私の思いと技術的覚え書き

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クラシカルF1の魅力

2016-08-05 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 1960年代、ホンダが初めてF1に参戦し始めた頃のF1マシンは、シンプルで魅力あるものと感じる。いわゆる葉巻型と云われる細長いボデーから左右前後に突き出したタイヤで、空力的な付加物は一切なしというものだ。現代F1と比べれば、その違いは驚く程だが、特に車高(最低地上高)が高いことは現代の水準から見れば驚く。たぶん、現代の市販スポーツカーより車高は高い程で、ラリーのグラベル路(未舗装路)を走れる程の車高とも感じる。

 昔の映画で Grand Prix (グラン・プリ)というのがあり、当時のF1マシーンの走る姿を見ることができるが、しなやかに上下にトラベルするサスペンションに関心しる。特に、今はないイタリア・モンツァのバンクでスムーズに上下する動きは、いかにこのバンクのアンジレーションが大きいかを感じる。そして、これに対応するには、この様な長いストロークを持った柔らかいサスペンションが必用だったことが判かる。以前、富士スピードウェイで、昔使われていた第1コーナーとなる30°バンク(メモリアルとして保存)を見たことがありが、やはり路面の荒れは凄いものだ。この様なバンクは、通常のロードローラーでは舗装工事は困難だろうし、当時の技術では平滑さを追求するのが困難だった故のことだろう。

 車高も高く空力的付加物もボデー形状もないという当時のF1は、ダウンフォース(下向きの力)が働かず、コーナーリング時の求心加速度はバンク路を除き、いかなレーシングタイヤでも1.2G程度が限界だったであろう。現代では市販スポーツタイヤでは、最大求心加速度は1.4G(つまりタイヤの摩擦係数)程度までが出せる様だから、テクノロジーの変化は凄い。なお、現代F1では、高速時のダウンフォースは車重の2倍を楽に超えると聞くが、超高速コーナーでの話しだが以前は5速全開だったのが6速全開で旋回する状況なのかもしれない。

 シンプルで魅力を感じるクラシカルF1マシンだが、多くの悲劇を生んで来たことも忘れてはならない。当時のスチール製チューブラーフレーム(いわゆるスペースフレーム)やアルミモノコックにおいて、クラッシュ時のボデー変形は凄まじく、ドライバーの命を奪うことも多く、軽度な場合でも足の骨折なども多々であった様だ。また、変形が燃料タンクに及んだ場合、いかなラバーで包んだ安全タンクといえども大変形には耐えられず、燃料漏れからドライバーが火炎に包まれてしまうという悲惨な事故もあった様だ。この様なクラッシュ時の欠点も、現代F1ではカーボンによる一体成形による変形強度の向上は安全性は著しく向上したのだろう。それでも、市販車に比べれば、走る速度が桁違いの上に、エアバッグなど装備もないレーシングマシンの危険性は低いものではない。

 性能も安全性も大きく劣るクラシックF1だが、そのシンプルさなど、魅力あるものとして見えるのは私だけではないだろう。


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