査項目などについて、「安全や環境性能を確認する上で重要な項目である」との認識を示したと報じられている。このことは、既に8月より設置され継続審議されている「自動車の高度化に伴う安全確保策のあり方検討会」において、今後の車検の検査項目だろかそのあり方に付いての検討が開始されており、その前提に沿った会見内容だろう。
ところで、拙人は過去40年におよび、自動車工学と自動車の事故に関わる業務を継続して来たが、常に思うところは、交通事故の要因を大局的に捕まえれば、いわゆる人、車、環境という3大要素に関わり生じるものだと意識して来たし、そのことは様々な著名な学者も述べるところであろう。
ここで、ある統計(出典:交通事故の発生要因と運転行動メカニズム[所 正文]出版年1995-03)の54ページの表(別添図参照)から、人、車、環境という事故の要因を読み取ると、以下の内容として集約できるのである。
この表では、縦列区分の原因分類として、人(ヒューマンファクター)、運転者的原因、車(車両に内在した要因)、環境(道路や天候などの要因)の他、自転車や歩行者の要因と該当なし(その他)としている。一方、横列区分として、第1原因、第2原因、第3原因と区分しているが、これは例えばこういう事例があるという前提に沿ったものだろう。つまり、事故の第1要因は、運転車の前方不注意があった、第2要因は速度が出し過ぎていた、第3要因は家庭や職場の悩みを抱え精神に情緒不安定を抱えていたという様な、副次的要因を表したものと云えるだろう。
そこで、この表について、縦区分の運転車的原因と自転車・歩行者的原因を合わせて人的要因とし、車両原因を車要因に、道路環境的原因を環境要因に、該当なしを除外して、3区分の要因に区分して思考したい。また、横区分の第1原因から第3原因の全体などを含め改めて件数変換した上で、再度その三要素別に総計原因の割合を示したのが添付表たる「人、車、環境区分における事故割合集計表」だ。ここでは、人車環境という事故の三大要因については、いわゆる車が原因というのは、極めて少ないということを強調しておきたい。
ここで、改めて、近年の交通事故死傷者の削減のために行われて来た、代表的な施策を以下に列記したい。
1.人に関する施策
①様々な安全運転に対する啓蒙教育
②免許制度の厳格化(中型運転免許の新設など)
③重大事故などの厳罰化(過失傷害罪だけでなく、危険運転致死罪などの創設実施。
④運転車の注意散漫などを補助する機能の車両の装備(衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報の装備など)
⑤シートベルト着用の義務化(一般道は全域、高速道は後席乗員も)
⑥運転中のスマホ電話などの禁止
2.車に関する施策
①パッシブセイフティ(エアバッグや衝突安全ボデーなどの装備)
②アクティブセイフティ(ABS、VSC、消灯被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報などの装備)
③スタッドレスタイヤなどの普及
3.環境に対する施策
①信号機の設置
②道路および歩道の整備(道路と共に歩道の区分や整備)
③警察の取り締まり
④場所別の速度制限
⑤凍結注意などの案内板など
と云う様な各種の施策も行われ、近年経済的な不況だとか世界的な病変の影響もあるが、交通事故全般の発生率も低下しつつ、その死傷者数も低減している現状にある。
また、現代車両に各種の人的ミス(例えば認知の遅れ)を防ぐ衝突被害軽減ブレーキなどの普及も拡大し続けている。また、OBDなど電子制御で、車両の各種装備の異常を報知する機能の採用も高まって来ている。確かにこれら装置は、高度な電子技術のたまものなのだが、故障した場合に、まずその異常を運転車に報知する基本機能が必ず装備されていることを前提として考慮しなければならないだろう。
どうも国交省の論議を眺めると、これら装置が故障した場合の対応をどうするか、つまり修理工場側の立場に立脚した論議に偏向している様に感じられてならない。つまり、我が国は憲法で国民主権が規定され、様々な政府の行う施策は、第一義的に国民もしくは車両ユーザーとか車道近くを歩行する国民を前提に、その施策の前提を思考すると云う極当たり前の思考から逸脱している様に感じられてならないのだ。
つまり、まとめとして記すが、元来、人車環境系を要因とする交通事故は、主たる要因は人にあり、従たる要因としては環境であり、最後に残された車両に内在する要因は1%に満たないものであるということだ。また、論議されている、ASVなどの各種装備とかOBDなどの電子装備の表示機能は、まず異常が生じた運転車に報知し、修理工場への入庫を促す予防安全機能を内包していると云うものだと理解される。
とすると、国交省で8月から論議か進められている「自動車の高度化に伴う安全確保策のあり方検討会」なる内容も不要だとは思わないが、同省大臣が述べたという「車検の規制を緩めることは交通事故の増大につながる」ことを調べ、延長論について「与党として反対した」とされる発言には、その論理にいささか疑問を感じざるを得ない。
つまり、我が国の自動車は、一般に世界最高の信頼性を保持していると各種論評や統計で示されており、しかもOBD機能の付加により,高度なメカニズムが搭載されつつある中で、システム異状が生じれば、まずは運転車に異常があることを報知し、運転車は速やかに修理工場へ入庫すれば足りることであり、定期的な車検において、その瞬間の異常の確認を改めて行う意味が何処まであるのかとなると、疑問を生じることと感じざるを得ないのだ。
最後の結論としては、現行の車検制度をまったく不要とまでは断定できないが、少なくともOBD機能の付加などにより、機能の異常が遅滞なく運転車に報知される機能が整う時世においては、車検期間の延長を行い、国民もしくは車両ユーザー負担を軽減する論議はあってしかるべきと思う次第だ。
また、それが事故増加の要因になり得ないことは、人車環境系の要因別割合から思考しても、あり得ないことは明らかだと結論付けることに、反意を持たれる方は、端的に云って現行法令によりその恩恵を受ける方のみであろうことだろうと付言したい。
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車検の査項目、年度内に討会で結論 年度内に討会で結論 年度内に討会で結論
2021.10.09 日刊自動車新聞
斉藤鉄夫国土交通相は8日の閣議後会見で、車検の検査項目について「安全性能や環境性能を確認する上で、いずれも重要な項目」との認識を示した。
業界の一部で挙がった「必要性の低い項目がある」との声を受けての発言。ただ、自動車技術の進化も加速しており「指摘された点も十分に根拠がある」との考えも述べた。その上で国交省が8月に設置した「自動車の高度化に伴う安全確保策のあり方検討会」で「もっと合理的なやり方があるか検討を進める」とした。今年度内に一定の結論を出して「多くの関係者の理解が得られるものにしたい」との意欲を述べた。
斎藤国交相は公明党の政調会長時代に持ち上がった車検制度の延長に触れ、「車検の規制を緩めることは交通事故の増大につながる」ことを調べ、延長論について「与党として反対した」ことを明かした。このため、技術の高度化を踏まえた車検や点検などの確認方法見直しについても、車検制度の根幹である安全性能や環境性能が十分に担保できるような施策としていくとみられる。
冒頭主題から離れるが、国内のあらゆる省庁において、その監督範囲の広範さ、組織要員の多さでは「国土交通省(総員33,900名)」は抜きん出ている。しかも、同省の外局として、気象庁、海上保安庁、観光庁、運輸安全委員会の外局計6,800名があるから、同省大臣が管轄する職員数総計は40,700名と超巨大組織なのだ。その国家最大の組織の大臣は、自公政権が恒常化した今、公明党の定席となっていることを、いささか怪訝なことと思うところだ。これは、2005年からの、北側とあの悪相の冬柴、一時中断を挟んで、2012年から大田、石井、赤羽、極至近の岸田内閣での斉藤と4代続く公明党の常駐席となっている既成事実がある。
こういう中において、近日ブログ内で非難した東海道新幹線の走行中の運転席において、便意を生じた運転手が、免許のない車掌を運転席に座らせ(この理由は運転席が無人となると自動停止するデットマン装置があるからだろう)運行を継続させるという重大な規則違反を行うというデタラメをしながら、何ら警告なり処罰も行わなかったという危機意識の欠落した所業などからも感じるところだ。
さて、前置きが長くなってしまったが、新任の斉藤国交大臣は、10/8の記者会見で、国の規則で行われている車検の検査項目などについて、「安全や環境性能を確認する上で重要な項目である」との認識を示したと報じられている。このことは、既に8月より設置され継続審議されている「自動車の高度化に伴う安全確保策のあり方検討会」において、今後の車検の検査項目だろかそのあり方に付いての検討が開始されており、その前提に沿った会見内容だろう。
ところで、拙人は過去40年におよび、自動車工学と自動車の事故に関わる業務を継続して来たが、常に思うところは、交通事故の要因を大局的に捕まえれば、いわゆる人、車、環境という3大要素に関わり生じるものだと意識して来たし、そのことは様々な著名な学者も述べるところであろう。
ここで、ある統計(出典:交通事故の発生要因と運転行動メカニズム[所 正文]出版年1995-03)の54ページの表(別添図参照)から、人、車、環境という事故の要因を読み取ると、以下の内容として集約できるのである。
この表では、縦列区分の原因分類として、人(ヒューマンファクター)、運転者的原因、車(車両に内在した要因)、環境(道路や天候などの要因)の他、自転車や歩行者の要因と該当なし(その他)としている。一方、横列区分として、第1原因、第2原因、第3原因と区分しているが、これは例えばこういう事例があるという前提に沿ったものだろう。つまり、事故の第1要因は、運転車の前方不注意があった、第2要因は速度が出し過ぎていた、第3要因は家庭や職場の悩みを抱え精神に情緒不安定を抱えていたという様な、副次的要因を表したものと云えるだろう。
そこで、この表について、縦区分の運転車的原因と自転車・歩行者的原因を合わせて人的要因とし、車両原因を車要因に、道路環境的原因を環境要因に、該当なしを除外して、3区分の要因に区分して思考したい。また、横区分の第1原因から第3原因の全体などを含め改めて件数変換した上で、再度その三要素別に総計原因の割合を示したのが添付表たる「人、車、環境区分における事故割合集計表」だ。ここでは、人車環境という事故の三大要因については、いわゆる車が原因というのは、極めて少ないということを強調しておきたい。
ここで、改めて、近年の交通事故死傷者の削減のために行われて来た、代表的な施策を以下に列記したい。
1.人に関する施策
①様々な安全運転に対する啓蒙教育
②免許制度の厳格化(中型運転免許の新設など)
③重大事故などの厳罰化(過失傷害罪だけでなく、危険運転致死罪などの創設実施。
④運転車の注意散漫などを補助する機能の車両の装備(衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報の装備など)
⑤シートベルト着用の義務化(一般道は全域、高速道は後席乗員も)
⑥運転中のスマホ電話などの禁止
2.車に関する施策
①パッシブセイフティ(エアバッグや衝突安全ボデーなどの装備)
②アクティブセイフティ(ABS、VSC、消灯被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報などの装備)
③スタッドレスタイヤなどの普及
3.環境に対する施策
①信号機の設置
②道路および歩道の整備(道路と共に歩道の区分や整備)
③警察の取り締まり
④場所別の速度制限
⑤凍結注意などの案内板など
と云う様な各種の施策も行われ、近年経済的な不況だとか世界的な病変の影響もあるが、交通事故全般の発生率も低下しつつ、その死傷者数も低減している現状にある。
また、現代車両に各種の人的ミス(例えば認知の遅れ)を防ぐ衝突被害軽減ブレーキなどの普及も拡大し続けている。また、OBDなど電子制御で、車両の各種装備の異常を報知する機能の採用も高まって来ている。確かにこれら装置は、高度な電子技術のたまものなのだが、故障した場合に、まずその異常を運転車に報知する基本機能が必ず装備されていることを前提として考慮しなければならないだろう。
どうも国交省の論議を眺めると、これら装置が故障した場合の対応をどうするか、つまり修理工場側の立場に立脚した論議に偏向している様に感じられてならない。つまり、我が国は憲法で国民主権が規定され、様々な政府の行う施策は、第一義的に国民もしくは車両ユーザーとか車道近くを歩行する国民を前提に、その施策の前提を思考すると云う極当たり前の思考から逸脱している様に感じられてならないのだ。
つまり、まとめとして記すが、元来、人車環境系を要因とする交通事故は、主たる要因は人にあり、従たる要因としては環境であり、最後に残された車両に内在する要因は1%に満たないものであるということだ。また、論議されている、ASVなどの各種装備とかOBDなどの電子装備の表示機能は、まず異常が生じた運転車に報知し、修理工場への入庫を促す予防安全機能を内包していると云うものだと理解される。
とすると、国交省で8月から論議か進められている「自動車の高度化に伴う安全確保策のあり方検討会」なる内容も不要だとは思わないが、同省大臣が述べたという「車検の規制を緩めることは交通事故の増大につながる」ことを調べ、延長論について「与党として反対した」とされる発言には、その論理にいささか疑問を感じざるを得ない。
つまり、我が国の自動車は、一般に世界最高の信頼性を保持していると各種論評や統計で示されており、しかもOBD機能の付加により,高度なメカニズムが搭載されつつある中で、システム異状が生じれば、まずは運転車に異常があることを報知し、運転車は速やかに修理工場へ入庫すれば足りることであり、定期的な車検において、その瞬間の異常の確認を改めて行う意味が何処まであるのかとなると、疑問を生じることと感じざるを得ないのだ。
最後の結論としては、現行の車検制度をまったく不要とまでは断定できないが、少なくともOBD機能の付加などにより、機能の異常が遅滞なく運転車に報知される機能が整う時世においては、車検期間の延長を行い、国民もしくは車両ユーザー負担を軽減する論議はあってしかるべきと思う次第だ。
また、それが事故増加の要因になり得ないことは、人車環境系の要因別割合から思考しても、あり得ないことは明らかだと結論付けることに、反意を持たれる方は、端的に云って現行法令によりその恩恵を受ける方のみであろうことだろうと付言したい。
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車検の査項目、年度内に討会で結論 年度内に討会で結論 年度内に討会で結論
2021.10.09 日刊自動車新聞
斉藤鉄夫国土交通相は8日の閣議後会見で、車検の検査項目について「安全性能や環境性能を確認する上で、いずれも重要な項目」との認識を示した。
業界の一部で挙がった「必要性の低い項目がある」との声を受けての発言。ただ、自動車技術の進化も加速しており「指摘された点も十分に根拠がある」との考えも述べた。その上で国交省が8月に設置した「自動車の高度化に伴う安全確保策のあり方検討会」で「もっと合理的なやり方があるか検討を進める」とした。今年度内に一定の結論を出して「多くの関係者の理解が得られるものにしたい」との意欲を述べた。
斎藤国交相は公明党の政調会長時代に持ち上がった車検制度の延長に触れ、「車検の規制を緩めることは交通事故の増大につながる」ことを調べ、延長論について「与党として反対した」ことを明かした。このため、技術の高度化を踏まえた車検や点検などの確認方法見直しについても、車検制度の根幹である安全性能や環境性能が十分に担保できるような施策としていくとみられる。