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 私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

H24年4月29日の関越道バス事故に思う

2017-01-17 | 事故と事件
 H24年4月29日・午前4:40頃、関越自動車道を走行していた大型バス(全長12m)が、運転手の居眠り運転により、道路左端の防音壁端部に車両のほぼ中央部付近を衝突させる事故が生じた。この事故で、防音壁はあたかも「ナタ」の如くバス車体を中央を切り進み、その最深部は10mにまでも及んだとされ驚いたものだ。この車体の大損傷が示す如く、46名の乗員中、7名が死亡、14人が重体もしくは重傷、その他軽傷という大事故となった。なお、当該バスは三菱ふそう・P-MS729Sだというが、乗用車であればアナログ旧車ともなるであろう、30年近く以前に新造されたクルマでないだろうか。

 この事故を、バスの車体の設計者はどの様な思いを持って見たのであろうか?
 想定できるのは、リジット(平面)バリヤだとかオフセットバリヤ(通常全幅の40%)であれば、分布荷重となり、特に進行方向への圧壊強度はある程度確保できるが、今回のは極めて集中荷重で、しかもサイドパネルを外れた中央部であったことは、誠に不幸なことだった程度のことを考えたのではないだろうか。

 大昔のバスは、トラックベースのハシゴ型フレーム上に、バス車体を架装し乗せたものであった。しかし、近代バスは、どのバスメーカーでも、通称「スケルトン構造」と呼ぶ、いわゆるスペースフレーム構造で作られている。その上で、車体の前後、左右、上下の6面を組み合わせたボックス構造において、車体全体としての曲げや捻れといった応力を負担しているのだろう。

 なお、バス車体のスペースフレームは、トラックのサイドフレームの様に縦の縦貫構造は取られず、トラック様の厚板チャネル断面は、フロントサスペンション付近と、後部サスペンションから後方エンジン支える目的でと、大過重が集中的に加わる部分のみだ。その他の部位は、50×50mm程度で厚さ3mm程度の角断面パイプをトラス状だとか組み合わせ、構成されているのだ。

 それと、バス特有の宿命といえるだろうが、バルクヘッドとなるのは、最前面のパネルと、出入口から客室床までのオフセットされた部位、後方のエンジンルームと客室との隔壁、最後尾のパネルとなり、それぞれが捻れ剛性を負担しているのだろうが、何れも車両の最下端から最上段までをカバーするものは構成することはできない。もう一つ、クロスメンバーの少なさ、もしくはクロスメンバーとしての応力負担すべき構造はあっても、先の厚さ3mm程度の角断面では、今回事故の様な極めて高い集中荷重においては、ほとんど無抵抗に切断されざるを得なかっただろう。その結果が、今回の防音壁たるナタがバスの客室床を切り進んだ理由となるのだろう。

 それでは、構造面から安全なバスを作れないかということだが、自体がかなりの車重を持つということから、運動エネルギーも大きく、なかなか難しい問題なのであろう。しかし、特に出入り口と客室床までのバルクヘッドとなる部分は、今回の様な中央部集中荷重を想定し、もっと強大な圧壊強度を持たせるべきだろうというのが私見なのだ。それと、何れにしてもクラッシュゾーンを持ち得ないバス構造は、事故を起こさないことが最も重要なことで、運転者の責任は極めて重いということだ。







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