第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

しまねからこんにちは Vol. 6 ヤバイ医師に変貌する自分

2019-06-11 07:45:32 | 総合診療

みなさま、こんにちわ。

やれやれ、怒涛のボストンでの修行と卒業式も終わり、ようやくバタバタと次のステップとやらなければならない大量の研究データを論文化していく作業に今月は当てております。「One paper per two weeksでお願いします」と神のお声がありましたので、期待に応えるためになんとか頑張って食らいついて行きたいです。

 

さて、島根アゲアゲ運動のために、Dr'sマガジンの依頼原稿の名前を無理やり【しまねからこんにちわ】にしていただいた島根県民のよろこび連載も最終回です。敏腕副編集長さま、本当に感謝申し上げます。名付けて、 ヤバイ医師に変貌する自分です。では始まり、始まり。

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梅雨の時期の出雲。本当に「雲が出る」とはよく言ったもので曇ってばっかり。それはそれで美しい山々や樹木から出るみずみずしい匂いを感じつつ、今回予定していた最終回を終えることに感慨深く、敏腕副編集長と出雲蕎麦を食べた味を思いだしております。

前回はDisruptive physician behavior つまり、ヤバイ医師のヤバイ行為についてお話ししました。このヤバイ医師が与える医療安全・医療経済・臨床教育における予測されるネガティブインパクトはすさまじく、目に見えて算出できる医師一人の売り上げやメリット以上に、スタッフが去ったり、若者が集まらなかったり、クレームが増えたりと目に見えにくい被害が存在するというものでした1

さて、今回はどの様な人がヤバイ医者になってしまいやすのかという危険な内容に自戒的意味を込めて踏み込みます。

キレたり、怒鳴ったりと誰が見てもわかりやすいヤバイ行為はともかく、一見わかりにくいヤバイ行為もあります。コンサルトや診察の依頼をされた時に責任を持って対応しない、ネガティブな感情を全面に出してしまうなども含まれてしまうそうです2

げげっ、なんとなく自分にも当てはまるような。もちろんここには、大事な前提条件があって、たった一回だけであったり、稀にみられる程度では決めつけてはいけないという注意書きがあります2。あくまで日常的に見られるような医師をヤバイ医師と定義するわけですね。

では、どのような人間的な傾向がヤバイ医師へと進化しやすいのでしょうか? 表1に、陥りやすい医師としての特徴を示しました。


表1 ヤバイ指導医に進化しやすい医師の特徴(文献1,2より改変)

【短所】

  • 横柄である
  • キャラクターに圧迫感がある
  • 操作性が高い
  • 柔軟性が乏しい
  • 自己中心的
  • 権利意識が高い
  • 自分の行いを常時正統化する
  • 他者を批判するのが好き
  • 自分で行為を反省できず改善できない
  • 他者からの善意のヘルプに応じれない
  • 好戦的である
  • かなりのナルシスト
【長所】
  • 高い技術を持っている。
  • 勉強家であり、知識がある。
  • 分かりやすい性格
  • ハードワーカーである。
  • 認められている。
  • 自信家。
  • 目標達成に執着できる。

 

短所的な特徴は納得しやすいですね。自己中心的で権利意識が高くて、他者を批判するのが好きで、自分を反省できないナルシスト(笑)・・いやはやヤバイ医師になる要素が多すぎて救いようがないような気がします。しかし、長所的な特徴を見てみると、えっ、驚きです。高い技術を持っていて、勉強家で、自信があって・・これって、いい医者になる為に必要なことばかりではないですか?

もしかしたら本来頑張って良い医師を目指している間に、認識することなく周囲に対して多大なネガティブインパクトを与えている可能性もあるということかもしれません。振り返ってみると自分も柔軟性が欠如して俯瞰的に観察できなくなっていたかもしれません。人は誰しも自分の欠点を認めて、短所を認識するにはとても勇気が必要ですし、そもそも医師免許という資格が我々を必要以上に勘違いさせているのかもしれません。

 

今回の内容、自分の嫌なところを突かれているようでハラハラドキドキしますね。書いている自分自身が一番恥ずかしく、心がとても痛いです。多分皆様も医師という時点で、少しくらい当てはまってしまうこともあるのではないかと思いますが、このヤバイ行為を気づかないうちに周囲に対して行ってしまっている可能性もあります。どうすればヤバイ医師になるのを防げるか?自分は師匠から教えてもらったウィリアムオスラー先生の「平静の心」と宮本武蔵の五輪の書を思い出します。

「心を広く、直にして、きつくひっぱらず、少しも弛まず、心の片寄らぬように」とある様に、なるべく自然体で自分の感情の動き行為を俯瞰的に見ることがヤバイ医師にならなくて済む方法なのではないかと感じています。

ということで、愛すべき島根の医療が発展すればと無理やりつけさせてもらったこのタイトル、いよいよしまねからサヨウナラと言わせてください。読者の皆様、おつきあい頂きありがとうございました!

 

1)  GUIDEBOOK FOR MANAGING DISRUPTIVE PHYSICIAN BEHAVIOUR, College of Physicians and Surgeons of Ontario, April 2008.  

2)  Reynolds, Norman T. "Disruptive physician behavior: use and misuse of the label." J Med Regul 98.1 (2012): 8-19.

 


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